プロローグ
これはある男の物語。その男はまさに「正義」という言葉がよく似合う。
ひったくり犯を捕まえ、
複数の男たちに囲まれ、貞操の危機に陥った女性を助け出し、
連続殺人犯の魔の手からある一家を救いだした。
それらの功績を見ているものがいた。彼女は善神オーレスティス。彼女は神域でその男を見ていた。
「ああ、彼こそが私の世界フィルガンドを救ってくれる勇者としてふさわしい。」
彼女はそう判断した。してしまった。
その後、その男は常人なら近づくことすら躊躇われるような不気味な裏路地に入っていった。
その奥には廃れたバーがあった。そしてずいぶんとなれた手つきでボロボロの扉を開ける。
建物の奥には40代位のちょび髭をはやしたバーテンダーらしき人物がいた。そして男は注文をする。
「黒いバラと死神の鎌を12人前」
「サービスは?」
「いらん」
「ようこそいらっしゃいました。ボス」
バーテンダーの背後にある隠し階段の入り口が開く。
「皆さんお揃いですよ。」
バーテンダーが言う。
「ああ。」
男はそれだけを言い残し、隠し階段の奥へ消えていった。
このバーは第三次世界大戦の開戦を娯楽のために求める裏組織「黒曜花」の支部であり、男はその組織の長である。
それを見ているものがいた。彼女は悪神フィアルノリア。彼女もまた、その男に惹かれていた。
彼が抱える、その巨大な『悪』に。