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ナオトの容態

医務室についたユウカの目に入った光景は、彼女の弱い心を崩すのに十分衝撃的なものだった。



~ユウカ視点~


「う、うう。」


「ナオト!おい!しっかりしろ!」


テツヤ先生は、ベッドで横たわっているナオト君に声をかけています。


「な、ナオト、君…ッ!」


ユウカは、精一杯声を出したつもりだったのですが、その悲惨な姿を見た途端、言葉を無くしてしまいました。


ナオト君の体は、人のものとは思えない程に変形していました。ユウカに優しく触れてくれた手は明後日の方向に折れ曲がり、その指は歪な形になっています。ユウカが憧れた、その大きな背中も腰の辺りで横に折れ曲がっています。

そして、ユウカが一目惚れをしたその顔は、目と鼻と口であっただろう窪みが、元の顔でいう、おでこや頬の部分にあり、顔全体はしわだらけで、皮膚も、腐った果物の様な色をしています。


「ユウカか…」


テツヤ先生はユウカを見る。私の視界は、もう、涙で歪んで見えます。


「せ、先生、ナオト君は、治り、ますよね?」


分かっています。分かっていますが、聞いてしまうのです。


「すまん。治癒師にも診せたが、治せないようだ。」


先生は下を向き、言葉を絞り出すかのように、言いました。


「そう、ですか。」


分かっていても、面と向かって言われると、また涙が溢れてしまいそうになります。


「あの野郎、何が『光の勇者』だ。わざと骨格を歪ませたまま治癒をして、もう治すことができなくしやがった。あいつは勇者なんかじゃない。悪魔だ。人の皮をかぶった…」


明るくて、一緒に居るだけで元気が出るミドリちゃんの心を壊し、この目の前の光景を作り出した張本人がまだ息をしていることに、どうしようもない程に、怒りを覚えるのです。ユウカは絶対にアイツを許しません。絶対に…


「が、あぁカ、」


ナオト君がうめき声のような声を出し、ユウカの方に、枝分かれしたような腕を向けます。


「ナオト君!大丈夫、ですか、痛く、ないですか」


ユウカは叫ぶように声をかけ、その手を握ります。


「が、ぎん、じご。ユ…ガ、ぎ、げん…じ、お。」


「なんだ?…き、け、危険?何がだ、ナオト。まだ何かあるのか?」


テツヤ先生がナオト君が何を言っているのかを聞き取ろうとしています。


「いえ、恐らく、棄権しろ、じゃないかと、思います。試合を。」


ユウカは怒っています。こんな酷い事をしたアイツに。ですが、それ以上に、恐れ、怯えているのも確かです。ユウカより強いナオト君がこんなことになるのです。ユウカも、いえ、もしかしたら、もっと酷い事をされるかもしれません。そう思うと、体の震えが止まらないのです。


「ぞ、お。ぎ、げん…じ、で。」


「…ああ、それは私も同意見だ。今すぐにでも控え室に行って、アイツの顔をぶん殴りたいが、できない。届かないんだ。ユウカ、いつか絶対にアイツを殴る。だが、それは今じゃない。分かってくれるな?」


「…はい。分かり、ました。」


ああ、ユウカはクズです。二人に棄権しろと言われて、安心しています。ナオト君がこんな目に遭っているというのに、ユウカはそうならないと聞いて、喜んでいるのです。ユウカはユウカが嫌いになりそうです。


『さあさあ!次の試合です!コウキ選手対ユウカ選手の試合が始まります!両者、リングまで上がってください!』


解説の声が聞こえます。


「ユウカは、棄権、してきます。」


ユウカは医務室を後にし、リングに向かいます。

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