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「好き」って言えない

作者: 夜空タテハ

テキトーになんか書きたいなって勢いで書いた掌編です。

 秋の香りが漂う、学校からの帰り道。風は少し肌寒くなってきて、服装を迷うようになってきた今日この頃。

「寒くなってきたね」

 なにげなく、私は隣を歩くアズミに声をかけてきた。

「確かに、この頃は気温が下がってきたな。服装には気を付けないと……。ハルナ、お前、着る服はちゃんと選んであったかくするんだぞ?」

 アズミはそう言って、私の方を心配そうに見つめてくる。

「そんな心配されなくても、ちゃんとするよ」

「そんなこと言って、去年は着るモノがないって風邪を引いてこじらせてたじゃないか」

「そ、れは……そうだけど……。でも、去年に学んだから、今年は大丈夫だよ!」

「ならいいけどな……」

 アズミがそう言った途端に、ビュンっと強い風が吹いた。私は思わず少しよろける。

「おい、大丈夫か?」

 アズミはそう尋ねながら、私の体を抱きとめてくれた。アズミの体温が近く感じられて、ドキドキする。

「大丈夫……、ありがと、助けてくれて」

「いや、大丈夫ならいんだ」

 アズミが心から安心したように言う。体を離されて、少し息を整えた。

(ああ、もう少しあのままでいたかったな)

 心の中で、そんなことを呟いた。

「ハルナ、どうかしたか? やっぱりどこか怪我でも……」

 私の様子を見て、アズミが心配そうにしていた。

「なにもないよ、ありがとう」

 私は笑顔でそう取り繕った。本当は、なにもないなんてことはなかった。もっとアズミの近くにいたいと思っていた。

 でも、もうすぐアズミとは帰りの方向が違う交差点に差し掛かるところだった。ここで私とアズミは一旦お別れ。

「なにもないからいいけど、なにかあったらちゃんと言うんだぞ?」

「うん、わかってる。ありがと。じゃあ、そろそろ、また明日」

「ああ、もうこんなところまで歩いてきてたか、また明日。元気で会おうな」

 朗らかに笑いながら、アズミは手を振って去っていく。私はなんとなく、去りゆくアズミの背中をずっと見つめていた。

「……好きだよ、アズミ」

 どうしてこんな簡単なことが言えないんだろう、なんて思う。私の独り言は、誰の耳にも拾われず消えていった。

 アズミと付き合うことになってから、今日で半年。いまだに私はアズミに面と向かって「好きだ」と言えていない。

 告白はアズミからだった。私はそれをオーケーした。私も好きだよとは言えなかった。なんとなくずっと恥ずかしくて、「好き」という言葉を口にできないまま、時間が過ぎている。

 私は本当にアズミのことが好きなのかな? 不安になる時もある。でも、ちゃんとしっかりけっこうガッツリ好きだ。アズミと一緒に過ごしていて、よくわかる。アズミのことを好きな気持ちは、日に日に膨らんでいく。

 いつか、きっとハッキリ面と向かって伝えたい。アズミのことが大好きだよ、って。

 そんなことを思いながら、私はきっと明日も好きだなんて言えないまま、アズミと一緒に幸せな時間を過ごす。

 アズミと一緒にいる時間は、私にとってかけがえのない幸せな時間だ。こんな時間が、ずっと続けばいいのに、って思う。

 明日もきっと、アズミのかっこいい笑顔を見られますように。夕暮れ時の空を見上げながら、そんなことを願った。


〈了〉

何も語ることなぞない。

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