犯人への罠
「クッソ!」
普通では考えられない方法でピョートルに返され
床に倒された蓮華は真剣な目つきになり
立ち上がった。
先ほどの倍以上のスピードの右足の
回し蹴り左足の後ろ回し蹴りで
2回転でそのまま左足を軸にジャンプして
ピョートルの首に足に絡め
右腕をホールドして倒した。
ボートを漕ぐように蓮華体を伸ばせば
ピョートルの右腕の痛みは倍増した。
「蓮華、ストップだ」
亮は蓮華の肩を叩いた。
「キャー」
スタジオで見ていた会員の女性から拍手が起きた。
その中の女性の一人が亮の脇に居たスタッフに聞いた。
「彼女はインストラクターなんですか?」
「はい、中国拳法のインストラクターです」
亮はその女性に対して答えた。
「私、習ってみたいんですけど」
「はい、近いうちに体験レッスンを告知しますからぜひ」
亮は女性ににこやかに答えた。
「せっかくですからスタジオの中でもう少し見て行きませんか」
亮はスタジオの外で見たクラブ会員を中に入れた。
「早瀬さんちょっと手伝ってくれませんか?」
「は、はい」
亮はトレーニングウエアに着替えると
恵里香に声をかけた。
「恵里香さん、男は家族を護る為に働き戦います。
そのためには戦う力が必要です。
僕があなたを護る言ったのは嘘ではありません。
社員は僕の家族ですから。ところで体重何キロ?」
恵里香は亮の言った意味が分からず
A4の紙を丸めた物を受け取った。
「亮、あそこに居る男二人怪しいぞ」
アントンが目線を送り、そこには立花と千葉が立っていた。
「はい、あの二人が会員を脅していたみたいです」
「そうか、俺達日本語が分からなかったけど、
雰囲気は脅していたようだった」
「これが終わったら、蓮華達に後をつけさせます」
「了解」
「ところで、今から何をやるんだ?」
ピョートルが首を傾げた。
「僕が強いという所を見せ付けます」
「それは今更言われなくても分かっている」
「あの二人にですよ」
亮は自分がただのスポーツジムの代表ではなく
格闘家である事を見せつけ
立花と千葉に恐怖を与え、
同時に会員に安心感を与え話題性を持ちたかった。
「聖子さん、ビデオを撮ってください」
「YouTubeに投降するんですか?」
「あはは、僕を映しながら立花と千葉を映してください」
「ああそうか、分かりました」
聖子は機転良く適格に指示をしていく亮にリーダー
として資質を見た。
亮はまずピョートルに恵里香を肩車させ
先ほど渡したA4の紙を恵里香の手に持たせた。
会員達は3m上のその紙をどうするか想像して
ざわめいた。
亮はその下にたって頭の上まで足を蹴り上げ高さを
計った。
「待って!」
桃華が3mバックして気持ちを集中している亮を止めた。
「亮上半身裸になってよ」
「なんで?」
「サービスよ、女性が喜ぶでしょう」
桃華が笑って亮の耳元で囁いた。
「分かったよ」
亮が白いティシャツを脱ぐと
見事な筋肉で女性達が声を上げた。
そして体から漂うフェロモンが
女性達を虜にさせていた。
「あっ、亮の傷消えている」
桃華が声を上げた。
「新陳代謝が良いらしくて消えました。
例のクリームのおかげです」
「凄い」
亮は準備運動を終えると足を大きく上げた。
「ハッ」
亮は3mを走りピョートルの目の前で左足を蹴り上げ
右足でジャンプし宙を駆け上がるように
左足を蹴り上げ恵里香の持っていたA4紙を丸めた物を蹴った。
「ワオ」
拍手が起こるとピョートルの肩から降りた
恵里香を抱いた亮を蓮華、桃華、ピョートル、アントンを囲んだ。
「ハイ!」
声を上げて蓮華が亮にかかると
亮は抱いた
恵里香振りその遠心力で
回し蹴りで蓮華を飛ばした。
次に後ろから迫ったアントンを後ろ蹴りでボディに当て
振り返って顔を蹴った。
その勢いで亮は2回転をして桃華の
足を回し蹴りで払い仰向けの桃香に
鳩尾に踵を落とした。
亮は恵里香を抱きかかえたまま
ピョートルに向かっていった。
二人がぶつかる瞬間
恵里香をピョートルに
放り投げた。
「ん?」
ピョートルは慌てて恵里香を抱きかかえると
亮はピョートルをジャンプして飛び越え
後頭部を蹴るとピョートルは伐採の大木が倒れるように
崩れると亮は恵里香を抱きかかえ床に立たせた。
観客のクラブ会員は亮を取り囲んで絶賛した。
「今のはどんな武術ですか?」
「私も習いたいんですけど」
「どうやったらあんなにジャンプ力が付くんですか?」
「その体、どうやると作れるんですか?」
亮が次々に質問されている中、
立花と千葉は帰り支度を始めた。
亮が合図をすると蓮華と桃華は立花と千葉の後を付ける準備をした。
「凄いですね、社長」
亮に抱かれて振りまわされた恵里香はくらくらする頭の中で
亮を信じて付いていく事にした。
「亮、準備OKだよ」
マギーが亮の耳元で囁いた。
「ご苦労様、マギー」
亮は亮がデモンストレーションしている間に
立花と千葉のバッグに発信機を付けるようにマギーに指示をしていた。
「恵里香さん、住まいはどちらですか?」
「池袋から2つ目の駅の東長崎です」
「分かりました、彼らに自宅まで送らせますから安心して帰ってください」
「ありがとうございます。それで・・・」
「はい?」
「明日からまた働かせていただきます。よろしくお願いします」
恵里香は元気に亮に頭を下げた。
「聖子さん、辞めたスタッフ、現在のスタッフに事情を聞いて
対処してください。脅迫した人間を探し出して業務威力妨害で訴えます」




