僕の能力
ということがあり、更に数年
「やった!完成だ!」
「おお!ついにか!長かったのう。」
「誰のせいだよ、誰の」
ジト目を向けると、フィノは目をそらす。
「これで下界に降りてもいつでもフィノに会いに戻ってこれる。」
そう、僕たちは結局別れることなどできなかった。なので、新しい転移魔法を作り上げ、コウキがフィノに会いに行くことにしたのだ。従来の転移魔法では神域から下界に行くことができても、下界から神域に行くことはできなかった。
この世界の魔法は、大きく分けて二つある。一つは個人個人が持っている、魔法回路を使った、意識すれば使える魔法。これは人によって異なる、使える属性の適性というものがある。
もう一つは魔方陣を利用して行う魔法。これは仕組みを理解すれば、魔力があれば誰でも専用のインクを使うだけで作ることができ、それに魔力を流すだけで、自分の適性が無い属性の魔法を使うことができる。これを使った道具を魔道具という。
さらに、魔力の扱いを熟練し、意のままに操ることのできる者は、魔力で魔方陣を形成し、即座に使えることができる。僕はフィノにしっかりと仕込まれた。
僕は時空間属性を持っていないので、その魔方陣にはとても詳しい。というより、下界では完全に失伝しているらしい。まあ、神であるフィノと異世界間の移動を何度か経験したコウキにより、術の開発に成功した。
しかし、
「消費魔力量がえぐすぎるんだよなあ」
「うむ。ざっと妾十人分の魔力じゃ。」
「下界で集めても何年かかるか。なんでこんなに消費魔力量が多いんだ?」
「コウキは人間じゃからな。下界から神域の隔たりを超えようとすると抵抗されるのじゃよ。」
「僕が神になれば楽に行けるの?」
「うむ。それに、神になれば全属性の魔法を使えるようになる。それも時間の問題じゃろうて。」
「でもすぐには無理だよね。」
「ううむ、コウキのギフトとカースでは厳しいじゃろうし…」
僕には今いくつかの力がある。
まず、善神オーレスティスから貰ったギフト「ジャッジ」
これはマジでくそスキル。僕の前で噓をついた者に自動で精神的ダメージを与える。
何がくそって、これ、自分もかかるんだよね。しかも精神的ダメージが中々につらかった。その後、フィノに慰めてもらった。
次にフィノから貰ったカース「チート」
これはマジで神スキル。ありとあらゆるものを騙すことができる。
何が神って、これ、五感や考えを騙せるだけでなく、スキルも騙せられるんだよね。つまり、「チート」で「ジャッジ」を騙して平然と嘘をつけるし、フィノが本当のことを言っても「ジャッジ」を発動させられたんだ。それをやったらフィノがしばらく口をきいてくれなかった。
まあ、これらがあっても転移に使う魔力は確保できない。フィノ曰く、下界に出て、いろいろなものを騙していくと、そのうち世界すらも欺けるようになるらしい。まじやべー
「加護をフルで使えばどうじゃ?」
そして僕の貰った力の一つに善神の加護と悪神の加護というものがある。
まず善神の加護は、光属性の魔法の補正、そして、善のカルマの能力変換というものがある。
これは、所持者に向けられる感謝や喜び、期待などの正の感情を自動で集め、集まった量に応じて、あらゆる能力が上昇するというものだ。その中には最大魔力量も含まれる。
悪神の加護は、さっきの反対で、闇属性の魔法の補正、そして、悪のカルマの能力変換だ。
これは、所持者に向けられる恐怖や畏怖、嫌悪などの負の感情を自動で集め、集まった量に応じて、あらゆる能力が上昇するというものだ。
「どうやるの?」
「うむ。まず、コウキには勇者と同時に魔王になってもらうのじゃ。」
「は?」
どゆこと?
「まあまあ、最後まで聞いてくれなのじゃ。まず、召喚された国で勇者として活躍し、善のカルマを集めるのじゃ。」
「うん。」
「そして裏では魔王として人々を苦しめ、悪のカルマをあつめるのじゃ!」
「おお!」
「どうじゃ?これで大量のカルマを能力に変換し、転移魔法を発動できるようにするのじゃ。」
「ん?」
「どうしたのじゃ?」
「魔王ってすでにいるんだよね?」
「うむ。」
「それじゃあ人々が恐怖するのってその魔王だよね?」
「あ!そ、そんな。妾の最高の策が…」
「すごいどや顔だったよね。」
「くっ、ころせーなのじゃあああ!」
「まあまあ、でもいい考えだよ。」
「慰めなどいらぬのじゃ。」
「いや別に魔王じゃなければいいだけでしょ?」
「へあっ?」
「そうだね~… よしっ!僕はこれから邪神ルシフェルだ!
これから下界を僕、いや我が支配する。異論のあるものは死、あるのみだ。」
「ふぇあ?!」
「ん?どったの?」