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炭素繊維ウエア

「そりゃ、ふてい野郎だ!」

亮はふざけて男の頭を軽く蹴った。

「そうだ、この男ナイフを持っていた」

亮が倒れている中国人の上着のポケット

からナイフを取り出した。

「どうして気づいたの?」


「こっちに向かって走ってきたのを見たら

上着の動きがおかしかった」

そこへ警察官が走って来てナイフを

持っている亮の腕を掴んだ。

「おい!お前」


警察官は亮の持っているナイフを見て

銃刀法違反の容疑で腕を掴んだ。

「またですか?」

亮は1日に2回も警察に腕を

つかまれてため息をついた。


「この男が美宝堂の時計を盗んだ泥棒の片割れで

この人はナイフを取り上げただけです」

マギーは慌てて亮をかばったが倒れている男を見て

警察官は亮を過剰防衛と決め付けていた。


「身分を証明するもがありますか?運転免許証とか」

「道路を歩くのに自動車運転免許証は要りませんから」

亮はまた今朝と同じ冗談をいってみた。


「うん、確かに。では他に身分を証明できる物はありませんか?」

今度の警察官は冗談の分かる人だったので

亮は素直に身分証を提示した。


「これは・・・」

警察官はその身分証の写真と亮の顔を見て確認した。

「失礼しました、警部殿」

警察官は亮の警察庁警部の身分証を見て直立して敬礼をした。

「大丈夫です、14時25分銃刀法違反の罪で逮捕してください、

後は仲間の男と窃盗の取調べもあるようですから」

警察官は横たわっている男の手に手錠を

はめてパトカーの到着を待った。


亮は男のバッグの中にある時計を見て肩を落とした。

「売り物にならないかな?」

亮はデイデイトⅡローマプレジデントブレスレッドブラックを

手に取った。


「よりによってこんなに高い物を・・・」

マギーが亮の手を覗いて呟いた。

「盗んだのはうちからだけじゃないだろう。

盗んだ物きっちり返してもらうからな

覚えておけよ」

亮はいつになく厳しい言い方を中国人にした。


それは、高級時計は宝石に比べ利益が薄いため

1個100万円以上もする高価なものを盗まれた店にとって

死活問題になるからだった。


窃盗犯が警察に連れて行かれるとマギーが亮に聞いた。

「ところで亮、何の用でここに来たの?」

「マギーがお店に出ているうちにプレゼントを買いに来ました」

「えっ、誰にプレゼント?」

マギーはプレゼントと聞いて嫉妬した。


「美咲さんです。ハワイのお土産が

マカダミアナッツチョコレートだけだったので

 不機嫌で困っている」

「しょうがないわね、女心分からないんだから」


~~~~~

「ママさん、バッグ取り返してきました」

蓮華がオロオロして立っていた久美に

バッグを渡した。

「大丈夫?怪我していない?」

久美は自分のバッグよりも蓮華と桃華が心配だった。

「はい、私達がしつこく追いかけたら

バッグを投げて逃げていったんです」

「まあ、大変だったわね。ありがとう。

蓮華ちゃん、桃華ちゃん」

久美は笑顔で蓮華と桃華をハグした。


母親の愛を知らない蓮華と桃華は久美に抱きしめられて

母親の温もりを感じて安らぎを覚えた。

「さあ、美容院へ行って綺麗になりましょう」

「はい、ママさん」


~~~~~

蒲田の研究所に着いた

秀樹達は早速ピョートルとアントンの体の寸法を

計って炭素繊維の裁断を始めた。


鉄の硬さの20倍もあるといわれている

炭素繊維は急激な圧力で硬直し硬くなるので

高温のレーザーでカットされる。


「ほう、凄いですね。この研究所は」

ピョートルは研究所内を見渡して驚いていた。

「ここはDUN製薬で作られた医薬品のテスト、

美宝堂で扱う商品の耐久テスト、新商品の開発、

 そして企業の依頼を受けてテストをして

データを分析する場所だ」


「凄い、ここで薬が開発されているのか」

アイザックの母親が亮に特別な薬を

貰っているのをピョートルは知っていた。

「そろそろ、スーツが出来上がる、

二人に実験台になってもらおうか」

秀樹が指差す物は10ポンドハンマー、

日本刀、ボウガンがテーブルの上に

用意されていた。


全身にフィットする炭素繊維スーツは

収縮性があってしかも軽く動かし易いものだった。

まず研究員が10ポンドハンマーでピョートルを

殴ろうとすると重くてふらついていた。


「俺がやってやるよ」

アントンが研究員から10ポンドハンマーを取り上げ

大きく振りかぶってピョートルの腹を叩き付けた。

「おお」

アントンの体がまるでゴムの塊を殴ったように跳ね返された。


アントンは驚いて秀樹の方を見た。

「ピョートル大丈夫か?」

「ああ、なんともねえ」

ピョートルは秀樹の質問に答えた。


コンピューターに出たデータは

1トンの衝撃を1kg、つまり1000分の1に抑えていた。

「これは内側に張ってある衝撃吸収ラバーも作用している」

秀樹は初めての人体実験で予想以上の効果にニヤニヤと笑った。


「アントン、これを来てアメフトやったら

ディフェンダーは怖いもの無しだな」

ピョートルは嬉しくなって右手を大きく上げた。


研究員は今度は日本刀を躊躇なくピョートルに渡した。

「思い切りきってくれ」

アントンは左手を前に突き出した。

ピョートルは炭素繊維スーツを信じて

思い切り降ろすと日本刀が床に突き刺さった。


「あぶねえ、あぶねえ」

硬化した炭素繊維は摩擦係数が限りなく0になり

日本刀を滑らせ床に突き刺さした。

「もしこのスーツを着ていなかったら自分の足を切っていたぜ」


秀樹も研究員も予想しなかった現象に驚きの声を上げた。

「もし、敵がナイフで突き刺そうとすると間違いなく

自分の手を切るな」

秀樹は研究員に囁いた。

「はい、ボウガンの実験はどこへ跳ね返るか

分からないのでとても危険ですね」


「ああ、中止しよう。ここまで結果が出れば十分だろう」

秀樹は実験を中止しようとすると

テスト風景を見ていた亮とマギーと蓮華と桃華が入って来た。

「お父さん凄いものが出来ましたね」

「ちょっと出来過ぎのような気がするな」

「はい」


高性能な商品なので思ったよりも売り先が

制約されることに気づいた二人は

顔を見合わせ、秀樹は両手を上げで首をすくめた。

「もし、量販するならば炭素繊維の発火点を下げましょう、

耐熱性が無いとなれば

 普通に防刃、防弾ジャケットで販売できますからね」

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