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お詫び

「これから一緒に仕事をして行く仲間を

誤解をしたままじゃ嫌でしょう」

葉子は亜里沙の肩に手をやった。

「いいか亜里沙君、團亮君はアラスカの

ドライアイスプロジェクト、アリゾナの

 バイオ燃料のビジネスをわが社に持ち込んできたんだ。

しかもドライアスプロジェクトの日本人唯一のメンバーなんだ」


「えっ、あの有名な」

亜里沙は数々の亮に対する失礼な態度で

居てもたっても居られず席を立って出て行った。

「まって、亜里沙ちゃん」

葉子が後を追おうとすると亮はそれを止め

亮が後を追った。


「ハヤ!」

理恵が追いかける亮の姿を目で追いかけると

内村は葉子に話しかけた。

「葉子君、我々はどうすればいいかね」

「大丈夫ですよ。亮は亜里沙ちゃんの立場とプライドを尊重して

 上手く処理しますよ」

葉子は平然と答えた。


「そうか?今度は複雑だぞ」

「でも解決すれば、完全に信頼感が出来上がりますよ。社長」

亮の能力を信じている葉子は内村に自信を持って答えた。


24階のレストランの出入りはエレベーターしかなく

亮はあっという間にエレベーターホールで亜里沙に追いついた。

「すみません、團さん」

「人前で泣くな。人前で泣けば周りの人間は

君に注目する、そうすれば対処法が狭まる。

ビジネスをする人間は人前で取り乱すな」

亮は低い声で亜里沙に言った。


「でも、私團さんにとんでもない事をしてしまって・・・」

「毎日、平穏な日々などない。目の前に起こった事をいかに早く

片付ける事かが能力だ。優秀な僕はそれが早い、

池袋の鉄道警察隊では直ぐに僕の罪がはれた。

だから問題ない」


「でもジョギングで私がストーカー呼ばわりをしてしまって・・・」

「それは話しかけた僕が悪かった。

アメリカでは後ろから走っていくときは

女性に声をかけるのが礼儀だからね、

無言で後ろから来ると恐怖でしょう」


「はい」

亜里沙は海外での生活経験から理解して

うなずくと亮は亜里沙の涙を手にとって舐めた。

「味が水っぽい、ロイシン、エンケファリンが入っている

悲しいことでもあるのかな?失恋とか?」

亜里沙は亮に本当の事を言われ目に一杯涙を溜めた。

亮は亜里沙を胸の中に入れた。


「そうだよ、涙を流すと脳の中の

ストレスホルモンが流れ出して

すっきりする。落ち着いたら戻って食事をしましょう。

せっかく3万5000円もする料理

 もったいないからね。ここのパティシエの

作るスイーツは絶品です」

亜里沙は亮の胸の中フェロモンで

心が落ち着きスイーツと聞いてうなずいた。


「私、化粧を・・・」

「はい、ちょっと化粧道具を貸してくれますか?」

「えっ」

亜里沙は亮に化粧ポーチを渡した。


亮はエレベーターホールの隅で

涙の伝わった後を直し腫れた瞼を隠すために

アイシャドーを濃くしてした。

「口紅は?」

すっかり亮のメイクテクニックにはまった

亜里沙が聞いた。


「せっかくの料理、口紅をつけてちゃまずいでしょう。あはは」

落ち着いた亜里沙は黙って亮に着いていった。


「申し訳ありませんでした」

亜里沙は内村たちの前で深々と頭を下げた。

「いや、かまわんよ。誤解が解ければいいさ。さあ食事にしよう」

「はい」

内村がにこやかに答えると亜里沙が笑顔を取り戻した。

「さて、改めて亮君の快気祝いだ」

「快気祝いですか?」

亜里沙は元気そうな亮を見て驚いて聞いた。


「はい、怪我で1ヶ月入院していました」

「交通事故ですか?」

亜里沙は1ヶ月と聞いてかなり重症だと思った。

「いや、飛行機事故だ。なっ亮君」

「ええまあ」

内村が実情を話しそうだったので亮は

なんて答えていいか悩んでいた。


「1ヶ月前にハワイでハイジャックがありましたよね」

「ええ、インターネットで実況中継された事件ですね」

亜里沙は亮の問いにうなずいた。

「はい、僕はあの時の乗客の一人だったんです、

その時に足に怪我をしてしまってハワイで1ヶ月入院していたんです」

「そうだったんですか、大変でしたね」

亜里沙は何も疑わずに納得した。


亮は内村が口を滑らしそうなので目で合図を送った。

「うっ、うん。亜里沙君、亮君に自己紹介しなさい」

「私は桜井亜里沙です。営業部に居ましたが

 1ヶ月前に秘書課に配属になったばかりです」

内村の指示に亜里沙が答えた。

「ひょっとしたら亜里沙さんにお兄さん

居ませんでした?桜井彰さん」


「はい、私の兄ですが」

「彰さんと僕は同級生です」

「本当ですか?」

亜里沙は突然兄と亮が友達と聞いて驚き急に親しみが湧いた。

「僕が何故亮りょうと呼ばれるようになったかと言うと

 僕の呼び名はだんあきら、お兄さんの呼び名はさくらいあきら

 近所でいつも一緒に居たので、りょうとしょうに呼び名を変えたんですよ」


「あっ、そんな話し聞いたことがあります。

最近ではさくらいしょうはアイドルみたいで

 嫌がっていますけど」

亜里沙は兄の話題ですっかり笑顔になった。


「それで高校の時お父さんの転勤でアメリカに

行ってしまったんですよね。僕を覚えていませんか?」

「そう言えば兄といつも一緒にいた、男性が」

「根暗で目立たなかったんだ」

葉子が笑った。


「5年前に帰国しました」

「それで、彼は今何をしているんですか?」

「法務省に勤めていています」

「そうですか、会いたいなあ」

亮は桜井彰を懐かしく思い幼なじみの妹と

会うとは運命の悪戯としか思えなかった。


「兄は忙しくて中々連絡が取れないので

團さんの連絡先を伝えておきます」

亜里沙と亮が赤外線アドレスの交換をしていると

理恵が不機嫌になった。

「亮、ハワイのお土産は?」

「そうだ、買って来ましたよ」

亮は大事に持っていた袋から

箱を取り出した。


「これが理恵ちゃん、こっちが葉子さん、

これがお母さん、これが社長」

理恵が箱を開けるとエルメスの赤いキーケースが入っていた。

「わあ、素敵。中に金の鍵が入っているけど・・・」

「それは僕の心の鍵」

亮は冗談で言ったが五人は真剣な顔で亮の顔を見た。


「じょ。冗談ですよ」

隣に居た理恵は鍵を亮の胸に刺して回していた。

「亮君こんなに高いもの良いのか?」

内村はエルメスの財布を取り出して亮に聞いた。


「はい、ご迷惑をかけたお詫びです。

そして心配してくれていた。お気持ちに感謝の気持ちで、

飛行機事故なので慰謝料、入院費、

生命保険から入院費給付金など貰えますので」


亮の居ない間、内村と秀樹が一緒に必死になって

亮の仕事を護っていてくれた事を中村の報告で知っていた。

亜里沙と三野は隣に座っている葉子のエルメスの

ブルーのキーケースをうらやましそうに見ていた。

「亜里沙さんにもお近づきの印に」

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