ICカード窃盗推理
亮は美咲の両親の目を盗んでこっそりと
部屋に忍び込む事を想像して
生唾を飲み込んだ。
「いいですね」
「じゃあ、父と母に連絡をしておくわ」
「しまった」
亮は昨晩、美咲のプレゼント用に買った
キーケースを亜里沙に渡した事を
思い出し、夜までに美宝堂に行って
美咲へのプレゼント買う事にした。
「ところで、ハワイどうだった?」
美咲は思わせぶりに亮に聞いた。
「ずっと病院でしたから、1日だけ岡村幹事長の娘さんと
海で遊んで夕方船の上で食事をしたくらいです」
その他の亮の体験したハワイは誘拐事件と
ジャック・モーガン達との
撃ち合いしかなかった。
「そうか、私は大学時代に行ったきりだわ。しかも家族で・・・」
「あはは、今度行きたいですね。
キャシーがハワイに家を買うって
言っていましたから交通費だけで済みますね」
「本当!約束ね」
美咲はハワイに特別な思いがあるらしく
子供のようにはしゃいでいた。
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「ねえ、後は任せるだって」
桃華が亮のメールの返信を読んだ。
「亮はやっと私達を信用してくれたのね」
蓮華は嬉しそうな顔をすると桃華がうなずいた。
「そうそう、私達手加減できるようになったものね」
「うん」
蓮華と桃華はハイタッチをした。
立花と千葉は駅から降りると真っ直ぐ
マッスルカーブに入った。
「ピョートルとアントンは?」
「もう入っているわ」
蓮華は桃華問いに答えた。
「さあ、行くよ」
「すべては亮のために、そしてママのために」
蓮華と桃華は亮の母親久美が大好きになっていた。
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「おはようございます」
マッスルカーブのオープン前のスタッフミーティングに
聖子に三人の辞めたはずの女性スタッフが挨拶をした。
「マネージャー、もう一度ここで働かせてください」
「昨日、早瀬恵里香さんから連絡を貰って」
「脅されているなら、社長が相談に乗ってくれるから
正直に言ってくいれって・・・」
三人は聖子に頭を下げた。
「もちろんよ、まだオープンしたばかりのお店
がんばって成功させましょう」
「はい、ありがとうございます」
三人が頭を下げると、恵里香の尽力に感謝した。
「ここにトレーニングに来ているお客様は
健康になりたい、痩せたい、マッチョになりたいそして
美しくなりたいと目的を持って来ている人ばかりよ。
一人一人丁寧に接して客様の目的を叶えてあげましょう」
「はい」
聖子は立花と千葉を要注意人物であること
事件の内容を説明し蓮華と桃華とピョートルと
アントンが協力者である事を話した。
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警察庁の美咲のスタッフルームに着くと
亮は周りを見渡した。
「美咲さん、日本って監視衛星を持っていないんですか?」
「内閣官房が情報収集衛星を持っているわ」
「情報の共有は?」
「していない」
「もちろん、自衛隊も持っていませんよね」
「ええ、そうよ」
「持っていたら便利でしょうね」
「もちろんよ。北朝鮮のミサイルの
状況をアメリカから知らされるのを
待つ必要が無いもの。とうぜん日本国内の
事件にも利用で来るわ」
「そうですよね・・・」
「どうしたの?急に」
亮は日本にハイテク機器が無い事が気になっていた。
そこに樫村が菅野雪子、白石和子と池袋鉄道警察隊の
下田と根本を連れて入って来た。
「失礼します」
根本と下田は亮の顔を見て声を上げた。
「あっ」
「おはようございます、昨日はどうも」
亮は笑顔で二人に頭を下げた。
「い、いえ。こちらこそ失礼しました」
二人は体を直角に曲げ亮に向かって頭を下げた。
「うふふ、どうぞお座りになって」
美咲が物腰柔らかに二人に席に座るように促した。
「お久しぶりですね、白石さん」
亮は仙台の事件でお世話になった白石和子を懐かしんだ。
「菅野さんも」
亮は菅野雪子の顔を見て微笑んだ。
「早速ですが、資料をご覧下さい」
樫村が資料の説明を始めた。
「昨日、8時45分東京駅八重洲中央改札で数人が
ICカードが使えないと言う苦情が入り、
調べたとこによるとほぼ同時刻に上野駅、
秋葉原、神田、有楽町、新橋でも
で同様のトラブルが発生していました、JRは機械の故障として
対応をしておりましたが、團警部の指示で我々が問い合わせた
事で事件性が有ると思われ、昨日16時40分JRは
ICカードデータ窃盗の被害届を出しました」
「えっ?」
突然、警察庁に出頭を命じられ訳の分からぬまま、資料を読みながら
突然とんでもない事件を説明された下田は声を上げた。
「下田さん、あの後僕は山手線内回りに乗ると、
同じく池袋から乗ってきた
乗客に怪しい行動をする男を発見しました。
その男の写真と似顔絵です」
下田は写真と似顔絵を渡されそれをどうやって撮ったか
不思議でしょうがなかった。
「團さんこの男の怪しい行動とは?」
「20cmほどのバッグを人になすりつけながら
混雑した車両の中を移動していました。
最初は痴漢だと思っていたんですけどね」
亮は下田と根本に嫌味を言った。
「そのバッグの中に小型のICカードスキャナーが入っていたと
言うわけね」
「おそらく。このままこの男を放置していたら1日何人もの
ICカードのチャージ金が盗まれてしまいます」
亮は美咲の問いに答えた。
「そうね、そのスキャナーを組織が持って何人もの人間が
動いたら大変な事になるわ」
「はい、交通機関ではSuica2327万枚、
PASMO720万枚、icoca342万枚、
TOICA31万枚ですが、Edy3700万枚、
nanaco540万枚、waon240万のICカードが
有ります。つまり今回たまたま改札口で発見
されただけでショッピング用のカードの
チャージ金を盗まれている可能性があります」
「7900万枚・・・凄い!」
菅野雪子は声を上げた。
「仮に各カードに1000円づつチャージされていたと考えると
790億円がそこにあるわけです」
「うふふ」




