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シロクマの活躍

亮はトレーニングウエアに着替えると

洗面所へ向かった。

「亮、トイレ行かなく良いの?」

「馬鹿、まだ下向かないんだよ。ジョギングへ行ってくる」


「まあ、元気ね。私もジョギングに行くわ」

マギーは笑いながらシャツを着た。

「いや、母が起きてくる前に昨日僕達が散らかした台所を掃除して

 おいてくれ」


亮の家のある目白通りから西武線に挟まれた一角は

昔からある高級住宅街で緑が豊富で車の通行が少ない

道路がたくさんあった。

「おはようございます」


久々の自宅周りのジョギングに門から出ると

ポニーテールをなびかせた女性が亮に声をかけてきた。

「おはようございます」

亮が答えて横に並ぶと女性はニッコリと笑った。

「ペースが速いですね」


「そうですか?」

女性は亮と話しをしてペースを乱したく無い様子で

顔を背けた。


亮は女性の後ろに付き目白庭園の方に

向かって無言で走り続けた。


ハワイで目覚めてからグラマーな女性を見ていた亮は

小柄で小さく引き締まった女性のお尻が

とても素敵に見えた。

小さな公園の前に着くと女性は興奮して亮に近づいてきた。


「なんですか!何のようですか?」

「いいえ、何も。方向がたまたま一緒だっただけです」

「ったく、あいさつなんかしなきゃ良かった」

女性はブツブツ言って大きなケヤキ足を掛けストレッチを始めた。


亮も自分の怪我をしたふくらはぎの張りが気になり

ストレッチを始めると女性は時々亮を睨みつけていた。

「ふう」

誤解をされたままで気落ちした亮は

ため息をついて自宅に向かって走り出し

その後ろには彼女の足音が付いてきていた。


~~~~~

亮がジョギングから戻ると

ピョートルとアントンが待っていた。

「亮どこへ行っていたんだよ、心配したぞ」


「そんなに心配しないでください、朝からそんな事件は起きませんよ。

 それより朝食が終わったら父と一緒に研究所へ行って

防護服のフィッティングをしてきてください」

「俺達に防護服を作ってくれるのか?」

アントンが亮に聞きなおした。


二人は軍隊でぼろ雑巾のように使われていた

自分達に誠意を尽してくれる亮に感謝していた。

「あっ、それから6cm以上のナイフは銃刀法違反ですから

 持って歩かないで下さい。いいですね」


「おいおい、それじゃリンゴも喰えねえじゃねか」

「はい、歯ぐきから血が出ないんだったら、まるかじりしてください」

「分かったよ、イチゴかバナナする」

ピョートルは両手を広げた。


仕事が山積みの亮は朝の渋滞を避けて亮は山手線で行く事にした。

そして、銀座に向かう為に目白駅の山手線外回り

のホームに電車入って来ると

亮は閉まり掛けのドアに飛び込んだ。

亮は勢い余って目の前にいた女性にぶつかると

前にいた女性が振り返った。


「キャー」

車両の中に甲高い女性の声が響き

悲鳴を聞いた乗客は亮を取り囲んだ。

「すみません」

亮が謝っていると誰とも無く亮の腕を掴む者が現れ

池袋に着いた頃には四人の男に両腕を掴まれ

もう一人の男は亮のベルトのベルトを掴んでいた。


池袋駅のホームに着くと警察官が二人立っていて

亮は鉄道警察隊室に連れて行かれた。

「すみません、僕は何の容疑でここに連れて来れてたんでしょうか?」

何も悪い事をしていない亮は堂々として警察官に答えた。


「何言っているんだ、お前は痴漢をしたんだろう、目撃者がいるんだ」

警察官は亮の話しを聞こうとしなかった。

「分かりました。痴漢の容疑は申告罪です、

まず被害者に申告させてください。

 あなたは僕に対して自白を強要しています。

これは特別公務員暴行陵辱罪、刑法195条になります。

彼女の方も虚偽申告罪及び名誉毀損になります」

亮は警察官に言い放つと警察官は亮が手ごわい人物と判断し

態度が急変した。


「まあ、そんなに荒立てないで話しをしましょう。

まずあなたのお名前と職業は?」

「その前にあなたの警察身分証を見せてください」

亮の反抗的な態度に警察官は苛立ったようすで

身分証を胸のポケットから

身分証を見せた。


「根本勝昭巡査長ですね」

「これで満足か!」

根本は机を叩いた。


~~~~~

「すみませーん」

二人の女子高生が鉄道警察隊室の前で声を上げた。。

「私達、目撃者です!」

根本は亮を連れてきた五人の男は会社に行く時間があると言って

名前も告げずいなくなってしまったので困っている所に、

目撃者が現れたのでホッと胸をなでおろした。

「それで、痴漢の目撃なんだね」

「いいえ、あの人は痴漢をしていません!」


~~~~~

別室に呼ばれた女性は自分の名前を警察官に伝えた。

「桜井亜里沙、大手町の五島商事に勤めています」

「それで、あの男に痴漢をされたんだね」

「はあ、そんな気が・・・」

「はっきり言って下さい。後ろからお尻を触られたんですね!」

警察官の口調は次第に強くなった。


「は、はい。あの男は今朝ジョギングをしていた私を付けていたんです」

「それはストーカーじゃないですか」

その警察官は亮がストーカーであると断定した。


亜里沙は秘書課の当番で早番出勤の時間が気になっていた。

「すみません、会社の出勤の時間が・・・」

「何を言っているんですか、痴漢は女の敵です。こんな時きっちり

 お灸をすえないと、とりあえず被害届をだしてください。

後ほど連絡をするという形を取りましょう」


警察官は亜里沙に被害届を出すように誘導していた。

「とにかく、もう時間が無いので私行きます」

亜里沙は駆け足で鉄道警察隊室を出て行った。


~~~~~

「私達見ました、捕まった男性は駆け足で電車に乗って

 女性の背中に軽くぶつかっただけなんです」

「それ本当か?」

根本は疑った顔で女子高生を見た。

「間違いありません、私達の目の前で起こった事だし

 まだ電車の中は混んでいませんでしたから」


「そうか・・・」

根本は最初から亮が痴漢する男には見えなかった。

「君達学校の時間は?」

「大丈夫です、まだ時間が有ります」

根本は上司の下田巡査部長のところへ行った。


「下田さんあの女子高生が見ていたそうです、

ここでは返したほうがいいんじゃないですか。

 奴は法律に詳しそうだし」

「だが被害者がいる」

下田は亮の方を見た。


「私はどう見ても彼が痴漢には見えないですけど

 下田さんはどうですか?」

「うっ、しょうがないな」

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