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塩田

「えっ、大丈夫だったんですか?」

「はい、炭素繊維ボードを見せると興味を示して、

今日、連中の上の者と会う事になっています」

「は、はい」

野田は亮が炭素繊維ボードを目玉にF電機に復帰する

計画だったはずなのに、裏切られた気分だった。


「野田さんが社長に復帰する為には株主を

動かす必要があります。

その為に総会屋を味方につけるんです」

「あの連中を動かせるんでしょうか?

年間何千万円も顧問料として取っている

連中がそうやすやすと経営陣を

裏切るとは思えません」


「ええ、でもいずれ今のF電機のままでは

顧問料も払え無くなります。儲かっている

大企業があっての総会屋ですから」

「確かに、でも私が社長に返り咲いても

総会屋は付きまといます」

「いいえ、F電機は断固総会屋を切ります」

亮は暴力や権力の力で不条理に

動く世界がとても嫌いだった。


ヤクザには諸説あるが。江戸時代町民は

街の荒くれ者の処理を

街の顔役火消しに相談に行った事から始まる。

江戸の花形火消しは有り余る腕力と権力で

荒くれ者を抑え込みその礼金を貰っていた。


それがやがてよろず相談屋になり

様々な仕事をしそれが近代になって

賭博、麻薬、売春と違法な方向へ進んでいった。


総会屋は株式会社の株を若干保有し株主の権利行使をして

株主総会の議事を異常に遅らせたり、他の株主に圧力をかけ

て妨害する事でスムーズに株主総会を

進めたい会社に不当に金品を請求する組織である。


近年では警察の監視を避けるため、企業とコンサルタント契約を

結ぶ方法を取っている事もあり時には会社の不正行為、

不正経理等を暴きそれをネタに金品を請求する事がある。

F電機は正にそのターゲットそのものだった。


「分かりました、團さんあなたを信じます」

野田の妻美智子は野田を差し置いて亮に答えた。

「ありがとうございます。それで昨夜野田さんの

自宅に総会屋塩見の手下が入り込みました」

「えっ!」

野田の顔色が変わると亮は手を

野田の前に手を出して

続きを話した。


「大丈夫です。昨日連絡した通り留守番していた者が

ガラスを割って入った手下を住居進入で捕らえました」

「あ、ありがとうございます」

野田はたった28歳の青年が

ここまで段取り良く事を進める事で

驚き鳥肌を立てていた。


「それでこれから私がどうすればいいですか?」

野田は年下の亮に自分が何をすべきか聞いた。

「はい、株主総会が6月24日です。

その時にすべてを明かさなければなりません、

 野田さんと親しかった取締役は

今でもいらっしゃいますか?」


「もちろん社長解任の時に取締役全員は

解任できなかった、六人は

 私の味方でした」

「ではその取締役と話しをして味方につけましょう」

「しかし、彼らは怖がって私との接触を拒むのでは?」

「そうです。怖がらないように総会屋を抑えるんです」

「そうか!なるほど!」

森はもやもやしていた物がはっきりして

手を打って声を上げた。


「分かりました、早速家に戻って・・・あっ、

戻って大丈夫なんですか?」

「もちろん、もう割られたガラスも

入れ替えてあります。頑丈なやつに

 夜にはボディガードに女性を

一人泊めてさせていただきます」

「マギーちゃんかしら?」

「いいえ」

亮は美智子の質問に首を横に振って答えた。


「まあ、こんな綺麗なお嬢さんが来て

くれるなんて大歓迎だわ、ねえあなた」

美智子が一恵と玲奈の顔を笑って見て承諾した。

「いいえ、違います。別な女性です」

「あたりまえだ、ボディガードの女性と言えば、ほらALSOKの」

「ああ、レスリングのがっちりした女性ですね」

亮が言うと野田と美智子は勝手に決め付けていた。


「はあ、まあいいか・・・」


~~~~~

宮部達が赤坂日枝神社近くの事務所に着き

奥の部屋に入ると塩見が電話を掛けていた。

「いいか、分かったな。直ぐに保釈しろ!相手が訳の分からん

 ロシア人と中国人だ、どうにでもなるはずだ」

電話を切った塩見に四人は宮部達は頭を下げた。


「ただいま帰りました」

「むむ・・・」

50半ばのがっちりした体の塩見は

メガネの奥の鋭い目で宮部をにらみつけた。

「それで、みんなどうなりましたか?」

機嫌の悪い塩見に気遣いながら宮部は状況を聞いた。


「ああ、外にいた三人は保釈する事になった。

中に入った三人は住居侵入であと

少し警察に世話になりそうだ。

ただ、野田の家の中にいた中国人女は

野田の依頼を受けて

留守番していたと言っていたが

 何処で野田と接触していたか分からんのだ」


「はい、我々はずっと野田夫妻に付いていましたが

その様子はありませんでしたから

探偵の森の関係ではないでしょうか?」

「探偵の森か・・・元警視庁組織犯罪対策部

いわゆるマル暴の刑事だ」

塩見は宮部の連絡を受けて森を調べていた。


「それは厄介ですね、我々の手口を知っています」

「まあ、民間人に成り下がった男には

何の力も無いがなあまりうるさい様だったら消せ」

「はい」


「それで儲け話というのはなんだ?」

塩見はメガネをはずしてパソコンの検索サイトを開いた。

「実は團亮という男が持って来たのはガラスより薄く

 ポリカーボネイトより硬くアクリルより

軽い透明の板を持って来たんです」

塩見は宮部が言った事をパソコンに打ち込んで検索していた。


「電気伝導率は?」

「60かける10の六乗ジーメンスメートル

(60×106S/m)です」

三瓶は塩見の質問に答えた。

「ん?」

普段、口を開く事の無い三瓶が積極的に言った事に

塩見は驚き顔を上げた。


「ほう、60と言うと銅より高い銀並みの伝導率だ」

パソコンに映し出されるデータを見て直感で売れると感じた。

「宮部、その男といつ会える?」

「今日会う事になっていますがまだ時間を決めていません」

「そうだな、6時にここに呼んでくれ」

「分かりました」

宮部は直ぐに亮に電話を掛け亮の答えを塩見に伝えた。


「先生、時間は了解しましたが、場所は嫌だと言っています」

「なるほど、我々を警戒している訳か。分かった場所は任せると伝えろ

 おそらくホテルの会議室とでも言うだろう」


~~~~~

「一恵さん、ホテルの会議室を予約してください」

電話を切った亮が一恵に指示をした。

「ルーセントホテル銀座でいいですね、

あそこなら盗聴器もカメラも付けられます」

「お願いします。でも何処にあるんですか?」

「社長が休んでいる間に岩田観光のJOLホテル買収が成功して

文明さんのルーセントホテルと

業務提携した元のJOLホテル銀座です。

そういう訳で社長はルーセントホテルジャパンの

取締役になっているんです」


「やった」

一恵が言うと亮はディズニーリゾートの側に

自分の関連ホテルが有ると思うと

嬉しくてニコニコと笑った。

「何がやったの?」

野田夫妻の前で急に喜んだ亮を見て一恵が小声で聞いた。

「だってあの辺りのホテルの予約取れないから嬉しい」

「誰と行くの?」

「考えていない」


「あのう、私はどうすればいいでしょうか?」

野田がコソコソ話しをしている亮たちに向かって首を伸ばして亮に聞いた。

「野田さんがあまり行方不明だとまた敵が変な動きをするかもしれないので

 自宅にお帰り下さい。昼間は大丈夫だと思います」

「分かった俺が送って行く、一恵さん盗聴器のセットは俺たちがやるから

 任せてくれ」

森はそういい残し野田夫妻を送っていった。


~~~~~

「美咲、そう言えばICチャージ泥棒はどうした?」

巌は続いて美咲に聞いた。

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