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ジョギング

折からのマラソンブームで皇居を囲む道路

1周5キロは程よくアップダウンがあり

人気のランニングコースで1日1000人以上

のランナーが走る人気のスポットである。


しかし、そのあまりにもの人数の多さ、マナーの悪さ、

コースの不整備で通行人、ランナー同士のトラブルが絶えない。


ある週末の夜、友達に誘われて始めた

ランナー暦2年の真由美は

竹橋からの上り坂が終わり、千鳥ヶ淵の

下り坂でスピードを上げた。


目の前をゆっくりと前を走る男を抜こうとした瞬間

男は右によれ真由美と激しく追突した。


二人は絡み合うように転げた。

「痛てえじゃねえか、姉ちゃんよ」

どう見ても転んだ男の言動は明らかに

皇居周りの一流企業の社員や

公務員には見えなかった。


「す、すみません」

痛いのは男だけではなく

真由美も足と腕に擦り傷を作った。

「痛ててて・・・ダメだ。歩けねえ」

「救急車呼びましょうか?」

真由美は男が押さえている足首を触ろうとした。


「触るんじゃねえ、今ダチに迎えに

来てもらってかかりつけの

 病院行く」

「私はどうしたら?」

途方にくれている真由美を無視するかのように

ランナーは次々に脇を走り抜けて行った。


間もなく男の友達と言う男が二人現れ

一緒に真由美も男達の車に乗って行った。

3日後の月曜日の夕方同じ場所で

今度は男のランナーが女性とぶつかった。


「キャー」

「大丈夫ですか?」

「痛くて歩けない・・・」

女は立ち上がろうとしてまた座り込んで足首を押さえた。

それから数分後、女が呼んだ男がランナーの男を取り囲んだ。


~~~~~

夜の帳が降りる成田空港に着いた亮を森が迎えに来ていた。

「亮!」

到着口から出てくる亮を見つけ

森と早苗は懐かしそうに手を振った。


「あっ、森さん」

「もう大丈夫なのか?」

「はい、お陰さまで」

森の乗ってきたSUVの助手席にアントンが乗り

後部座席の運転席の後ろにはマギーと

ピョートルが亮を挟んで座った。


「おい、このでかい男はなんなんだ?」

森は助手席のアントンを指差した。

「ボディガードです」

「なるほど、亮はまるでどこかのアーティストみたいだな」

「確かに、でも二人は大きいだけじゃ有りませんよ」


「ほう、なおさら安心だ」

そこに蓮華と桃華を乗せた早苗が

運転する車が前に着くと

森は車を走らせた。


「森さん迎えを頼んで申し訳ありません」

「いいや、声をかけてもらって嬉しいよ」

「早速ですがF電機の件よろしくお願いします」

「うん、社長解任の事件は裏に大きな

損失隠しと言う噂が立っている。

 直ぐに調べるさ、優秀な社員が増えたからな」


「森さんが優秀と言うのはかなりですね」

「ああ、原さんの紹介で仁木と三雲と言う元警察官が入ったんだ」

「原さんの紹介なら安心ですね」

「ああ、三雲の先祖は真田十勇士の猿飛佐助のモデルだそうだ」


「えっ、猿飛佐助って実在の人物だったんですか。知らなかった」

亮は知らないふりをすると森はご機嫌で笑った。

「とにかく二人は優秀だ、捜査能力も逮捕術もA級だ」

「どうしてそんなに優秀なのに警察を辞めたんですか?」


「上官と折り合いが悪かったそうだ」

「そうですか・・・」

亮は森が絶賛する二人に会ってみたい気がした。

「取締役の亮に相談しなくて悪かったかな」

はっきりしない亮の返事に森が気を使って

聞いた。


「いいえ、そういう訳ではないんですけど。

人が増えたところで

早苗さんを何日かお借りしたいんですけど

大丈夫ですか?」


「うん、事務系の女性はいるから大丈夫だと思うが、どうした?」

「新しい情報収集方法を教えたいんですけど、

森さんにも説明しましょうか」

「い、いやいい。早苗にしっかり教えてやってくれ」

捜査現場育ちの森はコンピューターを開くだけで

めまいがした。

「はい」


成田から亮の実家の目白までの2時間余りの

道程、亮と森は打ち合わせに時間を費やした。

「じゃあ、調査情報が入り次第連絡する。今日はゆっくりと

 家族と過ごすといい」

「お願いします」

亮は車を降りて森と握手をすると

森の車を見送った。


「お帰り亮」

母親の久美が涙を流し亮を抱きしめた。

「すみません、心配かけて」

「いいわ、生きていてくれたんだから、ただ迷惑かけた人には

 ちゃんと謝りなさいよ」

久美は厳しく亮に言った。


「はい、すみません。ところでお父さんと姉さん達は?」

「お父さんはあなたの仕事を管理しているわよ、

ただ新宿のラブポーション

 は別な意味で気に入っているみたいだけど、美佐江と千沙子は

 もう直ぐ帰ってくるわ」


「はあ、すみません」

「さあ、みなさん入って入って」

久美はマギーとピョートルとアントンと

蓮華と桃華を家に入れた。


「亮あのお二人はずいぶんお育ちになったわね」

「はい、みんな二人を白熊と呼んでいるんです」

久美はピョートルとアントンを見上げて声を上げた。

「まあ、白熊さん可愛い。でもベッドから足が出ないかしら?」

「5センチほどだからいいんじゃないですか?」

亮は二人がそんなに軟な男じゃないと思っていた。


「そうね。パパに頼んで大きなベッドを

探してもらいましょう」

久美は二人がしばらくここに住むと思っていた。


ダイニングに通されたピョートルとアントンが椅子に座り

亮が台所に立ち料理を始めると蓮華と桃華が料理を運んだ。

「いらっしゃい、私が亮の母親の久美です」

久美は流暢な英語で二人に話しかけた。


「亮に料理を作らせて良いんですか?」

ピョートルにとってボスのような立ち場の亮に

料理を作ってもらってオドオドしていた。

「いいのよ、あの子の料理が世界で一番美味しいんだから」

「そうですか、楽しみだな」

アントンが台所の方を首を伸ばし覗いた。


「末っ子の亮は子供の頃から私と一緒に料理を作っていたのよ、

 中学の時には図書館にある料理の本を全部読んでしまって

 彼専用の包丁セットまであるんだから」

「ほう凄い」

「亮の子供の将来の夢はコック、外科医、

薬剤師の順番に変わって言ったの」

久美は嬉しそうに亮の話をしていた。


そこに美佐江と千沙子と秀樹が帰って来て

総勢10人のにぎやかな夕食が始まった。


「お父さん、迷惑と苦労をかけました」

亮が秀樹に頭を下げた。

「ああ、大丈夫だ。しかしラブポーションは楽しい店だな

 毎日行列が出来ている」

「これからは遊びに行ってください」

「うん、そうする」 

秀樹は亮の耳元で答えた。


「ところで、今回はボディガードを雇うほどヤバイのか?」

「はい、こんどの事で敵にかなり恨みを

買ってしまって、この家にも迷惑かけそうです」

「なんでその若さで敵を作るんだか、わからんよ。

とりあえずお前用の身を守る為に炭素繊維の

防刃、防弾服を作ってある後で研究所に行ってくれ」

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