2話•150円の天使
「ごっごっご飯〜オコメとお散歩〜楽しいような〜楽しくないような〜♪」
楽しくないんかい。
「おやおや?」
グハッ!急に止まるな。
急に止まる百花の横で、オコメは首をかしげる。
「おいオコメ、見ろ!この自販機、無が売られてるぞ、でも150円ってなかなかするなぁ」
店員のミスだろ、何も出ないよ。
「……オコメは本当につまらない犬だなぁ、こういうのはロマンスやぁ、あんな、今の私は徳を積んでるから、ただの人間じゃないのよ、あれや!スーパーヤサイジン?あのぉ男の子が好きなヤツ!あれや!だからな?もしかしたら神様が日頃の行いで何か特別な物を出してくれるかもしれないのだよ」
また馬鹿な事を……
「ここに150円がある。丁度や」
それは100円が俺の水代で、50円はお前の駄菓子代だろ。
「なんや吠えて、私はご主人様だ、犬風情が私よりお金を貰うなんて図々しいぞ、拾ってもらった恩を忘れぬように」
自分で今まで積んできた徳を蹴り倒したぞ。
「さーて何が出るかなぁヒッヒッヒ……」
百花は硬貨を入れて、ボタンを押す――が、何も出ないな。
「あれ?何も出ない、壊れてるんじゃない?」
天罰だな。
と、その時。隣の車道で生き物がコンクリートに叩きつけられたグシャッという音が聞こえてきた。
「ウワッ!なんか凄い音がした――って人?150円で天使のコスプレをした人が落ちてきた?」
あ、起きた。
「いつつ……誰が天使のコスプレだって?天使だっっっつの!愚かな人間が」
「?」
「いや、首傾げるなし」
「頭を強打したんちゃうかぁ?早よ病院行きな」
「だーかーらー!天使なの!これ見ろ!天使の輪――って待て待て待て!触るな!止まれ!」
「何で〜?光ってない天使の輪なんて気になるやぁん、見せてーなぁ」
「光ってない?自分の頭の上にあるから明るいと分からないんだよなぁ、ッチ、ホントだよ」
天使の輪って取れるのか。
「あんな、私のオカンはな?叩いて光らせてるんよ」
「電気じゃないの、分かるか?これは徳のエネルギーで光ってるんだ」
「なら私の頭に乗せたら光るな」
「あっ……ちょ!」
本当に光った。
「やっぱり作り物やないのお?これ、他に天使って証拠は?」
「背中のこの大きな翼だ!」
「ウワッ、汚いなぁ」
「うっさい」
「飛べるんそれ」
「飛べる……もちろん」
目が泳いでるぞ。汗すごいし。
「じゃあ飛んで見せてさ」
「無理」
「は〜?なんでえなぁ」
「た、高い所が苦手だから」
「流石は150円なだけあるな」
いや、お金を入れたから出てきたわけじゃないよ。
「150円?あー、見てたぜ人間、お前自販機に金吸い込まれたろ」
「人間ちゃいます〜百花です」
「どうでも良いわ、人間の名前なんて、この天使の力でその150円取ってやろう」
帰ろうよ。
「へー!見せて見せて、魔法でも使ううんか?」
「まあ、見て驚け!ゴッドクラッシュ!」
ウワッ!この天使、自販機を蹴り始めた。
「おら!出しやがれ!無機物の癖に生意気だぞ」
「今のヤクザもいろんなのがおるんやなぁ……いこかオコメ」
パトカーが来たけどお前が呼んだのか?
「まあ150円でオモロイの見れたし、今回はヨシとするか」