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スカウト

亮は三瓶のスマートフォンで見た

美菜子の踊りを見て鍛えられた足腰

何らかのスポーツをしているのが分かった。

「はい、長距離とハイジャンプをやっています」

「そうなんだ、美菜子はインターハイ(高校総体)の

5000mで準優勝だったんだ」

三瓶は妹の美菜子を自慢した。


「いいですね、長距離をやっていれば

持久力があるしジャンプ力があれば

 踊りを大きく見せられる」

「東京から来る人はタレントにしてやると言って、

だまして女の子を連れて行いきます。

でも誰も雑誌でもテレビでも観た事がない」

美菜子は亮に対して警戒心を持っていた。


「わかります。綺麗でスタイルがよければ

グラビアかキャンギャル

で稼がせて、あげくの果てなまりがあるから

デビューできないとか言ってぼろ

布のように捨てられてしまいます」


「そうです。私の先輩なんかみんなそう言う

目にあって、泣きながら帰ってきています」

「ただ、芸能界は積極性が必要です。

オーディションは自己アピールが出来ないと

落ちてしまいます。それにスカウトされた

子は元々芸能活動をやる気がない


うえにその立場にうぬぼれて努力を怠ります。

どう思いますか?」

「確かにお金を掛けてレッスンを受ける奴は

元を取ろうとしてがんばるな」

三瓶は亮のいう事に納得してうなずいた。

「美菜子、ダンサーになりたいんだろう」

三瓶はうつむきかげんの美菜子の顔を覗き込むと

美菜子はうなずいた。


「う、うん」

「大丈夫だ、レッスンは團さんに

お願いするとして交通費は

俺が出してやる。それで高校を出たら

東京で本格的に勉強するんだ。

お前なら絶対できる」


「でも・・・」

「任せておけ、兄ちゃんがんばる」

「いやなんだ、久しぶりにこっちへ帰ってきたと思ったら

そんな黒いスーツ着て人を脅すような

仕事しているのがとても嫌なんだ」

美菜子は顔を横に振った。


「馬鹿やろう、これでも株や経済を

研究している会社なんだぞ」

三瓶は大日本経済研究所の

仕事をよく把握していなかった。

「三瓶さん、材木の加工会社って

言っていましたよね」


「はい、秋田杉を使った建築資材を作っていました」

「お兄ちゃん、いい家具を作っていたんですよ」

美菜子は顔を上げて亮の腕を掴んだ。


「それは凄い」

「たいした事ないっスよ、グラインダー

掛けばかりでしたから」

亮が褒めると三瓶は照れ答えた

「また、木材加工の仕事をしたいですか?」

「当然です。俺はあの木の臭いと温もりが好きなんです。

 自然のエネルギーが流れてくるようで」

三瓶は自分の手を見つめ必死で木材の良さを

表現していた。


「もしもし、尚子さんですか?」

亮は父親が家具工場経営している白尾尚子に電話を掛けた。

「ああ、亮。お体の調子はどうなの?」

「すっかり良くなりました。ありがとう。

早速ですがお父さんの工場の調子はどうですか?」

「順調です、仕事がたくさん来て人手が足らないんです」

「そうですか、人を雇ってもらえるかどうか

 お父さんに聞いてもらえますか?」


「大丈夫です。今週も求人誌に掲載していますから」

「ではお願いします、履歴書を送ります」

「了解、色々話したい事があるので近々会いましょう」

「OK、いい話しだといいわ」

「もちろんです。ちょっと持ってくださいね」

亮は美菜子に声を掛けた。


「美菜子さん、白尾尚子って知っていますか?」

「はい。大ファンです」

「そうじゃあ、話しをしてみる?」

亮がスマートフォンを差し伸べると疑いながら

美菜子はそれを受け取った。


「もしもし、初めまして白尾尚子です」

電話の向こうの本物の白尾尚子の声に

美菜子は自分の名前を言うのが精一杯だった。

「さ、三瓶美菜子です・・・」

「亮の紹介だと歌手かダンサー志望かしら」

「はい、ダンサーです」

「そう、早く上手になって私と一緒に踊りましょうね」


「はい、ありがとうございます」

美菜子は嬉しくてスマートフォンに頭を下げた。


亮が美菜子から再び電話を受け取ると

亮は真剣な顔をして尚子に言った。

「尚子さん、聞いていると思いますが。

英語バージョンの為に歌詞の見直しと

レコーディングをやります。ダンスの

振り付けも変えましょう。

アメリカデビューを踏まえて」


「全米デビュー?」

「はい、尚子さんは世界をターゲットに」

「うふふ、興奮するわ。がんばる」

「ハワイでお土産買ってきたから後で渡します」

「どうせ、マカダミアンナッツチョコレートでしょう」

「うっ、違います。もっといいものです」

亮はいきなりチョコレートである事を言われて

嘘をついた。


「そう、じゃあ楽しみに待っているわ」

電話を切った亮はため息をつき

独り言を言った。

「どうしてチョコレートじゃダメなんだ?

 他にはパイナップルくらいしかないぞ」


「本当だったんですね、RRレコードのプロデューサー」

「ああ、疑っていたんだね」

「本当に白尾尚子さんが電話に出るなんて、ああ感激!」

美菜子は手を合わせそれを握った。


「三瓶さん、兵庫県の家具工場の仕事がありますけど

そこで働きませんか?仕事は嫌と言うほど有りますので

倒産は無いと思います。それに白尾尚子さんの実家だし」

「きゃっ!お兄ちゃん良かったね」

亮に言われて嬉しさのあまり美菜子は三瓶に抱きついた。

「本当ですか?ぜひお願いします。

一生懸命働きます。でも・・・」

三瓶の笑顔が急に曇った。


「三瓶は今の職場を辞められないと

心配しているんですよね」

「はい」

「それは僕に任せてください」

「はい」

自信を持って答えた亮に三瓶は

初対面の自分にどうしてこんなに

親切にしてくれるか

不思議だった。


「團さん、どうしてこんなに俺たちに

優しくしてくれるんですか?」

「何故でしょう、妹さんがスターになれると思っているからかな」

そう答えて亮の脳裏にマリエの顔が浮かんだ。

「ま、まさか・・・團さん妹に、美菜子に手を出さないで下さい」

三瓶は亮の手にしがみついた。


「それは保障するわ、亮の立場上なんでも出きるのに

尚子さんどころか私にも何もしない」

マギーが三瓶と美菜子が亮に対して不信感を持たないように

言い訳をした。

「なるほど・・・」

「ところで二人はどういう関係なんですか?」

三瓶が納得すると美菜子が気になっていた亮とマギーの

関係を聞いた。


「僕達は兄妹です、僕の父親がアメリカ女性と

浮気して作った子がマギーです。

 父親は凄い女好きであちこちの女に手を出したあげく

 マギーが生まれたんです」

亮は説明が面倒くさいので父親が

浮気して作った子供にしてしまった。


「異母兄妹ですか、まるで恋人同士のように見えるけど」

美菜子はマギーが亮に寄り添っている姿は

マギーの亮に対する思いが表れていた。

「仲が良いとかそれ以上かも」

亮に心を許した美菜子が聞くと

マギーは何度も命を懸けて戦った亮を

心から愛していた。


「わあ」

マギーのキラキラした目を見た

美菜子はいっぺんにマギーを好きになった。

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