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解任の理由

「團さん、すべて話しましょう」

「はい」

野田は後ろを振り返り周りを見渡し

亮は背筋を伸ばして正座した。

「私が社長に就任して会社の秘密を知ってしまったんです」

「はい」

探偵の職業柄、森は体を乗り出して聞いた。


野田は美智子の手を握りはなし始めた。

「私がF電機の社長に就任する前に信頼度の

高い純国産メモリー製造維持の

為に500億円の国の支援を受けました」

「はい、それはニュースで聞いています」

「うんうん」

亮と森はうなずいた。


「実はその金はある人の命令で全額IIJと言う

投資顧問会社に全額預けさせられたんです」

「IIJと言うと今問題になっている企業年金運用会社ですね、

 資金がほとんど消えてしまったとか」

「ええ、私はその事を知ってIIJの浅野社長を問い詰めて

 それを公表しようと記者会見準備を

したところ解任されてしまったのです」


「なるほど、それでその後、誰かに脅されたわけですね」

「はい、資金を預けるように命令した人物の名を

発表しようと思っていましたから」

「そりゃあ、かなりいじめられたでしょう」

森は刑事時代、殺さず圧力をかけてとことん

相手を潰す総会屋やヤクザの

脅迫の手口を知っていた。


「はい、昼夜無く24時間電話は鳴り続け玄関に張り紙がされて、

息子が行方不明なのもやつらの仕業かとまで思いました」

「そうなんですか?」

亮は美智子が言った事に聞き返した。

「いいえ、息子と連絡が連れなくなったのはそれ以前の話です」

野田が首を振って答えた。


そこにジェニファーから亮の元に電話がかかってきた。

亮は電話を持ったまま店の外に出た。

「亮、野田信一郎は確かにキンバリー財団に

勤めている。納税記録があるわ」

「では、生きている?」

「納税しているなら生きている事になるわね、

それとも生きてると偽証するために

財団が代わりに納税をしている事も考えられる」


「なるほど、この間財団と接触したばかりなので

間を空けないで進 ロバートの件もあるし」

「よかった。でもこちらで問題が起こったわ」

「何ですか?」

「カニエラが死んだわ」

「死んだ?」


亮は警察に捕まっているはずのカニエラが

どうして死んだか不思議だった。

「拘置所で首を吊ったらしいけど・・・

今死体検案中、せっかく捕まえたのに

これでジャック・モーガンに繋がる証人が消えたわ」

「残念ですね・・・」


亮は気落ちしていたジェニファーを何と

言って慰めていいかわからなかった。

「また、連絡するわ。早くアメリカに戻ってきて」

「ん?」

ジェニファーはまるで亮が日本に出張しているかのように

勘違いをしていた。

「引き続き、野田信一郎さんを調べてください」

「分かったわ」


亮は電話を切ると店の前に人相の悪い男がいるのに

気が付いた。


「お待たせしました、今FBIから連絡があって息子さんの

 野田信一郎さんは今でも納税しているそうです」

「本当ですか?」

「信一郎は生きているのね」

野田と美智子は亮が生きていると思った。


「あまり喜ばないで下さい。まだ、

居場所が分かりませんので確実ではありません!」

亮は真剣な目で二人の目を見つめ、亮の厳しい言い方に

二人は大人しくなった。


「FBIに引き続き情報を取るように伝えてあります」

「ありがとうございます」

美智子が目に涙を浮かべて亮の手を握ると

野田が重い口を開いた。

「後ろで指示をしていたのは当時の厚生大臣の

岡村達也、現在の民政党の幹事長です」

「わあ、大物だ。やばいぞ!」

森が言うと亮は岡村と聞いてニヤリと笑った。


亮はいつか岡村の裏金を暴こうとしていた矢先に

野田の話しを聞いて嬉しくしょうがなかった。

「野田さん、僕に任せてください。

岡村の悪事を暴きましょう」

「本当ですか?」

「はい、その前に野田さんにF電機の

代表取締役に復帰してもらいたいんです」

「はい?ど、どうやって?」

野田は突然の亮の話しに驚いて答えた。


「これです」

亮はバッグから透明の板を取り野田に見せた。

「これは何ですか?」

「タブレット用の透明版です」

「アクリル板ですか?」

「いいえ、新しい素材です」


新しい素材とは亮が考えた人工ダイヤモンドを作る為に

炭素繊維に圧力を掛けて作った透明の板だった。

炭素繊維は電気伝導率が高く、タブレットの消費電力が

今までの半分で摩擦係数が限りなく0に

近く高度8のものだった。

野田と美智子と森は目を丸くしてそれを触った。


「これは誰が?」

「僕が作りました。アクリル板より軽く

ポリカーボネイトより丈夫です」

「価格は?」

野田は体を乗り出した。

「アクリル板の倍くらいの価格です」

「特許は?」

「出しません。作り方は一切公開しません」


亮は製造技術を公開すると偽ダイヤを作る者が

現れるからだった。

「これは凄いぞ」

機械音痴の森でもそれのすばらしさを感じ取った。

「僕が考えているのは、テレビ、タブレット、車のフロントガラス、

農業用のガラスハウスです」


「これを誰が販売するんですか?」

「はい、もちろんF電機です。これで作ったF電機の

タブレットは世界一の商品になるはずです」

「凄い!これは売れるぞ」

野田は体の血が熱くなって興奮していた。


「そして今売却を予定している工場跡地の一部にこれ専用の

 製造工場を作ります。もちろんこの商品を

デモンストレーションのとして建物に使います」

「でも、私が復帰できるでしょうか?」

「緊急役員会で解任されたなら、緊急株式総会で復帰しましょう」


「株主総会となると株主の同意が要りますが」

「もちろん、この商品がついてくれば落ち込んでいる

株価が上がりますので

 株主は一も二も無く賛成するはずです」

「そんな事出来るんですか?」

「やってみます」

亮はF電機の大株主に直接この商品を

見せて説得するつもりだった。


「野田さん、株主名簿はお持ちですか?」

「はい、自宅に帰ればあります」

「あっ!」

亮はさっき秋田古町の前にいた人相の悪い連中を思い出した。

「森さん、野田さんの自宅問題ありませんでしたか?」

「おととい、中で死んでいるんじゃないかと

家の周りのくまなく歩いたが問題が無かった」


「それは二人が温泉にいて誰とも接触していなかったからです、

でも今我々と接触しました。奴らは動くはずです」

亮は時計を見て蓮華に電話をかけた。

「蓮華忙しいところすみません」

「いいえ、どうしました?」

「大田区千束2丁目図書館の前の

野田さんの自宅を調べてくれ

 誰かが侵入するかもしれない」

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