情報衛星
「捜査に感ずいているなら陽の高いうちには
部屋に寄り付きませんし、
昼の監視ならこっちでもできます。
雪さんに僕の会社に来てもらってください」
「ありがとう、お陰で被害調査に人員を回せるわ」
美咲は亮が亮の姉達を救出する為に使った
監視衛星を監視に使う事に気が付いていたが、
それを口には出す事をせず礼を言っただけだった。
頭の整理がついた美咲は落ち着きを取り戻して
樫村を呼んだ。
「警視。今、全航空会社の搭乗記録をチェックしたところ、
国城は飛行機に乗っていません」
「やっぱりね。樫村さん、国城の予備校時代の
アルバイト先、交友関係を調べてください、
友人のところに潜伏している可能性があるわ」
「了解しました」
「それから下田さん達には張込から戻ってもらって
被害の方を調べてもらってください」
「了解です。張込解除してしまって良いんですか?」
「捜査に感づいていたら陽の高いうちには部屋に寄り付かないわ」
亮の行った事をその言った美咲は強く樫村に指示をした。
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「こんにちは、桜井です」
亮の元に亜里沙から電話がかかってきた。
「こんにちは、どうしました?」
亮はシッピングモールの件がまだ
進んでいなかったので亜里沙から連絡がある
予定はなかったので驚いていた。
「今朝、ジョギングに来られなかったので、
どうしたのかと思って・・・」
「ああ、昨日は秋田に出張で今朝直接帰ってきたんです」
「そうですか・・・團さん警察に知り合いが
いらっしゃると聞いたのでちょっと相談があったんですけど」
亮は亜里沙の相談と言う言葉を聞いて黙っていられなかった。
「何か有ったんですか?と言っても今日は
時間がどうなるか、急ぎでしたら
紹介しますけど」
「それが、友人と連絡が1週間取れないんです」
「会社や自宅は?」
「会社は無断欠勤で自宅にも帰った様子が無いんです」
「事件性が有るかもしれませんね、
ご家族に家出人捜索願いを
出してもらってください」
「ええ、3日前に富山のご両親と出しに
行きました。だけど警察は・・・」
「はい、積極的には探してくれません」
「そうなんです。『男と一緒じゃないか』と言われました」
「それは・・・ところで付き合っていた男性は?」
「1ヶ月前に別れたはずです」
亜里沙は女友人の詳しい情報を知っていた。
「その男性どんな方ですか?」
「商社マンと聞いていましたが会った事がありません」
「そうですか。今夜遅くても良かったら話を聞かせてください」
「分かりました、時間が空いたら連絡下さい。
家で連絡待っています」
亜里沙の声が幾分明るくなっていた。
~~~~~
亮が事務所に戻ると森の部下で森の前妻の妹、
伊藤早苗が入って来た。
「お久しぶりです。亮さん」
「早苗さん、忙しいところすみませんでした」
「いいえ」
早苗は森に言われて亮の所に来た。
「実はここにある機材の
操作方法を覚えてください」
「これはなんですか?」
早苗にとってはただの大きなコンピューターの
モニターにしか見えなかった。
このキーボードは下にある高速大型サーバーにそして
日本の上空にある衛星に繋がり
地上を見ることが出来ます。
「本当ですか?」
「はい」
「そ、それでスパイ衛星じゃないですか!」
「情報衛星です」
亮は驚いている早苗に答えた。
「すみません、これの使用料はいくらなんですか?」
「あっ、使用料聞いていなかった。
少なくとも今のところ請求は来ていませんね」
この情報衛星は劉文明が持っているもので
プラウ設立記念に文明が使用キーを渡してくれたものだった。
「ど、どう使うんですか教えてください」
早苗は調査に利用できそうなシステムに一刻も早く
使いこなしたかった。
「こんにちは、亮具合はどう?」
「大丈夫です」
部屋に入って来た菅野雪は久しぶりに
会った亮にハグをした。
「麻実さん、早苗さんと雪さんにシステムの
操作方法を教えてあげてください。
それで豊島区長崎の国城の自宅の監視を」
「了解しました」
玲奈は椅子に座りスイッチを入れて監視衛星にアクセスすると
アクセスコードの表示か出た。
「荒い映像が映っていいますけど」
「これはGoogleEarthサイズの地上54mの
映像です。それでこれが10cmの解像度の映像です」
亮がアクセスコードを入れると画面が鮮明になった。
「あっ、車のナンバーが読めるし人の顔が分かる」
「しかも動画よ」
驚く早苗に雪が答えた。
「動画は大型の高速コンピューターの
演算能力が高くないといけないんです」
「本当に衛星からの映像なの?」
早苗はGoogleEarthのストリートビューの
ように大きくて鮮明な動画が
見える事に言葉も出なかった。
「日本はこうして230kmの高さから監視されているんですよ」
「恐ろしいわね」
亮と早苗が話しをしていると雪は豊島区長崎1丁目の
国城の自宅の前にカメラを固定した。
「亮、これで国城の出入りが分かるわ」
「映像を録画しておいてください」
「分かりました」
「了解」
雪は国城の監視に入った。
「探偵社もこれを使えば張込みが楽になるわ」
早苗は興奮して言うと亮は冷静に答えた。
「そうですね、ただ衛星が400億円、
打ち上げ費が100億円くらいですから
使用料はかなり高いと思いますよ」
「うふふ、ホテルの前でカメラを持って張込んだ方が安いわけね」
早苗は渋い顔で笑っていた。
「ところで早苗さん、ホテルのセンティングの方は」
「はい、森がセッティングを終えれば直線距離で300mのここに
テスト音声と映像を送ってくるはずです」
間もなく一恵の姿がモニターに映った。
「亮、見える?」
一恵がスカートを捲り上げ太股を露にした。
「見えますよ、見せすぎ」
「うふふ」
亮の言葉は一恵に聞こえず胸の谷間をカメラに向けていた。
「止めろって!」
亮は慌ててモニターを手で隠した。
「一恵ちゃんも中々やるわね」
モニターを見ていた雪が笑って
亮を色っぽい目で見つめた。
亮たちのやり取りに早苗は不思議な顔をしていた。
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亮はホテルに行く前に美宝堂に寄って秀樹に会った。
「お父さん、昨日はお疲れ様でした」
「ああ、中々面白かったよ。アントンの奴
車をスピンさせて三人を弾き飛ばしたぞ」
秀樹は嬉しそうに笑った。
「お父さんは警察に見られていませんね」
「ああ、後で面倒くさいに事になるので、
アントンに促されて後は運転手に頼んで
逃げたよ。申し訳なかった」
「大丈夫です。美咲さんも承知しています」
「お前は警察機構にも深く入り込む気か?」
「原警備局長に警察OBの為の警備会社を
作ってくれと言われました」
「やる気か?」
「はい、ロビンが作ったITセキュリティシステムの
日本代理店と通常の警備で
十分採算が取れるとも思います」




