放火の計画
「はい、私達が同じ物と摩り替えたから気づいていないし、
これから中国拳法のレッスンを二人する事になっているの」
「それは良い、やる事は決まっていますね。
渋谷署には頼んでおきます」
亮は蓮華と桃華が上手く事を進めているのが
頼もしく思った。
「了解、がんばります」
~~~~~
亮が電話を切ると美咲に渋谷署の出動を頼んだ。
「すぐ刑事課の人間を行かせるけど、ガソリンを摩り替えたなら
証拠が無くて職務質問で終わってしまうわ」
「大丈夫です。取った物はちゃんと返しますよ」
亮は気にせず笑って美咲に答えた。
亮は他の人間が話しをしている間
パソコンの映像を見ていた。
「何やっているの?」
オペレーションが得意な雪子は気になって
亮が見ているパソコンを覗いた。
「そんな事って・・・」
亮が見ていたのは東京R大学とC大学、H大学、M大学の学籍簿で
そのスピードは尋常ではなかった。
「亮、どうやってそれを見ているの?」
「元々大学のネットワークがインターネットの始まりで
AC、つまり大学はセキュリティは低く
普通にパスワードを入れるだけで見られます」
天才ハッカーロビンの親友亮に取って
セキュリティの低い大学の学生名簿は簡単に見ることが出来き
相変わらず高スピードでそれを見ながら雪子に説明をした。
「ぱ、パスワードってそれってハッキングじゃ・・・」
「そうかなあ、パスワードを知っていればハッキングじゃないと思いますよ、
玄関の鍵を持っていれば不法侵入にならないのと同じです」
亮が簡単に答えると現場主義の機械に弱い下田は
ため息をついた。
「菅野さん、プリントアウトをしたいんですけど」
何かを見つけ様子の亮が雪子に聞くと
雪子は笑顔で亮のパソコンを操作した。
「一人見つけました国城正章、19歳、一浪して今年の春東京R大の理学部
情報処理課に入学しています。住まいは豊島区長崎一丁目」
雪子はプリントアウトされたデータを全員に配った。
「これって・・・」
美咲は樫村が渡した資料の写真と見比べ声を上げた。
「同一人物じゃないですか!」
「はい、そうですよ。間違いありません」
驚いている下田に亮は簡単に答えると
下田は地道に捜査をしている自分がばかばかしくなってきた。
「では直ぐに自宅へ向かいます」
「一応今日の授業は13時から4棟401教室で物理の授業を受けます」
根本が立ち上がると亮に諌められた。
「分かりました。樫村さんは白石さんを連れて
教室で職質問を掛けてください。
下田さん、根本さんは国城正章の自宅の周りを捜査。
仲間が必ずいるはずだから注意してください。
19歳と言えど未成年です十分な配慮をお願いします」
美咲が直ぐに指示をすると雪子が自分を指差した。
「あのう私は?」
「雪子さんはここで連絡係をしてください」
「はい」
そこに亮の元に森電話がかかってきた。
「亮、野田元社長が見つかったぞ。
お前の想像通り乳頭温泉に宿泊していた
俺は直ぐにこっちを発って説得してご夫婦を
秋田市内に連れだすつもりだ、
亮もこっちに来てくれ」
「今夜ですか?」
亮は夜に美咲の父親と食事をする予定が有り夜は・・・
「原警視、夕食をランチに変更できませんか?」
「そう残根ね・・・父に話してみるわ。母とは次回ね」
亮が済まなさそうに言うと美咲は優しく微笑んで巌に電話を掛けた。
「了解です。15時30分の飛行機で向かいます」
「時刻表見ているのか?」
「いいえ、JOLの時刻表はすべて覚えていますから」
「なるほど、お前ならできるな。じゃあ待っている」
森はそう言って電話を切った。
「亮、父はランチでも良いそうよ」
「良かった」
亮がそう言って時計を見ると11時を指していた。
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スタジオに入った蓮華は立花と千葉を含めた
10人に対してレッスンを始めた。
カンフーの型は次第に激しくなり
30分経った頃には生徒の体から汗が吹き出てきた。
「休憩しましょう」
蓮華の声でみんなが一斉に自分の持っていた
ドリンクを飲むと立花と千葉は水を飲みにスタジオから出た。
「蓮華、あの二人いくら喉が渇いてもさすが
ガソリンは飲むつもりはない見たいね」
「口から火を吹いちゃうわよ。インド大魔術団みたいに。ウフフ・・・」
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「千葉、これが終わったら着替えてロッカールームに火を点けろ
俺はジムの奥の備品室火を点ける」
「了解です。今日は昨日の若い男が来ていませんね」
「昨日の男は機転が効きそうなので、いないほうが好都合だ」
立花と千葉は亮の存在感を少なからず感じていた。
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警察庁での会議が終わって銀座に向かっている
亮に聖子から動画付きのメールが送られてきた。
「監視カメラに映っている二人の動画です」
その動画に映っている立花と千葉の唇の動きを
読んだ亮は聖子に電話を掛けた。
「竹林さん、二人はロッカールームと備品室に火をつけるみたいです、
注意してください」
「わかりました、みんなに指示をしておきます」
「お願いします」
亮は初めて自分のいないミッションで
蓮華と桃華とピョートルとアントンに期待をして呟いた。
「みんながんばってください」
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亮の電話を切ると聖子はスタジオに行って
蓮華と桃華に立花と千葉がロッカールームと備品室に火をつける
様子を伝えた。
「さて、プログラム変更。今度は桃華の出番」
聖子から話しを聞いた蓮華は桃華の肩を叩いた。
「せっかくお持ちになったのに、ご自分のドリンク
飲まないんですか?」
蓮華は立花に声を掛けた。
「いや、スポーツドリンクより水が飲みたかったんだ」
「そうですか、今度は簡単な護身術をやりますので
モデルになっていただけますか?」
「ああ、いいっすよ」
立花は躊躇する事無く蓮華の頼みを引き受けた。
立花と千葉は桃華の手を掴んだり、抱き付いたりして何度か投げ飛ばされた。
蓮華と桃華の拳法のスタイルはまったく違っていて
桃華は襲ってきた敵の力を利用して投げ飛ばしその瞬間、急所を押して
相手に強い痛みを与え非力な女性でも男にでも勝てる
技を持っていた。
「凄いですね」
立花は桃華の強さに舌を巻き
レッスンを受けた会員は
中国拳法の面白さにはまっていった。
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「千葉、なんか体が痛くないか」
「確かに膝の辺りと腰が重いような」
立花が腕の辺りを抑えていると千葉が腰に手をあて
膝を曲げた。
「そうだな、さっさと着替えてやっちまおう」
「はい」
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「お待たせしました」
聖子のいる事務室にスチールの1ℓビンをマギーが持って入って来た。
「間に合ったわね」
聖子は立花と千葉が持っている同じマグの中に
その中身を移し変えた。




