不穏な動き
三瓶の体は90度以上に体を曲げて
頭を下げていた。
「三瓶さん、そこまでしなくて良いですよ。
それより塩見の事で何か気づいたことが有ったら教えてください」
「はい、聞いた話だとピーエヌエーの上場の時に
塩見と山田組との株の取り合いで
菊池さんがかなり組員を痛めつけた
話しを聞きました。結局上場の手続きに入って
からの資金繰りに困ったピーエヌエーの社長に
多額の裏金を貸して山田組かなりの金を儲けたそうです」
「結局、塩見が負けたわけですね」
「はい、総会屋が上場で操作で負けると信用問題ですからね。
かなり山田組を恨んでいました」
「実は今朝あなたの上司の菊池さんの
部屋で大量の血痕が発見され
永田町の事務所の周りに新世会、龍神会、松川組、
真田組の組長、若頭が集まって
先ほど新宿で山田組傘下の組員が殺されていたそうです」
「新世会、龍神会、真田組、松川組知っています
事務所によく来ていました。
それって、先生の報復でしょうか?」
三瓶は菊池が殺されたと思って血の気が引いていた。
「警察は捜査中です、おそらく塩見氏の名前は
出てこないと思いますよ。警察は菊池さんの
血痕は知りませんから」
「警察が知らない事を亮さんが知っているんですか?」
三瓶は亮が何故知っているか不思議でしょうがなかった。
「ええ、まあ色々と・・・。とにかくこのゴタゴタで
塩見氏は三瓶さんの事は忘れているでしょう」
「そうですね」
三瓶はこのまま自分が塩見に忘れ去られ
家族が無事だあればよかった。
「でも、日本最大の反社会組織と塩見氏の抗争か・・・」
亮の頭の中でどんな抗争になるか頭の中思い浮かべていた。
「先生は山田組に対抗する他の組織と繋がっています」
「警察と政治家ですね」
「はい、それだけじゃなくて」
「宗教団体のお金を動かしているんです」
「なるほど」
亮は塩見が危険な金に手を出している事を知って
ニヤリと笑った。
「それで亮さん、たまには直子さんと会ってあげてください。
寂しそうにしていましたよ」
「は、はい」
亮は突然三瓶に言われてドキッとした。
~~~~~
翌朝、市ケ谷国立病院へ行くと
大原智子が玄関で待っていた。
「お久しぶりです」
丁寧に挨拶した智子はビジネススーツの似合う
女性になっていた。
「智子さんすっかり係長が板についてきましたね」
「そうよ、突然、前任者が辞めるから」
「すみません」
「先生にアポとってあるわよ、行きましょう」
「こんな時間に空けてくれたんですか?」
「ええ、診察の時間をちょっとずらしてもらったわ」
「ありがとうございます。智子さん」
「うふふ」
智子は亮を部屋に連れて行くと松坂医師が入って来た。
「お待たせしました」
「始めまして、團亮と申します」
「松坂です。あなたの白血病の治療に対する
和漢方薬と食事療法の論文を読ませていただきました、
私も参考にさせていただいていて
当病院でも病院食としてメニューに積極的に
使わせていただいています」
松坂は亮と握手をした。
「ひょっとしたら先生も東大ですか?」
「はい、今でも薬学部の下村教授に会うたびに、
あなたの名前を聞いています」
「そうなんですか?」
亮は事あるごとに研究室に誘って
くれていた下村教授を思い出した。
「医療が進化していると言われる中で
日々研究をなさっている薬学者のみなさんの功績は
とても大きいです」
「ありがとうございます、そう言われますと我々も励みになります」
「早速ですが、国城芽衣さんの病気の件ですが
『急性骨髄性白血病M2急性分化型骨髄芽球性白血病』です。
團さんには説明の必要はありませんよね」
松坂医師は亮にカルテを見せた。
「はい、M3急性前骨髄球性白血病じゃなくて良かったですね』
亮はM0~M7まで分類されている急性骨髄性白血病の病状の低い
M2でホッとした。
「はい、化学療法の効果があってかなり良くなっています」
「松坂先生、国城芽衣さんの医療費は私がお支払いします」
「はあ・・・」
松坂は国城が医療費を溜め込んでいるのを知っているの知っていて
たが、亮が何故国城芽衣が医療費を払うか不思議だった。
「もし良かったらDUN製薬の白血病薬を使ってください、
無償で提供します」
「本当ですか!」
松井は高価な新薬が無償と言われて喜んだ。
「ではそろそろ」
亮が椅子から立つと松井が亮を止めた。
「会っていらっしゃいますか?」
「そうですね」
亮が松井の案内で芽衣のところへ行くと
化学療法で頭の毛が抜け落ち帽子を被っている
芽衣が食事を終えて点滴を腕に刺していた。
「国城さん」
松井が声を掛けると芽衣は顔を持ち上げた。
「おはようございます」
芽衣が松井に挨拶をすると智子が話しかけた。
「DUN製薬の大原と申します。今日松井先生と
お話をして芽衣さんに薬の臨床のお願い上がりました。
協力いただけますと医療費はすべて当社で
払わせていただきますが如何ですか?」
「本当ですか?是非お願いします」
芽衣は正章を始め家族全員の負担が減ると思って
1も2も無く喜んで返事をした。
「芽衣さん、何か欲しいものあるかしら?」
「別にありませんけど、兄が最近お見舞いに
来ないので臨床の件伝えてもらえますか?」
「もちろん、お兄様にも沖縄のご家族にも伝えておきます」
智子は優しく微笑んだ。
「よかったね、国城さん。早く病気を治して
また歌手を目指ざしてがんばるんだよ」
「はい、先生」
「国城さん、歌手目指しているんですか?」
「はい、そうです」
智子の後ろから亮が顔を出して聞いた。
芽衣は多くのミュージシャンを輩出してきた
誇りを持った沖縄の女性らしく明るく答えた。
「芽衣さん、あなたの歌のデータ持っていませんか?」
「えっ?」
芽衣は枕元にあるデッキの脇に置いてあったCDを
亮に渡した。
「一昨年、オーディション用に録音したCDです。それでよかったら」
「レコード会社の人が友達なので一緒に聞いてみます」
「お願いします」
亮と智子が芽衣の病室を出ると
智子が亮のお尻を蹴飛ばした。
「また、いい加減な事いって喜ばせちゃだめよ。相手は真剣に
考えているんだから」
「いい加減じゃないです。彼女は才能があると思いますよ。
手、足の筋肉量、白血病は倦怠感があって辛いのに
あの筋肉を保っているとはえらいですね」
「亮ってそんな所見ていたの」




