あきらとあきら
「そ、その通りです」
亜里沙が驚いて答えると亮は続いて分析の続きを話した。
「そうなると、元彼は新しい彼女が出来て幸せいっぱいですから
ストーカーになって誘拐やまして殺人をする事はないですね」
「凄い!」
亮の分析の速さに亜里沙は口を開いて聞いていた。
「早速明日捜索に入ります」
「亮さん簡単に言い過ぎ、何か言うことありませんか?」
「ええと・・・なんでしたっけ?」
亮には亜里沙の言っている意味が解らなかった。
「警察じゃないんだからそんなに簡単に決められないけど、
できるだけやってみますとか。
簡単に答えると嘘に聞こえるわよ」
「なるほど・・・嘘に聞こえるか。
わかりました、明日警察の知人に相談に行ってきます」
「はい、よろしくお願いします」
亜里沙が頭を下げると玄関のチャイムがなり
亜里沙は玄関に向かって走っていった。
~~~~~
「ほう、あの偉そうにしているのが総会屋の塩見信正か」
「はい、一緒にいるのは実行部隊の宮部誠です。
あの上に菊池澄夫がいるそうなんですが
しばらく姿を現していないそうです」
秀樹と森はホステスたちが来る前にヒソヒソ話をしていた。
「随分詳しく調べたな?」
「はい、今日亮を撃った三瓶五郎が話をしてくれました」
「なるほど、味方に引き入れた訳か。でも信用できるのか?」
「それは大丈夫です。今夜は直子さんが監視してくれています。
この件が片付いたら白尾尚子さんのお父さんの
家具工場で働くことになっています」
「なるほど、相変わらずやる事が早いな」
「はい、電話1本で動いてくれる見事な亮のネットワークです」
「何を話していたんですか?」
秀樹の隣に絵理子が座った。
「ママ、連絡ありがとう」
「ううん、亮を潰したと聞いて頭に来ちゃって」
「全く恐ろしい男だ、子分を使って亮をピストルで撃った」
「本当!やっぱり毒をもってやろうかしら」
絵里子は手を震わせ真剣な顔で言った。
「大丈夫だ、今度は我々が潰してやる。
あの男は亮がどんな男か知らないらしい」
「そうなんです。彼らは亮の事をよく知らないんです」
絵里子は警察に太いパイプを持っている塩見が亮の
人間関係を良く把握していない事に違和感を感じていた。
「やっぱりそうか、経済界を知っている者が
團拓馬の孫、我々DUNグループの息子、
新宿の飯田さんの息子同様の
亮に手を出すなど考えられん」
「そう、そしてアメリカ大統領の友人で
第三艦隊を動かした男よ」
「まあ、それは別として。ママ奴の
情報収集に協力を頼むよ。お礼はする」
「分かったわ、高くつくわよ」
「なんだ、何が欲しい?」
「團亮!」
~~~~~
亜里沙が玄関に行ってしばらくすると
応接間のドアが開きそこに桜井彰が立っていた。
「亮!」
10年ぶりに合う彰は亮よりはるか
大きくがっちりした体格だった。
「彰」
二人はガッチリと手を握り合った。
「久しぶりだな」
「ああ、そうだな。今、何している?」
亮は彰が法務省の仕事をしていると聞いて
気になっていた。
「そうだ亜里沙何か食べるもの無いか?
忙しくて夕食を取っていない」
彰は亜里沙方を向いて手を上げて拝んだ。
「カップラーメンで良い?」
「いや、インスタントは体に悪い」
「分かったわ、残りご飯のチャーハンでいい?」
「うん、サンキュー」
「僕が手伝おうか?」
亮が気を使って言うと亜里沙はそれを断った。
「ううん、10年ぶりなんだからゆっくり話をして」
「ああ、すまん」
彰が亜里沙に言うと亜里沙は微笑んで応接間から出ていった。
「亮、実は以前から亮に連絡を取っていたんだが
いい返事が得られなくて」
「連絡をとっていた?」
「警察庁の原警備局長に頼んだんだが」
「それは確か内閣情報調査室からだと聞いた」
「ああ、家族には内緒なんだが法務省
公安調査庁から出向で内閣情報調査室いるんだ」
「内閣政策、国家権力の為の情報収集だろう。
僕は好きではない」
亮は手を振って首を横に振った。
「違う日本の国益を守るための情報を収集する
組織だ。とにかく亮の力が借りたい」
「そう言われても僕にはなんの力も無い」
亮は政治家と絡むのが面倒くさくて遠回りに断った。
「嘘つくな、お前の情報は全てこちらで調べ上げている。
初体験の女性から今までの交友関係、好きな食べ物全てだ」
「凄いなあ。じゃあ僕の初体験の相手は?」
亮は彰を試した。
「秋山良子、現在JOLのCAだ。
次にアメリカに渡ってハーバード大学の図書館員ローラ、
とパトリシアそしてニューヨークで半同棲した北尾尚子だ」
彰は白尾尚子を北尾尚子と言った。
「好きな食べ物は?」
「牛のランプ肉」
亮は彰の答えが全く違っている事に首をかしげた。
「彰、では東京証券取引所の爆破事件は知っているか?」
「いや、あそこは爆破などされていない」
「横須賀沖のEMP爆弾の事件は?」
「いや」
「先月のJOLハイジャック事件を解決した
日本人捜査官の名前知っているか?」
「それは知っている田中一警察庁公安部の職員だ」
「5年前ハーバード大学の図書館籠城事件を
解決したのは誰だか知っているか?」
「FBIだろう」
亮が聞いた質問の答えは全く違っていた。
「じゃあ、僕に協力しろという話はなんだ?」
「うん、ある女性を調べて欲しい。
お前は凄いナンパ師であっいう間に
女を虜にしてしまうそうじゃないかそして、
キャバクラ「ラブポーション」を
経営しているそうじゃないか」
彰は亮を少し馬鹿にしたような言い方だった。
「まあ、それは得意かもしれない・・・
それで相手はどんな女性だ?」
「最近皇居の周りで当たり屋が横行している。
それで後ろから走ってくる
男性に女がわざと当たって転ぶらしい」
「それは新手の当たり屋だ。警察の仕事じゃないか?」
「いや、それが誰も被害届を出していないどころか、
みんなその女とやっちまうらしい」
「自由恋愛、自由交際だろう」
「それが、農水省の職員がその被害を受けて情報を流したらしい」
「その職員を問い詰めれば女の情報が聞き出せるだろう」
「それが、先週自殺した。その前は経済産業省、厚生労働省もだ」
「それも自殺?」
「ああ、立て続けに三人」
「つまり、僕がその女を見つけ出して何者か探りさせって言う事か?」
「そうだ、情報を 収集したと言う連絡をくれれば
我々はラブホでもどこでも突入する、
お前に取っては朝飯前だろう」
「10年ぶりに会ったのに随分だな、
分かった引き受けよう。日本1のナンパ師の團亮が
見つけ出してやるよ」
亮は真由美の目撃情報を取るのに
いいキッカケだと思って承諾した。
「経費でジョギングシューズ位は買ってやるぞ」
「了解、そろそろチャーハンが出来る頃だ。
亜里沙さんが戻ってくる」
「ああ、詳しくは連絡を取り合って」
「ところで、僕の事を誰に聞いた?」
「警察の幹部だ、名前は言えない」
彰が答えるとドアが開いて亜里沙がチャーハンを持ってきた。
「そろそろ帰ります」
「まだ10時半だゆっくりしていけよ」
彰は亮を止めた。
「いや、ホワイトハウスから定時連絡がある」
「あはは、ホワイトハウスか。それじゃしょうがない。またな」
「おお」
大人になった彰は亮を誤解したままで
二人の会話は全く噛み合っていなかった。
桜井邸の外に出た亮は10年ぶりに会った彰の高圧的な態度に
がっかりしていた。
すると目の前の車のドアが開き
美咲が降りて亮に声をかけた。
「亮、話がある」
「ちょうど良かった。僕も話が」




