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チカン容疑

下田も今まで捕まえた痴漢と違って

堂々とした態度が引っかかって

仕方なしに根本の意見に納得した。


「すみません、一応報告書書かなくてはいけないので

 身分を証明する物ありませんかね」

根本は亮に対して低姿勢で言った。

「いいですよ」

亮がパスポートを出すと根本はめんどうくさそうな顔をした。

運転免許証なら個人照会が直ぐに出来るが


パスポートでは管轄が外務省なのですぐには照会が出来なかった。

「運転免許証は持っていないのかね。他にマイナカードとか社員証とか」

「はい、電車に乗るのには運転免許証はいりませんから」

「警察を馬鹿するのもいい加減にしろ!」

下田が机を叩いて怒鳴った。


「別に馬鹿にしていません、男だから痴漢だ、

女だから被害者とか

一方的な固定観念で見ないで下さい。

確かに悪質な痴漢もいます、

でも混んでいたり揺れたりして間違って

触れてしまう事もあるんです」


「知ったような言い方をして・・・」

下田は一般人の亮がお説教じみた事を

言うのが納得いかなかった。


「下田さん、もう返してあげましょう。

彼も仕事が有るんだから」

根本は亮の言っている事ももっともだと

思い下田をなだめた。

「くそ!」

亮は別に下田と喧嘩するつもりはなく

警察官の立場を諭したかった。


亮が鉄道警察隊室を出ると二人の

女子高生が立っていて手を振っていた。

「だんさーん」

「あっ、君達はアサシオ朝倉美代子ちゃんと

潮田佳代子ちゃん?」


「うふふ。お久しぶりです」

「どうしたの?」

「私達が目撃者で團さんの無実を証明したんです」

「そうか、ありがとう。さあ学校に遅刻するから行こう」

「はーい」

亮は二人と山手線外回り線に乗った。


「偶然ですね、出会いもここでしたね」

美代子が亮の顔を覗き込んでいった。

「そう、だったね」

亮は女子高校生にナンパされた自分がおかしくて

忘れていた振りをしていた。

「どうしてあの程度で痴漢にされたんですか?」


「僕も分からない、彼女が僕の事を気に入らなかったみたいで」

美代子が聞くと佳代子が首を傾げた。

「変なの、こんなにかっこいいのに・・・。

ずっといなかったみたいだけど、どこに行っていたんですか?」

「アメリカとハワイ、これお土産」

亮はかばんの中からクリバンキャットのティシャツを取り出して

美代子と佳代子に渡した。


「キャー可愛い、ありがとう」

美代子が亮の腕に抱きついた。

「ところでレッスンは続けている?」

「うん、ダンス上手くなったよ」

亮はそれを聞いて11月28日に発売するブルックの

CD発売キャーンペーンで来日ライブを

やる時二人を使えないか考えていた。


「11月にはちゃんと踊れるようにがんばって」

はい」

「夏休みなったら合宿をやるからね」

「どこでやるの?」

「ハワイ」

「本当?」「本当だよ、親の了解とパスポート取っおいで」

「はい」

亮は先の事を気にせず素直に返事をする、女子高生が

可愛らしく思えて仕方が無かった。


「ん?」

亮はかなり込み合ってきた車両の中で変な態度をとる

男を見つけた。


それは痴漢をする様子でもなく

ビデオカメラで盗撮する訳でもなく

自分の持っているバッグを回りにいる人に

近づけていた。


亮はその男の顔を体型、服装を漏らす事無く

すべてを記憶した。


~~~~~

池袋の鉄道警察隊室に電話が掛かってきた。

「根本さんいらっしゃいますか?」

「私です」

「お問い合わせの團亮さんの件ですが、

上司の方いらっしゃいますか?」

「はい」

根本は首を傾げながら下田に電話に代わった。


「電話を代わりました。下田です」

「團さんの照会の理由を聞かせてもらいたい」

「痴漢の容疑です」

「ふっ。團さんにはこれ以上関知しないでもらいたい」

笑ったような言い方をした電話の相手に下田は

強い口調で返した。


「どんな人間だが分からんが、被害者いる限り

犯罪者だ。私は許さない」

「ほう、彼を犯罪人扱いするつもりか?」


「偉そうに、あんた誰だ?」

「そんなことどうでもいい、團亮の名前

 しっかり頭に叩き込んでおくといい」

電話を男はそう言って電話を切った。

「何だよ、突然電話を切りやがった。やっぱり團亮は怪しい」

下田が舌を鳴らした。


「根本、今の電話の相手は誰だ?」

「あっ、聞いていません」

「話しをする時は相手に名前を聞くのが常識だぞ」

「すみません」


それから5分後上野、上野新幹線、池袋、赤羽管轄の

第3中隊長、野上警部から下田のところに電話が掛かってきた。

「おい、下田。團さんを誤認逮捕したそうだな」

「いいえ、誤認ではありません、被害者がいます」

「とにかくその件は報告書を書かなくて良いから

 忘れろ」


「しかし・・・」

「いいか、團さんはこっちの人間なんだ!」

下田は納得しない返事をしていると野上が叱り付けた。

「は、はい。了解しました」

下田は驚いて電話を切り呆然としていた。


「おい、根本。あいつがこっちの人間って信じられるか?」

「こっちの人間って警察官ということですか?」

「おそらく・・・」

「まさか彼が着ていたスーツは超高級だったし

バッグはデぺッシュ中にはモンブランの万年筆と

ボールペンとipadがはいっていました。

時計はロレックスデイトナ数百万します

到底公務員の給料では買えない物ですよ」


亮の格好を不思議に思っていた。

「まるでビジネスマンだな、

ところでデペッシュってなんだ?」

「エルメスのケリーバッグの男性版

ビジネスバッグで100万円くらいします」


「マジかよ、そりゃ公務員じゃ無理だ」

下田は驚きの声を上げた。

「はい、ただ靴が高級スーツに不釣合いな

ミズノのランニングシューズだったんです」

「根本もう考えるのは止めよう、上からの命令だからな」

「下田さん、ひょっとして奴がこの前の

ハイジャック犯を一人で倒したと言う

警察庁の秘密捜査官だったらどうします?」


根本は知的で男らしい謎の雰囲気をかもし出す亮を

男として憧れていた。

「確かに、300人も乗客がいてヒーローの

名前を誰も知らない。不思議な事件だったよな。

アメリカ人だったという噂もあるし

大怪我をして死んだと言う噂もある」


下田はもし亮が秘密捜査官だったら

何らかの処分を受けるのではないかと

不安になった。


~~~~~

亮はバッグからipadを取り出して耳元で美代子に囁いた。

「みよちゃん」

「なに?」

「あの大きなバッグを抱えた男性に

 何かはなしかけてくれませんか。

彼の声が聞きたい」


亮は大豆大のイヤフォンマイクを渡した。

「これがマイクだから・・・」

「分かった」

美代子は佳代子と囁き合うと男のほうへ近づいた。

「やだー、信じられないパスケースが絡んでいる」

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