射殺
「もし顧問料でしたら僕が判断できる問題ではありません。
ただ僕と野田さんは総会屋を締め出す事を考えています」
「なんだと!俺たちを総会屋だと言っているのか!」
宮部が立ち上がって机を蹴飛ばした。
「怒らないでください、僕は話し合いをしたいんです」
亮は塩見の恫喝の恐ることなく冷静に答えた。
「分かった、年1億円の顧問料もらうその代わり
野田が再び社長に復帰するのを手伝おう」
「お断りします」
亮の冷たい断り方に塩見は鬼のような顔で睨みつけた。
「小僧!誰に対して物を言っている!」
大企業の社長連中が縮み上がる大物総会塩見長正に対して
いとも簡単に言ってのける亮は
塩見に取って怖いもの知らず馬鹿にしか見えなかった。
「あなた達のような人が居るから日本の企業は
育たないんです。このままではアメリカどころか韓国、中国の企業にも
抜かれてしまいます」
「利いたふうな口をきくな。お前はもう終わりだ!
どんなことをしても野田は社長くを復帰はさせんぞ」
塩見の顔は紅潮し怒りで手を握り締めた。
そして立ち上がり亮と目を合わせることなく会議室を出ていった。
「このやろう!」
宮部は亮のネクタイをつかみ壁に押し付けた。
「命は無いと思え」
宮部の脅しに亮は両手を握り締め反撃の
準備をしていた。
「亮、喧嘩して大丈夫?」
一恵は心配そうに亮に聞いた。
「元々話し合いで方が付くとは思いませんでしたよ」
亮は天井のLEDライトの方を見てVサインを出した。
~~~~~
「殺れ!」
塩見は廊下を歩きながら宮部に冷たく命じた。
「はっ!」
宮部は後ろを付いてくる三瓶に体を寄せ
耳元で囁いた。
「これで部屋を出てくる團を殺れ!
あくまで自分の意思でやったことにしろ!」
「はい」
「家族が大事ならば警察で何も言うな
後は先生がなんとかしてくれる」
三瓶の手にはズッシリと重いリボルバーの
ピストルが握らされていた。
「はい」
三瓶はピストルをスーツに隠すと
振り返って亮の会議室の前に立った。
~~~~~
「森さん、どうですか?」
「ああ、バッチリと恫喝の様子を録音と録画した」
亮が会議室で森に電話をすると森が嬉しそうに答えた。
「では事務所に戻ります」
「了解、久々にみんなで飯でも食おう」
「そうですね、僕の快気祝に」
亮は遊々亭の焼肉を食べたかった。
「亮待って、外に誰か居るわ」
早苗が森のスマートフォンを取って声を上げた。
~~~~~
「パンパンパン」
三瓶はドアを開けた亮の体に3発の銃弾を
浴びせた。
亮は後ろに飛ばされ会議室のテーブルの下に倒れた。
「亮、亮」
一恵は亮の元に寄って両手で亮の顔を持ち上げ
必死で声を上げた。
三瓶は倒れてビクとも動かない亮を呆然と見つめ立っていた。
~~~~~
「どうやら殺ったようだな」
ロビーに向かっていた塩見の耳に
3発の銃声が聞こえた。
「はい、近距離で3発撃てば間違いなく
命はないでしょう」
宮部は三瓶が亮を撃ったのを確信した。
「あの男、口は割らないだろうな」
「はい、三瓶は秋田には家族がいて口を割ったら家族に
何があるか奴もよく知っているはずです。
特に高校生の妹を可愛がっていましたから」
「妹は良い女か?」
「はい、色白の秋田美人です」
「たまには、女子高生もいいな」
「はい、手配します」
何人もののホテル職員が会議室に向かって行く
姿を塩見と宮部はすの姿を見て笑っていた。
「先生、本当にあの男を殺って良かったんですか?
俺にはあのボード魅力的に見えましたけど」
「大丈夫だ、あんなに凄いもの一人で作れる訳がない
あの男の仲間から買えばいい」
「なるほど」
「あの男の搬送先を調べて張っていれば、家族も仲間も判る」
「わかりました」
宮部は返事をすると後ろを振り返って
大阪弁の部下に亮の搬送先を調べるように命令をした。
その動きを見ていた塩見は宮部の肩を叩いた。
「宮部、行方不明の菊池はもう当てにならん。後は任せる」
「はっ、ありがとうございます」
宮部は塩見に向かって深々と頭を下げた。
~~~~~
救急車で運ばれている亮のスマートフォンがピカピカと光っていた。
「亮、どうしたのかしら?やっと呼び出しが出来たと思ったら
電話に出ない」
美咲が電話を耳に当てながらつぶやいた。
「はい、新村です」
「ああ、一恵さん、亮は?」
「さっき、銀座のホテルでピストルで
撃たれ新橋病院に搬送中です」
「えっ!」
美咲は亮が撃たれてたと言うショックで
体を振るわせるとともに
また元気に戻ってくるイメージが湧いていた。
「それで様態は?」
「それが・・・」
一恵が答えようとすると電波の状態が
悪くなってスマートフォンが切れた。
新橋病院に運び込まれた亮は直ぐに病室に運び込まれた。
~~~~~
「もう顔を上げていいぞ」
手錠をかけられた頭に上着を掛けてうつむいていた
三瓶は地下駐車場に着くと声をかけられ顔を上げた。
「はい」
「俺は團亮の仲間の森だ。よろしく」
となりに座っていた森は手を出して握手をした。
「團さん大丈夫なんですか?」
三瓶は亮を撃った罪悪感で手の震えが止まらなかった。
「ああ、大丈夫だ。心配ない」
「俺はどうすればいいですか?」
「二、三日ここのマンションの部屋に住んでもらう
レインボーブリッジが見えていい所だぞ、
その代わり外部との連絡は一切なしだ」
「わかりました、俺の家族は?」
「あいつらの代わりに團亮を撃ったんだ、
家族に手を出すわけ無いだろう。
逆に見舞金をたんまりくれるんじゃないか?立派なリーダーなら」
「なるほど、團さんの言った通り塩見は悪党だ」
亮は塩見が必ず亮を殺せと言ってくる事を三瓶に伝えてあって、
三瓶は完全に亮を信頼し妹を心から任せようと思った。
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「亮、大丈夫か?」
秀樹はベッドでぐったりとしていた亮を揺すった。
「ああ、ちょっと寝ていたみたいです」
亮は大きなあくびをして体を起こした。




