ダブルブッキング
まぶしかった。いったい何が起こったんだ?
まさか第三次世界大戦の開戦が我が学校であったとか言わないよな?
落ち着け。
フーースーーハーー
体は動く。息もできる。だが何もない。そう、何も。
床らしきものもない。立っているのか倒れているのかすらわからない。ただただ真っ白な場所。
しばらくいたら気が狂いそうだ。
「こんにちは。シンジョウコウキ」
背後から声がした。後ろを振り向こうとしてもできない。宇宙遊泳とはこんな感じなのか。
「突然のことで驚いているでしょう?」
「え、ええまあ、はい。」
返事をしてみた。
コッコッと足音がする。歩けているのか?こんな場所で?ソレは僕の前で立ち止まった。
声から女性だとわかっていたが、これほど「美しい」という言葉が似合う者はいないだろう。
カエデはどっちかというと可愛い系だしね。そういえばカエデたちはどうなったんだろうか?
「まずは自己紹介を。私は善を司る神、オーレスティスです。ティアと呼んでくださってかまいません。
この度は誠に勝手ながらあなたを勇者として私の治める世界、フィルガンドに召喚させることになりました。」
「は?」
「申し訳ありません。あなたの数多の善行が私の目に留まり、(顔もいいし)あなたならフィルガンドの人間たちを魔族や魔王から救い出してくれるだろうと思い、召喚させてもらいました。」
「え?」
「ですがご安心ください。私の勇者として、特別なギフトと加護を授けます。
あなたのその穢れなき心なら十二分に扱えるはずです。」
「いや、あの」
「ではグランドポート王国に送ります。」
「ちょ、ま」
空間にひびが入り、目も開けられない程まぶしくなり、浮遊感がした。
「ああああああああ!落ちてる!おちてるぞおおおおおおお!」
しばらく落ち続けてやがて浮遊感がなくなった。
別に地面に落ちたとかではない。緩やかに減速していったような感覚だ。
「う、うう」
目を開けると、何もなかった。
またか?と思われるかもしれないが違う。今度は真っ黒だ。
見渡す限りの黒、黒、黒。
しばらくいると、気が狂いそうだ。ってもうやったか。
「おお!やっと来たか!待っておったのじゃ!」
そこには10歳にも満たぬような青髪の幼児がいた。