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クールで男嫌いな高嶺の花が義妹になったら、俺にだけ甘々にかまってきて可愛い。  作者: never_Even


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第2話 クールな義妹が風邪をひいた

私、かぐ りんは、最近なんだかおかしいと自分でも思う。


男嫌いだった私が、どうしても一人の男の子を意識してしまうのだ。


そう気づいたのは、多分あの出来事があってからだ。



――――――――――――――――――



蓮と凛の両親は新婚旅行に出かけているため、昨日から不在だった。そんな日の朝のことである。


朝食の席で、凛の箸の動きはいつもよりぎこちなく見えた。眉間にはうっすら汗が浮かび、手もわずかに震えている。


蓮はすぐに異変に気づいた。


「………神楽さん、どうしました?」


小さな声で尋ねるが、凛は慌てて目を逸らす。


「べ、別に…………」


それでも、声は少しかれていて、呼吸も少し荒い。頬も少し赤らんでいた。


一昨日までただのクラスメイトだった蓮でも、その嘘に気づくのは容易だった。


「今日は、休んだほうがいいです。俺が家のことはやるんで」


「別に……………大丈夫」


大丈夫。と、そう言うが、明らかに体調が悪そうな様子の凛。


「声かれてるじゃないですか………」

「そんなこと……な―――けほっ、けほっ」


肩を揺らし、身体を丸めるようにして、凛はついに堪えきれず咳をした。


「神楽さん、咳してるじゃないですか。やっぱり今日は部屋で休んでいてください」


凛は小さく頷き、少し俯いたまま口元を拭った。


「………ん」


凛の声はか細く、まるで風に揺れる小さな花のようだった。



――――――――――――



最近できた凛の部屋は、窓から差し込む朝の柔らかい光で満たされていた。


ベッドに小さく丸まる凛は、肩をわずかに揺らしながら、熱で少し赤らんだ頬を手で隠すように俯いている。


「俺は飲み物と薬を持ってくるので、体温計で熱を測っておいてください」

「…………ごめん」


蓮は、凛の小さな「ごめん」という声に少し驚いたが、すぐに飲み物と薬を取りに部屋を出て行った。




「熱、何度でしたか?」


蓮が飲み物と薬をもって戻ってくると、ちょうど体温計の音が鳴った凛に体温を聞く。


「36.9度くらい………だから別に問題ない」


凛は少し俯いたまま答える。平気な素振りをしているが、声はか細く、肩も小さく揺れている。


少し怪しげに思った蓮は、布団をどけて、隠れていた体温計の画面を覗く。


「……っ、37.8度じゃないですか………!病院に行ったほうがいいですよ………!」


蓮は少し焦った声でそう言う。嘘がバレた凛は気まずそうに下を向く。


「………行かない」


凛は小さく首を振る。頬は赤く、少し熱っぽく、でも意地を張るように目を逸らしている。


「無理はしないほうが……」

「大丈夫、だから」


凛は言葉を震わせながらも、必死に平静を装った。


蓮は少し眉をひそめた。


(適切な距離は保たないと………でも放っておくわけにはいかない)


蓮はカーテンを少し閉め、部屋の明るさを調整する。窓からの冷たい風が入らないようにし、凛が快適に過ごせるよう配慮した。


凛は小さく咳をし、目を伏せる。


その心の奥で、何かがじんわりと温かくなるのを感じていた。



――――――――――――――



蓮が昼食のおかゆを持って凛の部屋へ行くと、凛の目が少しだけ腫れていた。


「………神楽さん、泣いていたんですか?」


凛は一瞬、びくっと肩を震わせ、慌てて目を伏せる。


「……べ、別に……」


かすかに声が震え、頬がさらに赤く染まった。


「辛いなら、無理はしないでください……」


凛は俯いたまま、しばらく黙る。


しばらくすると、布団をぎゅっと握りしめて小さく呟いた。


「……ちょっとだけ………寂しかった……頭も喉も痛くて………その、苦しい………」


凛は弱々しく、蓮に本音を語った。


蓮は、本音を伝えてくれた凛に、心が温かくなると、トレイの上のお茶を差し出す。


「少し飲んでみてください。喉が少し楽になるはずです」


凛は俯いたまま手を伸ばし、カップを受け取る。


「………ありがとう」


そう言って、お茶を飲む。


蓮は体温計を取り、そっと凛に差し出す。


「もう一回熱を測りましょう。必要なら病院も考えます」


凛は小さく首を振り、目を逸らす。


「……行かない……大丈夫だから……」


病院へ行くことは頑なに譲らない凛。蓮は困った様子だが、凛を無理に連れて行くことは緊急事態の時以外はしたくない。


ピピピッ、と体温計が鳴り、蓮が体温を確認すると、37.6度。


蓮は眉をひそめる。


そんな蓮に、凛は話題を変えようと、おかゆに目を向ける。


「お、おかゆ………!食べてもいい?」

「はい、どうぞ。熱いので気をつけて」

「………ん、助かる」


凛はそう言うと、視線を逸らし、トレイのおかゆを口に運ぶ。しかしその手は、わずかに蓮の方へ傾いている。


「……どうですか?」


蓮がそう聞くと、凛は少しだけ口角を上げて


「………おいしい」


と言った。


蓮は、不意の笑顔に心の中ではドキッとしたがそれを表情に出すまいと必死に堪える。



凛はおかゆを口に運び、ふーふをしてからちびちびと食べ始めた。


凛はおかゆを食べ終わるとベッドに横になる。布団を鼻までかけると、ひょっこり出ているその瞳を少し伏せて言った。


「………あの……私が寝るまで……その」


「心配しなくても大丈夫です、神楽さんが寝るまでここにいますよ」


「………ん」



その微妙な距離感が、二人の間に甘い雰囲気を漂わせていた。



――――――――――――――――




ということがあり、私は蓮くんのことがとても気になっている。


辛かったはずの風邪も、蓮くんがそばにいると思ったら、ころっと治ってしまった。


………でも、蓮くん私のこと『神楽さん』呼びなんだよね。『凛ちゃん』って呼んでほしいな。


私は蓮くんのことなんて呼ぼうかな………。


「普通に『蓮くん』……?でも普通かな……?」


あっ、そういえば蓮くんは私より一ヶ月くらい早く生まれたんだっけ。


「兄さん…………」


この呼び方は世界で私だけ。よし、早速今度、試してみよう。

次回、兄さん呼びを楽しむ義妹の凛ちゃん。

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