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クールで男嫌いな高嶺の花が義妹になったら、俺にだけ甘々にかまってきて可愛い。  作者: never_Even


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第8話 恋のライバルは少しえっち

「ねえ瀬川くん、私って結構、運動できるタイプなんだよ?」


また、たちばななたが私の、私だけの兄さんに声をかけている。


「……はい、知ってます」

「………夜のも、ね」

「―――っ!?ゲホッ、ゲホッ………!」

「ははーっ!瀬川くん、動揺しすぎ〜可愛いいんだけど〜」



グシャァ…………!


私は、思わず手に持っていたペットボトルを握りつぶしてしまった。


「許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない……………」


口から、抑えきれない嫉妬心がこぼれていく。すると、小声だったが、周りには少しだけ聞こえていたようだった。


「か、神楽さん……?ど、どうしたの?」



し、しまった……!

私は吊り上がりそうになる眉を必死に押さえて、アルカイックスマイルで言った。


「ううん、なんでもない」


私がこんなに心に傷をつけているというのに、あの女は幸せそうに笑っている。


「なんで………?兄さん……」


兄さんも、橘日向の会話に耳を傾けながら、少し頬を赤らめている。


私は唇を結び、気を紛らわせようと体育祭の予定に目をやる。もうすぐ、午前の部が終わる頃合いだ。


すると、こんな声が耳に入った。


「おっ!この種目が終わったらお昼休憩だね………あ、あの……瀬川くん、一緒にお昼ご飯食べない?」



………は?


橘日向は、兄さんに目を背けながら、可愛らしく胸に手を当てている。



兄さん……!そんなのダメだよ!




「……いいんですか?じゃあ一緒に食べましょう」



「……………ぇ」


兄さんの、優しい声。それは、私の心を残虐に斬り裂いた。


………あれ、前が見えない………。

痛い……。胸が苦しくて、破裂しそう。


「………だ」


……嫌だ


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ………!



胸が痛くて、押さえつけても押さえつけても、全く収まらない。


「――――っ、凛!?」



「…………っ」


呼ばれたような気がして、上を向いたら、そこには綾がいた。


「………綾、何か用?」

「はぁ……凛、死にそうな顔で俯いてたからどうしたのかと思った………」

「………え?そ、そうなの……?」


私、死にそうな顔なんてしてたんだ……。


「日向が瀬川くんをお昼に誘ったからでしょ………?今からみんなで食べようとか、誘ってみたらどう?」


そうだ、その手があった。

二人だけで食べられないのは辛いけど、橘日向と兄さんが二人でお昼ご飯を食べるのを阻止できるなら仕方がない。


「私、行ってくる………!」




私は兄さんの姿を追うと、兄さんは橘日向と方が触れそうな距離まで近づいて、仲良く歩いていた。


「あのっ!」


あっ……少し声が裏返ってしまった。


「ん?……どしたの?神楽さん」

「神楽さん?」


二人は振り返る。その時の回転方向が二人とも同じで、なんだか胸がぎゅっと苦しくなる。


「あの………こ、これから綾も誘って四人でお昼ご飯食べない?」


私は震える手を押さえて、そう言った。



「………ああ、別に――――」

「ごめんっ、神楽さん!今日は瀬川くんと二人《《だけ》》で食べるから、また今度誘ってね」


返ってきたのは、拒絶だった。橘日向は、表面上は両手を合わせて可愛らしく謝っているが、その目からは静かな敵意を感じる。


「―――え……そんな…………」

「じゃあ瀬川くん、行こうっ!」

「えっ、ああ………ご、ごめん神楽さん!」


そして二人は、手を繋いで去っていってしまった。


呆然と立ち尽くす私。そこに、綾がやってきた。


「凛〜誘った?」

「………………」

「凛?………あれ、瀬川くん達は?」

「……………今日は……兄さんと……ふ、二人っ……で……食べるから、無理って……」


私は震える声を振り絞ってそう言うと、綾は目を丸くしていた。


「………えっ!?……ま、まさか……そんなに日向………瀬川くんのこと……」

「………っ!!」


私は無意識のうちに、手のひらに爪が食い込む程に強く、拳を握りしめていた。




――――――――――――――――――



『さて、続きまして、二年女子のリレーになりますっ!!!』


「「「「うおおおおおおおおッッッ!!!」」」」


昼休憩が終わり、私がアンカーを任されたリレーが始まった。今は走れる気分ではないが、兄さんには、恥ずかしいところは見せられない。


『おーっと!?青組の橘さん、速いです!』


その放送にふと上を向くと、橘日向が一位ですぐそこまで来ていた。


「―――――っ、神楽さん!?」

「―――――っ!」


私が戸惑っているうちにバトンパスは失敗し、バトンは地面へ落ち、私のクラスのテントへと転がっていく。


そうしているうちに、私はどんどんと抜かされていく。


まだ走ってもいないのに、息が苦しくなっていく。焦りで脚がもたつく。



―――その時だった。


「神楽さん!」


兄さんだった。


兄さんは、私に向かってバトンを投げた。


「―――――っ!」


そして


「頑張れ!」


私は、バトンを受け取った。兄さんの応援は、私の焦りを一瞬で消し去った。


足の先で砂を強く蹴ると、風を切ってスタートをきる。


一位を走っている人と私との距離はかなり離れているが、ただ漠然と、追い抜かせる気がした。


『なにーっ!?バトンミスをしてしまった青組、怒涛の追い上げですっ!!!』


一人、二人と、次々に追い抜かしていく。なんでだろう、兄さんの応援の声だけ聞こえる。その他は何も聞こえない。


『青組と赤組が競り合っています!果たしてどちらが勝つのでしょうかッ………!?』


あと少し……あと少しで………!


「兄さんの応援に……報いるっ!」


パン、パンッ!


と、ピストルの音が耳に届く。



ゴールテープを切ったのは、数ミリの差で私だった。


『青組、勝利ぃーっ!!!なな、なんと!全ての組を追い抜かしたぞーっ!?』


「「「「うおおおおおおおおおおお!!!」」」」


「はぁ、はぁ………っ、なんとか勝てた………兄さ――――――」


私は、兄さんに勝利報告をしようとした。クラスのテントの場所まで歩いていき、兄さんに目を向け――――



「――兄、さん……………?」


しかし、兄さんは橘日向と笑顔でハイタッチをしていた。私の方を見向きもせず。


あの応援は何だったの……?私を応援してくれたんじゃないの?


そう思うと、なんだか黒い感情がこみ上げてくる。


この感情は、よくない。



そう思っても、抑えられない。




「……………兄さんは、私のことなんて少しも見てないんだ」




次回、意外と意外な結果へ。

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