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クールで男嫌いな高嶺の花が義妹になったら、俺にだけ甘々にかまってきて可愛い。  作者: never_Even


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3/11

第3話 義妹が「兄さん」呼びをしてきた。

「あ、あの……!」


神楽さんが体調も良くなって、その次の日のことだった。


神楽さんが俺の部屋に来たのでおかしいな、と思ったらそんなことを言われた。


「…………え?」


心底嫌そうな顔で俺を睨みつけていたはずの神楽さんが、俺に必要な連絡もないのに話しかけてきた。


…………そういえば、最近は鋭い目つきでもないし、神楽さんから目を合わせてくるようになったような。


「その……この前は、ありがとう…………」

「いや、気にしてないから………別にお礼なんていいよ」


上気した頬を両手で隠しながら、俺を上目遣いで見上げる神楽さんは、普段のクールな印象とはかけ離れていた。


「じゃあ俺は部屋に戻るよ」


俺は後ろを向いて歩き出す。


「―――――――ん?」


すると、神楽さんが指の先で俺の服をつまんでいた。唇を固く結んで、真剣な表情で俺を見つめてくる。


その姿に、思わず見惚れそうになってしまうが、必死に煩悩をかき消して冷静になる。


と、その時だった―――



「――――兄さんっ……!」



「…………はっ!?」


俺の声は裏返った。


「に、兄さん……!」


神楽さんは服の裾をぎゅっとつまんだまま、真っ赤な顔で言い切る。

その瞳は揺れていて、俺をまっすぐに捕らえて離さない。


「ちょ、ちょっと待って!なんですかその呼び方!?」

「だ、だって………!蓮くんのほうが一か月早く生まれてるし……私の、兄さん……じゃない?」


「れ、蓮くん!?―――い、いやいやそこじゃなくて………そ、その呼び方はちょっと誤解を招きますって…………!」


必死に否定しようとする。俺は――あくまで神楽さんと距離を置くと決めたのだ。それは彼女のためだ。


しかし、凛は目を伏せ、かすかに唇を震わせながら。


「……だめ……かな」


小さく呟いたその声は、聞き取れるかどうかのぎりぎりで。


その一言に、俺の抵抗は一瞬で揺らぐ。


「……っ、べつに……そう呼んでもいいですけど………」


「ほ、本当に!? じゃあ――兄さんっ♡」


嬉しそうに破顔する彼女。その声色は、男嫌いでクールな『神楽さん』とはまるで別人だった。


(………っ、義妹が可愛すぎる……!)




――――――――――――――――――




あのトンデモ発言から数分が経つが、なかなか自分の部屋に戻らない凛。


「兄さんっ♡」

「―――――グッ………!!!」


弾けるような笑顔で呼ばれた瞬間、蓮の耳まで真っ赤になった。


「ちょ、ちょっと落ち着いてください!何度も呼ばなくていいから……!」


「えへ……だって、なんだか言いたくなっちゃうんだもん。兄さん……♡」

「―――――っ!!!」


蓮は思わず後ずさる。そして、自分の胸に手を当てて、その鼓動の大きさが聞こえてしまうのではと思い、また一歩、後ずさる。


凛は小さく首を傾げながら、笑っている。

その無邪気さに、蓮は翻弄される。


「兄さんっ♡」


凛は顔を赤らめながらも、いたずらに口角を上げて言った。


「ちょ、ちょっと……そんなに連呼しないでくださいよ……!」

「え?聞こえな〜いっ―――兄さん、兄さん、兄さんっ♡」


わざとらしくリズムをつけて呼ぶ凛。


「や、やめっ……!心臓に悪いですよ!」


蓮は耳まで真っ赤になる。そんな蓮を見て、凛は楽しそうに一歩近づいてきた。


「ふふっ……どう? 私だけが呼んでいい特別な呼び方。………兄さんっ♡」


蓮は、反論しようとしても言葉が出ない。


「兄さん……兄さん……♡」


小さな声で繰り返すたび、蓮の理性は削られていくのだった。



 ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡



昼休み。教室のざわめきの中、俺は机に突っ伏して溜息をついていた。


………昨晩からずっと、「兄さん」攻撃を受けている。廊下で呼ばれ、リビングで呼ばれ、風呂上がりでも呼ばれ………俺の理性ゲージは削られっぱなしだ。


父さんとさんにはその事でイジられるのだから、たまったものではない。


「……あの、瀬川さん………」


横から声をかけられ、顔を上げると神楽さん。流石に学校ではいつも通りのクールな姿のままだ。


良かった………。俺は安堵して大きなため息をつく。


「……なんですか?」


周囲の目もある。ここは冷静に、事務的に。


しかし次の瞬間――――


「兄さんっ、これ一緒に食べよ♡」


弁当箱を俺の机に置き、にこにこと微笑む神楽さん。


―――教室が、一瞬で静まった。


「……ギョッ?」

「今、『兄さん』って言わなかった……?」

「ブ、ブフェバベボビャブェボボボビィィィィィィィィィ!?」


クラスメイトたちの視線が一斉に俺に突き刺さる。


俺は、頭を抱えた。


「か、神楽さんっ!? なに言ってるんですか………!」


神楽さんはというと、口角をかすかに上げて微笑んでいた。


(………やばい……このままでは俺の学校生活が地獄生活になってしまう……!)


「ち、違う……!これは誤解で……こ、これは……その……劇の練習です、劇の練習!」

「え?神楽さん劇やるの?」

「ブェ、ブェブォィ?(げ、劇?)」


笑顔の圧で『合わせて』と合図を送るが、神楽さんは小首を傾げた。


「え〜?兄さ―――」


俺は、神楽さんの口を押さえて教室の外へと連れ出した。



――――――――――――――――――



連れ出したのは、人気のない階段の踊り場だった。


蓮は深呼吸をしてから、凛に向き直る。


「……な、なんで、あんなことを……?」


声が震えそうになるのを必死に抑えながら、蓮は問い詰める。


「に、兄さん……に……く、唇を………ふさ、塞がれ………♡」


凛は、先程の蓮の行動に感激して震えている。



次回、からかい上手の……ゲフンゲフン

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