犯人は何者?
「お忙しいところすみません、警察庁警備部警視原と申します」
「はっ、刑事課の石田です」
「昨日逮捕した。男性の事でお伺いしたい事が」
「ど、どこでその情報を?」
「彼に」
美咲が亮を指差した。
「おはようございます、良い所に来てくださいました」
亮が美咲に頭を下げると美咲が眉を吊り上げた。
「團警部補、あなたもう少しこの世界に慣れてください。
警察は組織。階級と役職で動くのよしっかりしなさい」
「でも、これは個人的な話で・・・」
亮は立ち上がると石田に言った。
「警部!」
石田は亮の顔を見た。
「とにかく、事件の全容を話してください」
美咲が言うと亮はマッスルカーブの話をした。
「では、石田さん男の詳しい話を聞きたいのですが」
「は、はい」
石田は亮と美咲を別室に連れて行った。
「男は昨夜怪我をしたので、十分な取調べが出来なかったんです。
今日は10時から取調べをする予定です」
亮は美咲に言われて急に雄弁になった。
「石田さん男の身元はわかりましたか?」
「まだ、一言も言葉を発していないし
所持品も身分を証明するものは何も・・・」
石田は写真を亮に見せた。
「東洋人ですね。日本語も話せたようだし」
亮は恵里香が脅迫された時の声を聴かせた。
「見れば分かるだろうこの顔つき」
石田が亮に食って掛かった。
「何か変わった様子ありませんか?」
「昨日の夕食はとっていないくらいかな」
石田は報告書を見て確認した。
「今朝の朝食は?」
「まだ。確認を取っていません」
「夕食のどんな物だったんですか?」
「うちがいつも注文する、しずか食堂の弁当だ」
「メニューは?」
「そんなのしずか食堂に聞いてくれ」
石田は亮の質問がだんだん面倒くさくなってきた。
「了解です」
亮は直ぐにしずか食堂に電話を掛けて確認した。
「生姜焼き弁当ですね。付け合せはポテトサラダに
卵焼きにしば漬それで朝食はハムサンド
おいしそうですね、今度食べに行きます」
「何言っているんだ、それにどうして電話番号を?」
石田が言うと亮が本立てに立てかけてある、
しずか食堂のメニューを指差した。
「美咲さん、この男怪しいですね」
「最初から怪しいに決まっている!」
亮は美咲に言うと石田が答えた。
「豚肉を食わないのはハラル、イスラム教の戒律です」
「それなら、ポテトサラダと卵焼きとご飯は食うだろう」
「イスラム教はシュブハと言って戒律に違反するような
怪しい食品も食べないんです。
もし豚肉を炒めたフライパンで
卵を焼いたらまずいでしょう」
「なるほど、ところでイスラム教と
この事件どう関係があるんですかね?」
石田が投げやりな言い方になった。
「いいえ、別に」
「おい、松井すぐ取り調べを始めるぞ」
「はい」
「あの、アントンはどうしますか?」
取締り室に行こうとしていた石田に亮が声をかけた。
「警部殿が身元保証人なら問題ないでしょう。
それに取調べに時間がかかりそうですから、また連絡します」
「石田さんもう1つ尿検査は?」
「はい、目つきが変だったので尿検査に出してあります」
「取調べの結果が出たら連絡を下さい」
「はいはい」
石田がいい加減に返事をすると
部屋に署長が入って来た。
「ごくろうさま」
「はっ!」
石田と松井が敬礼をした。
「原警備局局長からじきじきに連絡があって
よろしく頼むと言う事だ」
「警備局局長が?」
石田は雲上のような人の
話しで訳が分からなかった。
「うん、こちらの原警視のお父上だ」
「はっ、失礼しました」
石田と松井は同時に美咲に頭を下げた。
「詳しい話が分かったら連絡お願いします」
「はい」
二人が背筋を伸ばすと亮が呟いた。
「なるほど、階級と役職ですね」
~~~~~
亮達は目白警察署から出ると
止めてあった車の前に立った。
「美咲さん、乗っていきますか?」
「ええ、お願いさっき父の車で送ってもらったの」
アントンが亮の隣に美咲は亮の後ろの席に座った。
「亮、彼女のパパってどんなに偉いんだ?」
「日本警察のトップ警察庁長官がいて
その下に次長がいて警備局はその下のラインかな」
亮が謙虚に言うと美咲はそれに反論した。
「次期長官候補よ。うふふ」
亮の数々の活躍で美咲の父原巌は警察組織の中で力を
誇っていた。
「わお、そんなに偉いのか!」
アントンは振り返って美咲に向かって親指を立てた。
「ところで亮、どうしてそんなにイスラム教にこだわるの?」
「はい、実はアメリカのマッスルカーブもアラブ系企業の
買収を断って妨害を受けているらしいんです」
「まあ、それで・・・」
「もしアメリカと同じ組織に妨害を
受けたら大変な事になります」
「そうね、あの男がただのチンピラである事を祈るわ」
美咲にはさっきの亮の取り乱しに
亮の不安な気持ちが良く分かっていた。
「アントン、マッスルカーブに行って
立花と千葉の様子を監視してください」
「了解」
亮はアントンを渋谷のマッスルカーブで
降ろした。
~~~~~
錦糸町駅で立花と千葉を自宅から付けていた
蓮華と桃華が会った。
「今日は何か有りそうね、立花は事務所に寄ってから来たわ」
「ええ、千葉はなんかソワソワしている」
千葉を付けていた桃華が蓮華に答えた。
「桃華、亮に連絡をしないと」
「分かったわ」
桃華は蓮華に返事をすると亮にメールを打った。
~~~~~
運転中の亮の元に桃華からメールが届いた。
「うっ、そうか」
「どうしたの?」
山田組の立花と千葉の動きが怪しいらしいんです。
「分かった、何か有ったら直ぐに
動けるように渋谷署に連絡をしておくわ」
「お願いします」
「それより亮、忙し過ぎじゃない」
美咲が亮のギラギラした目を見て心配になった。
「ええまあ、程々に」
「ところで、エッチしている?」
「ぜんぜん」
首を横に振った。
「まあ、もったいない・・・」
「今夜、父との食事の後私の家に泊まる?
母にまだ会っていないでしょう」




