1話•米を拾う
―― スマナイナ、オマエガイルト、オモクテフネガトバナクナルンジャ、キットアノ、ホウタイノニンゲンガヒロッテクレルダロウ ――
またあの夢か、良く寝たな。なんて思っていたら目の前に、ピカピカのローファーを履いた女子中学生がボーとみていた。
「ジブン賢そうな顔しとるなあムカつくわ~」
犬を見てそんな言葉を放つ奴初めて見た、のんびりした話し方でお前はアホそうだな
「そんなジブンにはこの問題を解いてもらいます、覚悟しいやあ、中学生の問題やで、天才のジブンでも無理やで」
その前に犬なんだが。
「これや、ププッ!もしかして分からへんか?」
だから、おれは犬だから人間の文字は分かんないんだよ。
「因みにウチは分からん!馬鹿やさかい、えっへん」
知らないのかよ。威張れることじゃないだろ。
「ジブンはあれやな、歩いたら棒に当たるタイプの犬やな。賢そうな顔しててもウチは騙されへんからな~」
なんなんだこの子供は。
「ウチは歩いても棒にあたんない~人間やさけえ」
馬鹿そう歩き方。じゃあな。
「あ~逃げるんかあ?どこ行くんねや、ジブン井上カフェの飼い犬か?ウチのお姉ちゃんが働いとんねん」
あっそ。
「ま~小汚いしその様子じゃ野良みたいやなあ」
ついてくるな、俺は独りが好きなの。
「せや!うっとこにけぇへん?前飼ってた犬が突然消えて、おかんとおとんが飼いたがっとんねん、せやけど高ぉてねえ買えませんねん~。せやさかい犬をひろてきたって言うたらワンチャン、お小遣いが倍になるでえ。ワンちゃんだけに」
まあ飯に困ってたしいいか。行く。
「よしよし、大人しいし、育てるのが楽そうなお犬さんだね、これはお手柄や」
頭がいいからな。
「ウチは百花、井上百花。よろしゅう~ジブンは名前なさそうだし今日から……オコメや」
向かいの米屋を見て適当に決めたろ。
この日、天才の俺はこの馬鹿に拾われた。