亮の不思議
「まあ、そういう事になる・・・」
亮はマギーの答えに違和感を覚えたが
素直に返事をした。
「私、日本の事もっと勉強するわね。日本人なんだから」
「まあ、ボチボチやってください」
「はい」
マギーは上機嫌だった。
亮とマギーは8時20分に羽田空港に到着し
9時過ぎに会社に着くと直ぐにマッスルカーブの
竹林聖子から興奮した電話がかかってきた。
「亮、大変!入会申込者の行列が出来ているんです」
「どうしたんですか急に?」
「YouTubeに映像が流れているらしいの、
私は急がしくて確認していないんだけど」
「分かりました、確認します」
亮は電話を切るとパソコンを立ち上げ
YouTubeでマッスルカーブを検索確認した。
「キャー」
動画を見たマギーが手で口を押さえた。
そこに映っている映像はシンディ、ケイト、
モニカ、ジャネット他の多くのモデル達が
レオタード姿でトレーニングをして
バックでブルックが映っている映像だった。
「これ、マッスルカーブのCMじゃない。
それにアクセスが10万を越しているわ」
「誰がいつ作ったんだろう・・・」
亮は首を傾げた。
「あら、シンディに聞けばいいじゃない」
マギーが答えているうちに亮は
シンディのところに電話を掛けていた。
「シンディ、YouTubeを見ました。
どうしたんですか?」
「ああ、亮。そろそろ電話がかかってくると
思ったわ。体の調子は?」
「ええ、とても元気です。昨日チェック済みです」
「昨日?」
「いや。いつ作ったんですかあの映像?」
「昨日、ブルーノのジムでロビンが作ったわ。
さっき見たけど凄いアクセス数ね」
「それは誰が依頼したんですか?」
「キャシーとブルーノがレストランで食事をしていて
日本のマッスルカーブの惨状を知ったの。
お役に立てたかしら?」
「はい、お陰さまで申込者が並んでいます」
「よかった、第2弾はもっと凄いのを作る予定よ」
「あのう・・・」
亮はスーパーモデルのギャラと制作費を気にしていた。
「大丈夫、みんなノーギャラだしブルックの歌
は著作権料を取らないわ」
「ありがとう、シンディ」
「ううん、あなたにお世話になった
事から比べる大した事じゃないわ。
みんなそう思っている」
「みんなによろしく言ってください」
「OK、またね」
電話を切った亮は心からみんなに感謝した。
そこへ中村和美と三島玲奈と新村一恵が出勤してきた。
「おはようございます。秋田から直接ですか?」
和美が聞いた。
「はい、お土産買って来ました。なんだと思います?」
「比内地鶏燻製?」
一恵が答えてると亮が口を開いたままだった。
「どうして分かったんですか?」
「だって、亮さんは鶏肉の皮大好きじゃない」
「そうか、いぶりがっこにすればよかったかな、
玲奈さん一恵さん一緒に来て下さい」
亮は一恵に当てられたのはショックだった。
「私は?」
「マギーは直ぐに美宝堂へ行って買い物をして来て下さい」
マギーが自分を指差すと亮が答えた。
「だって後で三瓶と会うんじゃ?」
「黒幕とはビジネスの話しなので秘書の方が良いんだ」
「そうだね、了解」
亮はマギーに買い物のメモを渡した。
亮はみんなにお土産を渡すと会議室のテーブルに座った
「一恵さん、今日総会屋と会いますので同行してください」
「総会屋って山口ですか?」
一恵も玲奈も山口そして一文字を思い出して心拍数を上げた。
「いいえ、違います。山口が消えた後
最大の総会屋になったそうです」
亮は一恵の恐怖で血の気の引いた顔を見て
安心させようとした。
「大丈夫です。殺されはしないでしょうから」
「はい」
「玲奈さんは
ナターシャ、クラウディア、イリーナ打ち合わせに
入ってください」
「かしこまりました」
~~~~~
亮は直ぐに昨日の野田の自宅に入り込んだ
六人の犯人の事を美咲を通して調べた。
「蓮華、今どうしている?」
亮が蓮華の居場所を確認した。
「私は野田さんの壊された家で割られた
ガラス交換してもらっているところ、
桃華がマッスルカーブへ行ったわ」
「わかった。修理が終わったら速やかに
そこを出てくれ。家主が帰ってくる」
「了解」
そこに森から亮の元に電話がかかってきた。
「亮。今新幹線で東京駅に着いた」
「お疲れ様です。野田さんにお話があるので
事務所に寄ってもらえますか?」
「了解。直ぐに向かう」
~~~~~
羽田空港に着いた宮部達は事務所のある
赤坂に向かって車を急がせていた。
「いったい何があったんだ。よりによって
六人全員が警察に捕まるなんて!」
「それで菊池さんはどうしたんですか?」
三瓶は塩見の腹心、実行部隊のトップ菊池澄夫が
どうなったか心配だった。
「ああ、さっきから電話をしているんだか
連絡が取れない、警察に行っているかも知れないな。
とにかく事務所に行って
みないと
わからん」
宮部はスマートフォンを手にとって何度もボタンを押していた。
「お、俺達はどうなるんですか?」
「先生は警察に顔が利く。今頃裏で手を
回しているはずだ、大丈夫だ安心しろ」
警察に捕まるような事をしていない三瓶は心穏やかでは無く
昨夜マギーにナイフを突きつけた南場が三瓶をなだめた。
~~~~~
美咲は警察庁警備局局長室に呼ばれた。
「おお、美咲そこに座れ」
「どうしたのお父さん?」
「警視庁が昨日千束で捕まえた六人を
釈放するように動いていると警視庁に
出向している私の部下から報告が来た」
「そんな・・・奴ら住居侵入じゃない」
「うん、家に入った三人はともかく路上で
捕まえた三人は釈放しなくてはならないだろう」
「でもピストルを持っていたんでしょう」
「それを必死でうやむやにするさ」
「止められないの?」
「私が今動いているのは警察の汚職だ、
釈放で動いた人間を突き止めて処分しようと思っている」
「じゃあ、泳がせるつもりね」
「ああそうだ」
「ちょうど良かった、今日亮は大日本経済研究所の
人間と会う事になっている」
「誰と会う?塩見か?」
巌は改めて亮の凄さを知った。
「まだ分からないけど亮に情報収集を頼んでおくわ」
「うん、ちなみに住居に入った三人は
何か訳の分からん事を言って
事情聴取が出来ないらしい」
「そう、拷問でもしたのかしら?うふふ」
「美咲、もう一度聞かせてくれ。團亮はいったい何者だ?」
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「素敵な事務所ですね。銀座のビルしかも屋上に園がある」
亮の事務所に案内された野田は何かを吹っ切れた
顔をしてにこやかだった。
「東京都の条例で新築のビルは緑化しなくては
ならなくなりました。新築ではありませんがとりあえず・・・
野田さん、早速ですが昨日我々を付けていた
連中と話しをしました」




