開発の詳細
美也子は亮の予測が当たって驚いていた。
「じゃあ、関西人じゃないですね、
おそらく九州か沖縄です」
「ええ、関西弁は使っていなかったわ。
どうしてそんな判断が出来るの?」
「はい、まず日本一の酒豪県民は青森県人で
日本酒、ビール、ワイン
お酒なら何でも飲みます。四国圏も酒豪が多いんですかが
ビールが大好きですから、ビールを飲まないなんてありえません。
つまり、ビールの消費が少ない焼酎、泡盛がメインの
九州、沖縄である可能性が高いんです」
「なるほど面白い分析ね」
美也子は何事もデータで分析し結論つけて行く知的な
亮が好きでたまらなかった。
「それで彼らはどんなバッグを持っていました?」
「一人はリュック、一人はショルダーバッグよ」
「じゃあ、二人は比較的拘束される事が苦手な性格です。
プログラマーかソフト開発それに類似した職業で
バッグの中にはパソコン、きっとおたくです。だから」
「だから大人の私達に興味が無いと言う訳ね。うふふ」
「そうです。だから気に病むことは無いですよ」
「亮は私を慰めるのにこんなに時間がかかるのね」
美也子はそう言いながらも嬉しくて亮の
腕に抱きついた。
〜〜〜〜〜〜〜
亮は突然立ち上がり電話を掛けた。
「栗田さん、團です」
「ああ、亮さん口座の方は明日出来ます」
「すみません、今どちらですか?」
「まだ、会社です。大手町の」
「今から会えませんか?」
「はい、大丈夫です」
栗田は時間的に亮にお酒に誘われたと思い
喜んで返事をした。
「ん?誰を呼んだんだ?」
内村は普段男を飲みに誘わない亮が
男を誘っているのに驚いて聞いた。
「今回の仕事を紹介してくれた四菱銀行の栗田さんです」
「そうか、彼はこっちの人間なのか?」
「はい、四菱商事はショッピングモールに興味が無く、
二井不動産と組むならこっちと組んだ方が
アメリカのドライアイスプロジェクトに
四菱グループの企業を仲間に入れて
もらえるメリットがありますからね」
「なるほど」
内村は亮が、いとも簡単にする交渉事が
自分が知らない間に何億円もの利益をもたらされていて
いるのに本人が知らない事が可笑しかった。
~~~~~~
ハワイでの話を内村と話をしていると
「こんばんは」
栗田が蝶に入ってくるとマネージャーが迎え、
絵里子挨拶をした。
「いらっしゃいませ、栗田さん」
初めて入った銀座のクラブは内装が
ゴージャスで栗田は腰が引けていた。
「ハワイではお世話になりました」
「いいえ、團さんが喜んでいましたよ。どうぞ
ハワイに私が居た事は内緒でお願いします」
「分かりました」
栗田が絵里子に案内されてやってきた。
「お待たせしました」
栗田は深々と頭を下げた。
「いいえ、急にお呼び立てしてすみません。
五島商事の内村社長です」
亮が内村を紹介すると栗田は驚いて体を直角に曲げた。
「四菱銀行本店、開発部課長栗田義雄です」
栗田は名刺を差し出した
「ああ、畏まらないで座ってください」
内村は栗田を椅子に座るように促した。
「はい、失礼します」
栗田はモゾモゾと椅子に座った。
「はあ」
栗田は何から話しをして言いかわからなく
ため息を吐いた。
「栗田さん、内村社長にご自分の計画を話してください」
「はい」
栗田は岡村に真壁を紹介しておきながら
岡村と手を組む事を極度に嫌がり始めた。
「やはり、20億円の裏金なんて無謀すぎます」
「でも幹事長を通さないと土地の買収は無理なんじゃないか、
F社は工場跡地の売却の計画を表明していないし」
内村は悲観的な意見を述べた。
「はい、そこで私も今情報を集めてF社の財務担当の
板倉専務に接触できそうです」
栗田はこの仕事が前に進める努力をしていて
色々なつてをたどっていた
「僕の方は野田元社長の方へコンタクトが出来るように
しています」
「團さん、元社長とコンタクトをとっても
何の権限も無いのではないでしょうか?」
栗田は亮がしようとしている事が分からなかった。
「どうだ、F電機のメインバンクのいなほ銀行に情報を聞いては?
買収に手を挙げておけば問題ないだろう」
「はい」
「早速こっちへ呼ぼう」
内村は亮がうなずくと電話を掛けた。
「團さん内村社長は誰を呼んだんですか?」
「それなりの人だからそれなりの人ですよ」
「はい」
栗田は亮を中心に人が集まってくるのが楽しみだった。
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「ピョートルご苦労様」
蝶が入っているビルの前に立っていたピョートルに
アントンが声をかけた。
「そっちこそご苦労だったな」
「ああ、いきなり腹にナイフを刺してきたんだ
半端じゃなく凶暴な男だったよ」
アントンはシャツを捲って中に着ていた
炭素繊維スーツを見せた。
「この腹に刺して自分で自分の手を切りやがった。あはは」
「しかし、このウエアは凄いなあ」
ピョートルとアントンは改めて
亮が自分達に高価な炭素繊維スーツを作ってくれた事に感謝した。
「ところでこれって洗濯はどうするんだ?」
「防菌加工をしてあるっておやじさんが言っていたぞ」
ピョートルはアントンの問いに答えた。
「じゃ、いつ着ていても良い訳だな」
アントンがそう呟いたがピョートルは
それを着る事によって精神的な油断が出来るのが
怖かった。
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クラブ蝶にいなほ銀行の頭取横山が入って来た。
「今日は続々集合ですね」
「ああ、亮君の快気祝いだ」
絵里子が横山に言うと横山はご機嫌で答えた。
横山が顔を見せると栗田が立ち上がった。
「よ、横山頭取」
いくら栗田が他行の行員でも横山が
どこの銀行の頭取であるかは知っていた。
「四菱銀行の栗田です」
栗田は雲の上の人物と会って舞い上がり
自分より年下の亮がその連中堂々と話し合っている事が
とても不思議だった。
「亮君大変だったな」
「いいえ」
亮は横山に肩を叩かれたが、横山はどこまで
あの時の事を知っているか亮は不安だった。




