荒れた山に木を植えてみた
かつて世界中を旅した私は今、ひとつの荒れた山に来ている。
何度も訪れた国だが気候変動のせいなのか、この山には樹木が生えていない。
現地の気候に合う苗木を集めた私は、人を雇ってこの山に木を植えた。
だが、植えた木は残らず誰かに抜かれてしまった。
ガイドに聞くと、麓の村人が薪に使ってしまったのだそうだ。
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翌年も同じ山に来た私は実の成る木を植えた。
大きく育てば豊かな恵みをもたらすと分かれば、村人も抜きはしないだろう。
しかし、またしても木は残らず抜かれてしまった。
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更に翌年も同じ山に来た私は、細長い葉を持つ木を植える事にした。
いずれ小さな桃色の花を咲かせるこの木は、村人の心も安らかにするだろう。
だがやはり、木は残らず抜き去られてしまった。
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次の年も私は、同じ山に同じ木を植える事にした。
今度は植えた木が抜き去られる事は無かった。
<めでたし、めでたし?>