ロビンの秘密兵器
「そうだ亮、明日スミス先生の許可を
取って夕食を食べに行きませんか?
病院食も飽きたでしょう」
マリエは亮を外に誘い出す事に心臓をドキドキさせていた。
「そうだね。魚が食べたい」
「はい、美味しいところ知っています」
マリエは普通の日本人ならステーキと言うのに
亮に魚と言われて嬉しかった。
「うふふ」
マリエは亮のベッドの上に座った。
~~~~~
その夜、絵里子の部屋の館内電話が鳴った。
「ママ、私祐希」
「祐希、どうしたの?」
「私も亮のお見舞いに来た」
~~~~~~
翌朝9時前に絵里子と祐希がホテルの前からタクシーに乗った。
「ホノルルセントラルホテルへ」
「かしこまりました」
運転手は丁寧に答えるとゆっくりと走り出した。
カラカウア通りをホノルル動物園の方向に向かうと
「お客様、曲がります窓の上のグリップを掴んでください」
運転手はそう言ってパオアカラニ通りを左折すると
絵里子と祐希と絢香の体は
左に揺れタクシーは急にスピードを上げた。
「どうしたの?急に・・・」
運転手はそれに返事する事無く
スピードをグイグイ上げ
ユニオンハワイアンリゾートの地下駐車場に入り
エレベーターのドアの前にタクシーは止まった。
「申し訳ありませんでした、どうぞお降り下さい」
中国系の運転手は深々と頭を下げドアを開けた。
「私達を誘拐してどうするつもり!」
絵里子は車の中で絢香と祐希を抱きしめ強い口調で怒鳴った。
「絵里子さん、威勢がいいなあ」
すると目の前のエレベーターのドアが開いた。
「あっ文明さん・・・お久しぶりです」
絢香を抱いた絵里子は車から降り深々と文明に頭を下げた。
「うむ、とりあえずエレベーターに乗って」
そのエレベーターはあっ言う間に
最上階の40階に着いた。
「このホテルは?」
「うちのグループの物で安心だ、さっきの運転手は私の指示通りに
動いただけだ。君をつけていた連中を
撒くためとはいえまなかった」
「いいえ」
絵里子は首を横に振った。
「この子、私の上の娘の祐希でハーバード大学へ
っています」
「祐希です。亮と一緒に水ビジネスをやっています」
「おお、この子が亮のお気に入りの祐希君か
将来アシスタントにするんだろう」
「そうなんですか」
祐希は文明に言われて心がときめいた。
「ロビンから亮の意識が戻ったと言う
連絡を受けたが亮の様子はどうだ?」
文明は絵里子に聞いた。
「はい、まだ障害があるそうで車椅子の
生活でリハビリをしています」
「車椅子か・・・」
文明は亮が不能になってエッチが出来ないのではないかと
想像して吹き出しそうになった。
「それで、入り口でFBIの人間が亮の見張りをしています」
「それは、亮を護っているんじゃないか?」
「私もそう思ったんですけど、亮は監視をされていると言っていました」
「何故だ?」
「ハイジャック犯がライブカメラで流した
アクセス料が20億ドルあるそうなんですが
パスワードナンバーを亮が知っているので
はないかと疑われているそうです」
「なるほど20億ドルのパスワードナンバーか・・・」
文明は腕を組んで考え込んだ。
「他のみんなは?」
絵里子は亮の仲間達がハワイに
来るのではないかと思っていた。
「ロビンが連絡をしている、
一応のこのホテルに宿泊するように指示はしたが
小妹たちはどう動くか予想もつかない」
文明は両手を広げて笑い絵里子も一緒に笑った。
「絵里子!」
ドアが開くとロビンが絵里子にハグをした。
「亮の意識が戻ってよかったね」
「はい。早かったんですね。ロビン」
「いや、もっと早く来たかったんだが
10時間も掛かってしまった。
日本からの方が近い」
絵里子はロビンに祐希を紹介すると
「君が噂の祐希君かキャシーに聞いている。
ロビン・ハイドだ」
ロビンは祐希と握手をした。
「ロビン・ハイド。AmericanwebのCEO・・・」
祐希はあまりにも大物の人物に手が震えた。
そしてロビンはソファーに座っている
絢香のところへ行って微笑みながら
しゃがんで挨拶をした。
「絢香ちゃん絵里子さんに似て美人だな」
ロビンは絢香が亮の子と知らず人懐っこい絢香の頭を撫でた。
「うふふ、ありがとうロビン、あなたも早く子供を作って」
「あはは、それは相手が決めることです」
美佐江に恋をしているロビンは千沙子と付き合っている
文明の顔を見て笑っていた。
「そうだ、これが亮へお土産です」
ロビンはポケットからスマートフォンを取り出した。
「これは?」
「うちが開発したスマートフォンです。
うちの会社が作ったOSで動いているから
盗聴できません」
「まあ、凄い!」
絵里子が受け取ったスマートフォンを文明が取って
触り出した。
「これはずいぶん動きが早い」
文明は指先で動かしながら驚きの声を上げた。
「5Gの倍の早さです。しかもパーツを使えば
衛星電話が使えます」
ロビンは自慢そうに答えた。
「私もこれが欲しい」
「はい、何台でもとりあえず1億台中国で売ってください」
「わかった、考えておく」
「日本製のイメージセンサーを使っていてカメラは最高です」
「そうか、それは凄い」
二人は亮を心配した様子が微塵もなく
ビジネスの話しをしていたので
絵里子は不満だった。
「あのう、そろそろ病院へ行かないと」
「ああ、すみません。これも
亮に渡してもらえますか?」
ロビンはベージュの大豆大の物を差し出した。
「これなんですか?」
「超小型無線機です、骨伝導マイクとスピーカーに
なっていて外から見えなくなっている」
「電池は?」
「LR41よりちいさな3×3の水素電池が入っていて
VOX(音が出た時だけで作動する発信するシステム)
で動くので120時間以上もつ、
後は亮に渡し耳に入れてもらえば亮とはいつでも
交信できる。ボリュームスイッチは奥歯をカチカチさせればいい」
技術解説の好きなロビンは
絵里子のシリアスな質問に答えた。
「うふふ、素敵」
~~~~~
海辺にはビキニの女性がビーチパラソルの下で
ホノルルセントラル病院を双眼鏡で覗いていた。
「小妹、こちら準備が出来たわ」
「OK、マギーこちらは潜入成功。
東洋人が多いので意外と楽だったわ」
ボランティアの掃除婦に着替えた
小妹は病院の廊下を掃除していた。