塩見への逆襲
美咲は犯罪がハイテク化かつ巧妙化している現在、
犯人のアリバイが特定しにくくなり
犯罪を立証できなくなっている事に恐怖を感じていた。
「とにかく、犯人を特定しよう。駅の防犯カメラのデータを
を集めて検索しよう。亮君できるな?」
「ええ、出来ます」
亮は巌の問いに自信持って答えた。
「あす直ぐに手配する」
「お父さん、明日じゃ間に合わない
警視庁の捜査会議があるんだから」
美咲は命令を待っている下田と根本の事が気になっていた。
「そうでした、国城を見つけ出して
アジトを見つけなくてはなりませんね」
「そうよ、どうする?」
「とりあえず明日の犯人の行動を予測しましょう。
今日は夕方の帰宅ラッシュを狙ったので明日はまた
出勤ラッシュを狙うと思います」
「でも出勤ラッシュは発見が早いって言ったじゃない」
「奴らが出勤時間を狙ったのは定期券が多いので
改札でのトラブルが少ないと思ったからです。
それが思ったより山手線は定期券以外の人間が多かった。
今度は監視カメラの目を避け、定期券の多い私鉄を狙うと思います」
「私鉄はたくさんあるけど・・・」
「犯人が国城なら西武池袋線はありません、
東急、京王は地下を通るので無し、
京成線と京浜急行は候補として取っておいて
小田急線と東武東上線が考えられます」
「そうか・・・」
「その4線から絞り込むとどうなる?」
亮の推理になった巌が亮に聞いた。
「今日の行動から推測すると新宿からの乗車の可能性があります。
つまり新宿近辺に身を隠している可能性があります。距離的に遠くて
移動にJRを使う京成線、京浜急行は避けると思います」
「なるほど、小田急線か東武東上線どちらの可能性が高い?」
「美咲さんはどう思いますか?」
亮が巌に聞かれると美咲に聞いた。
「そうね新宿なら小田急線かしら?」
美咲は不安そうな顔をして聞いた。
「じゃあ、新宿を張りましょう。西口地上改札、西口地下改札
そして南口改札の3ヶ所を張りましょう」
「えっ!小田急線でいいの?」
「ええ、僕も小田急線だと思いました。東武東上線は国城が普段
学校に行くのに乗り換えで使っていて
顔見知りに遭遇する可能性がある池袋は回避すると思います」
「ああ、そうか」
美咲は納得して直ぐに下田に指示の電話をかけた。
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「亮が欲しいとはどうゆう意味だ。亮には沢山女がいるぞ」
絵里子が亮と言った事に秀樹は驚いて答えた。
「うふふ、そういう訳じゃなくて祐希が
日本に帰ってきて黒崎コンツェルンを継ぐ時に
亮に守り役として手伝ってもらいたいの」
「ああ、それならあいつも喜んで手伝うだろう。
亮と祐希さん親しいのか?」
「ええ、亮が祐希を女にしたんですもの」
「な、なんだって!」
秀樹は息子の亮は絵理子に続いて娘の祐希に手を出すなんて
とんでもない男だと思っていた。
「そろそろ塩見さん帰るみたいだから」
絵里子が立ち上がって塩見の席に向かった。
「森くん、後は頼むぞ」
「はい」
森は秀樹に言われて塩見を尾行する準備をしていると美也子が来た。
「森さん、私今から塩見先生とアフターなの
盗聴器か発信機付けてあげようか」
美也子は森の耳元で囁いた。
「いや、盗聴器は美也子さんが持っていてくれればいい。
それよりスマートフォン番号を聞いておいてくれないか」
「ああ、それはもちろんよ」
美也子は塩見と宮部のスマートフォン番号を書いた紙を渡した。
森はそれと交換にICレコーダーを渡した。
「ありがとう。美也子さん」
「ううん、全て亮の為よ」
美也子はニコニコ笑って化粧室に入っていった。
「我が息子ながら凄い!」
秀樹は呆然と美也子の後ろ姿を見ていた。
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「亮、明日6時に改札口に配置に付くわ」
電話を終えた美咲がニコニコ笑って言った。
「人は足りるんですか?3ヶ所で」
「ええ、新宿鉄道警察隊の協力をもらう事になったわ」
「それなら安心ですね。制服警官だと目立ちますからね」
亮は席を外し監視カメラにハッキングして新宿駅構内を
見る事を考えて麻実に電話をかけた。
「麻実さん夜分済みません。寝ていました?」
「いいえ、まだ起きていましたよ」
「明日朝6時までに新宿駅構内の監視カメラにハッキングできませんか?
国城正章が新宿駅を使う可能性が高いんです」
「わかりました、やってみます」
「なんだったら、ロビンの力を借りてもいいですよ。
僕も6時までに事務所に行きます」
「了解です」
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「誰から?」
銀座の事務所で豊島区の国城の家を
モニタリングしていた雪が麻実に聞いた。
「亮からです、国城が新宿駅構内に出る
可能性が高いから監視カメラにハッキングして欲しいそうです」
「さすが亮ね、新宿駅に絞り込んだのね」
「ええ、でもいくら亮でも私たちが東京の
全駅のモニターに繋いであるとは思ってもいないでしょうね」
麻実はクスクスと笑った。
「じゃあ、みんなの仕事決まったわね」
雪が振り返るとマギーと玲奈と一恵がうなずいた。
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「美喜さん、警視庁に出す資料に被害者のデータ
から被害額を算出しましょう。おそらくカード
からお金を盗まれた事に気がついていない人は
被害届を出している人の何十倍、何百倍もいると思います」
「ええ、被害届を出しているのが十八人、出されている
被害額は123,800円とても小さな事件に思えるわ」
「でも、もし10倍だったら1,238,000、100倍だったら
12,380,000円スキャナーが
強ければ強いほど、犯人が動けば動くほど
被害額は大きくなります」
亮には被害者がたった18人には思えなかった、
もちろん百八十人にも。
「考えるだけで恐ろしくなる犯罪だな、たとえ犯人らしき人物が
駅にいる映像を見つけたとしても、
それだけでは立件が出来ない。
スリと違って現行犯逮捕もできない家宅捜査で
そのスキャナーなる物を見つけなくてはな」
「ええ、見つけたらひたすら追跡してアジトを発見します」
「わかった。大きな事件になったら刑事局を動かそう」
「お願いします」
美咲は職場の上司として、父親として尊敬する巌に頭を下げた。
亮は美咲と巌が話をしている間に報告書を書き終えていた。
「美咲さん、これでいいですか?犯人の目処、
行動、システムから考えられる
ICマネー窃盗犯罪です」
亮はパソコンに書き終えた報告書を見せた。
「はい」
美咲はモニターを見て確認を始めた。
「ええと、お父さん。日本の警察は監視衛星を持っていませんね」




