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亮の人脈

「絵里子さんはハワイに詳しいんですね」

「知人のコンドミニアムに時々遊びに来ていました」

「あはは、それは凄い。ところで失礼ですが、

ハーバード大学に留学とは相当お金がかかるのではないですか?」

「はい、学費が日本円で55000ドルで寮費、生活費代を含めると

年間800万ドルくらいです」

祐希を丁寧に真壁に説明をした。


「ほう」

真壁は祐希の家の資産状況を知って体を乗り出した。

「ところで、栗田さんは何処の銀行ですか?」

「銀行員と分かりますか?」

「はい、一目で」

「本人に聞いてみるといい、口座を作ると

言ったら喜んで教えてくれるでしょう」

真壁は絵里子や祐希のお金を利用する事を考えていた。


「知り合いにお金持ちがいるんでしょうね」

「はい、いますよ」

絵里子はオチャメな雰囲気で笑った。

「それは興味あるなあ、どんな人ですか?」

「私は大企業の社長さんとか病院の院長とか、

その他ロビン・ハイド、劉文明それから

スーパーモデルのシンディです」


「私はランド不動産のCEOキャシーランドさんとか

ピースマートの社長の息子さんとか」

「あはは、それは私でも知っている。

そのうちの三人はフォーブスに載るほどの

金持ちだしシンディが日本に来た時、

銀座のホステスにねだられてファッションショーへ

行ったよ。凄かったなあ」

真壁は祐希どころか絵里子まで馬鹿にしていた。


日本の経営者は自分のレベルで物事を考え、

お金を持っている人間には媚びるが

自分より年下や女性、収入や学歴が低いものは

上から目線で高圧的な態度を取る。


銀座で多くの男を見てきた絵里子は

真壁もこんな人物だろうと笑われた事は

気にしていなかった。


「絵里子さんもっと現実的な人はいないかね」

「では、團亮さんは知っていますか?」

「ん?」

亮の活躍は一般人には伝わっていなかった。

「銀座の美宝堂の息子さんです」


「ああ、美宝堂なら知っている。

相当な資産家らしい親しいんですか?」

「はい、かなり」

真壁は急に態度を変えて絵里子の手を握った。


「是非、紹介して欲しい、今蒲田に建築中の

マンションがあるんだが京浜地区は免震にコストが

掛かって値段を高く売らざるおえないんだ」

「それは、分譲マンションを團さんに紹介する話ですか。

それとも別な話ですか?」


「それは色々と」

真壁は真剣な顔をして答えた。


「お待たせしました」

そこに栗田がテーブルに来た。

「絵里子さんこの続きは後で」

「はい」

絵里子は真壁の動きを見ているのが面白かった。


「真壁さん、明日一緒にゴルフをする事になりました」

「おお、それは良かった。ありがとう栗田君」

真壁と栗田が笑いながら握手をした。

「私達、お邪魔かしら?」

絵里子が席を立とうとすると真壁がそれを止めた。


「ま、待ってくれ。絵里子さん明日時間があるかな?」

「ええ、ありますよ」

「ある人とハワイ観光に付き合ってもらえないだろうか?」

真壁が言うと栗田が露骨に嫌な顔をして首を横に振った。

「真壁さん!」


「いや、彼女は信用できると思う」

絵里子は真壁に言われてニコニコと笑っていた。

「でも、黒崎さんとは昨日会ったばかりですよ」

栗田は相変わらず人を見下した言い方だった。

「すみません、栗田さんは何処の銀行ですか?」

「四菱銀行です」


「あら、京浜不動産さんのメインバンクの

いなほ銀行さんではないんですね」

女の絵里子が簡単に答えるので真壁と栗田は

顔を見合わせ真壁が絵里子に聞いた。


「絵里子さんずいぶん詳しいですね」

「ええ、株を少々やっているもので会社四季報はよく見ます」

「ほう、女性では珍しいですね。株好きとは。

栗田君絵里子さんは美宝堂の息子さんと親しいらしい」

真壁は栗田に亮の話をした。


「えっ、黒崎さんは團亮さんをご存知なんですか?」

「はい、栗田さんよくご存知ですね」

絵里子はマスコミ嫌いの亮の事を

知っている人間が居た事に驚いていた。


「はい、私は政治家さんとのお付き合いが有るもので

 團さんの話しはよく話題に出ています。アメリカに

 太いパイプを持っているそうですね」

「うふふ、そうですね。この前大統領とお酒を飲んだと言っていました」

絵里子は太いパイプと聞いて別な事を思い出していた。

「おいおい、そんな話聞いていないぞ、團亮って何者だ?」

真壁が二人の間に割り込んだ。


「團亮さんは年齢が28歳、東京大学薬学部卒業で

薬学博士、ハーバード大学大学院で経営学を

学んでMBAを持っています。株式会社プラウの社長さんです」

絵里子はそれ以上多くを語らなかった。


「プラウ?そんな会社聞いた事もない」

「いずれ分かりますわ」

真壁は聞いた事も無い会社の名前を聞いて

亮はただの金持ちのボンボンだと思ってホッとしていた。

「ちょっと、トイレに行って来る」

真壁が席を立つと絵里子は財布から

名刺抜き栗田に見せた。


「栗田さんこれで信用していただけますか?」

「クラブ蝶絵里子ママ」

クラブ蝶は銀座で12を争う高級クラブで

普通のサラリーマンが簡単に入れる

お店では無かった。

「私のメインバンクは四菱さんです。

調べてください」

栗田は絵里子に言った無礼を

思い出し手が震えていた。


栗田は話の全身から漂う雰囲気、男あしらいの

上手さは只者ではないと感じていたが

「それで私は明日どなたとお付き合い

すればよろしいのかしら?」

栗田は名刺を見ただけですっかり絵里子を信用して

話しを始めた。

「実は今夜、民政党の岡村幹事長が

お忍びでこちらにみえるんです」


「プライベートですか?」

「はい、ご家族と一緒で私達は明日幹事長と

奥様とゴルフをする事になっているのですが

 お嬢さんが一人では退屈ではないかと思いまして」

「まあ、それならお好みのところをご案内しますわ」

絵里子が自信を持って答えたがもし亮だったら

どんな風にもてなしたか思い浮かべていた。


「黒崎さん、團さんを是非紹介して

いただけませんでしょうか?」

「はい、どういった理由で?」

絵里子は真壁と同じように亮の父親のお金を

目的ではないかと警戒した。


「実は今度のアメリカでのバイオ燃料と

ドライアイスプロジェクト2つのビジネスに

参加したい企業が我々のグループにあるのですが

いなほ銀行と五島商事のグループだけに

仕切られていて入り込めないんです」

「ええ、確かに四菱グループは

すばらしい企業がたくさんありますね」


「はい、キーマンの團さんにぜひご検討を願えれば」

栗田はテーブルに手を着いて頭を下げた。

「どうして亮、いえ團さんの事に詳しいんですか?」

「先ほど言いましたが民政党は團さんの

功績を調べ上げています。

特にアメリカとのパイプは外務省

より太いのではないかと・・・」


絵里子は民政党が亮の事を調べていると言われて

何処まで調べているか気になっていた。


たとえば、田中誠一元代議士の利益供与

及びインサイダー事件、

東京タワー爆破未遂事件、東京証券取引所爆破未遂事件、

横須賀沖爆弾事件

そして今回のハイジャック事件すべてが

亮の功績とは知っているとは思えなかった。

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