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ICチャージ窃盗

美代子が男の前で声を上げた。

美代子の持っているクマのリールで伸びる

パスケースが男を挟んで佳代子のバッグに絡みついていた。


「すみません、これはずしてもらえますか?」

美代子が男に話しかけた。

「いいですよ、もう少し上に上げて」

「はい」

美代子と佳代子がバッグを持ち上げると

男はそれを直ぐにはずした。


「ありがとう」

美代子と佳代子が礼を言うと

男は表情を変えず返事をした。

「いいえ」


亮はそれを確認して二人に電車から降りるように

指示をした。


~~~~~

池袋鉄道警察隊に男の声で電話が掛かってきた。

「すみません、さっき捕まった男性どうなりましたか?」

「どちらさまですか?」

「あの男性痴漢していませんよ」

電話を受けた根本にそう言うと電話が切れた。


「どうした?根本」

「團さんは痴漢をしていないって電話です。

これで3件目ですよ」

根本は下田に答えた。


「わざわざ電話をして来るって事は本当の事なんだろうな」

「と言う事は桜井亜里沙の狂言ですか?」

「うん、そうかも知れない。最近意識過剰の女が多いからな」

下田は亮が自分達の仲間と聞いて亜里沙に

批判的な言い方になっていた。


~~~~~

「ありがとう、美代子ちゃん、佳代子ちゃん」

亮が美代子と佳代子

に礼を言った。

「何だったの?音で分かるの?」

美代子が亮にマイクを渡しながら聞いた。

「まあね、さあ学校に遅れるから」


「うん、じゃあね」

「レッスンに来る時は連絡を下さい。今度は僕が立ち会うから」

「今日行きます」

二人は笑顔で手を振ってホームの階段を登っていった。


女子高生に手を振っている亮を何人かの

サラリーマンが怪訝そうな顔で

見ていた。


~~~~~

亮が銀座の事務所についたのは8時過ぎだったが

中村和美が出勤していた。

「おはようございます。ちょっと

トラブルがあって遅くなりました」

亮は挨拶をすると中村は立ち上がり

頭を下げたままうつむいていた。


「どうしました?中村さん」

「いいえ、お帰りなさい」

和美はめがねをはずし涙を拭いていた。

「色々ご迷惑をかけました、すみません」

亮は中村がいるからこそ自分が自由に動けることに

感謝していた。


「さあ、社長。仕事がたくさんあります。お願いします」

「了解です」

亮は和美に渡された山のような書類を渡されて

自分の部屋に入った。


亮の作った緊急プログラムは

自分にもしもの事があった時

周りの人間がどう対処していいかの事細かな指示書で

それに忠実に従った中村のお陰で

業務に支障は無かった。


そこに原美咲が社長室に入って来た。

「お帰りなさい、亮」

「ご迷惑かけました、美咲さん」

「ううん、あなたのお陰でみんなが救われたわ、ありがとう」


「僕の事は公表されていないですね」

亮は美咲に確認を取った。

「ええ、報道には任務に支障を来たすので

個人情報は公開できないと言ってあるわ、

もちろん客室乗務員とあなたの元カノの

秋山さんには口外しない様に言ってあります。

乗客名簿からも削除してあります」


「ありがとうございます。それに元カノじゃないし」

「まず、父があなたに感謝の意を込めて

食事をしようって言っているわ。

亮のお陰で父の警備局の手柄になったから」


「それは良かった」

「それであの時は凄かったわFBI,DHSアメリカ

第3艦隊最後はCIAからも連絡が有ったのよ」

美咲は興奮して言った。

「凄いですね」

「他人事ね」

「自分でやる事やっただけですから」

「それから医療費と慰謝料と特別功労金と

警察庁長官賞が出るわ」


「医療費はアメリカの方が出してくれました。

乗客にアメリカ人も乗っていましたから」

「まぁ」

美咲は亮とアメリカの深い関係に驚いていた。


「それから、ホノルルの名誉市民、

アメリカ軍から勲章をもらいました」

「勲章!」

亮はクリスとの爆弾開発に携わっているので

アメリカ軍のメンバーにもなっていた。


亮は残っている仕事が気になって

返事が散漫になっていた。

「ところで亮、今朝痴漢で捕まったんだって?」

「あはは、情報が早いですね」

「あなたの身分照会があったので父が

頭に来て直接電話したそうよ、

 それから上司にもね」


「お父さん自ら?」

次の警察のトップを目指す原巌警備局長から直接

連絡があったら一般の警察官は震えが来るのではないかと

亮は想像していた。


「ええ、それと民政党の岡村幹事長の秘書から

あなたの身分照会があったけど

 何が有ったの?」

「ええ、それが・・・」

亮はハワイで会った岡村の話をすると

美咲は額に皺を寄せた。


「やはり噂通りだったのね、岡村幹事長の口利き料は」

「どうします、捜査しますか?」

「それは検察の特捜の仕事だから管轄外だわ」

美咲は手を広げた。

「そうか・・・でも犯罪は許せませんよね」


「ええ、それがもどかしいところなのよ。贈収賄は

 代わりに罪を負うものが出て来て立件が難しい、

いくら野党と言っても第二党の幹事長で

田中誠一と立場が違うからおいそれとは捕まえられないわ」

「悔しいですね」

亮はそう言ってニヤッと笑った。


「まさか、あなたやるつもり?」

「考えておきます」

亮はそう言って天井を向いた。

「うふふ」

美咲は亮が何かを考えている事を感じた。

「それから電車の中で怪しい男性を見つけたんですが」

「何?」


「おそらく、ICチャージ泥棒」

「そんな事できるの?」

美咲は驚いて亮の顔を見つめた。

「ええ、もちろん可能です。小型化をして

スキャナーの感度を強くすれば電車両の内の

周りのICカードのお金を盗む事が出来ます」


「本当!」

「はい、ICカードが使えなくなったトラブルの

情報が入ったら教えてください」

「分かったわ、亮。でも良く見ただけで分かったわね」

「そんな事誰でも考える事です。後はやるか、

やらないかそれが犯罪です」

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