キャシーと絵里子
キャシーが一人になった所を確認すると
絵里子はそこに近づいてきた。
「キャシー、お話あるの」
「絵里子、どうしました?」
キャシーは絵里子亮の事で何か言われるのではないか
とドキドキして聞いた
「キャシー亮の子供を宿している?」
「えっ、どうして?」
「あなたが輝いているから」
キャシーは返事をしなかった。
「私、亮の子を産んでいま五歳、絢香と言うのよ」
「本当!」
「ええ、ここには連れてきていないけど、
シッターに預けてあるの」
「会いたいわ!」
「可愛いわよ、それに賢い」
絵里子はスマフォの写真を見せた。
「本当、亮に目元がそっくり」
しばらくキャシーは黙っていたが
「実は亮の子供が・・・どうしてわかったの」
キャシーはキャシーのお腹を見つめた絵里子に答えた。
「もちろん、同じ男を愛した女同士だもの
絢香に姉弟が出来て嬉しいわ」
絵里子は亮を愛するキャシーの気持ちが手に
取るように分かり
家族が増える事が嬉しかった。
「私、亮に似た男の子が欲しいわ」
キャシーは自分が亮の子を宿した事を
絵里子が許してくれた事に感謝した。
すると突然キャシーは絵里子に抱きついて泣き出した。
「この子のパパが、亮がもし死んだらと思ったら
恐ろしくて、恐ろしくて」
「分かるわ、私もいつもそうだもの。
まったくクソ野郎だわ、亮の奴」
「だから出来るだけ亮が危険な目に
会わないようにアイザックに頼んで
白熊さん達に亮をガードさせていたの」
「偉いわ、キャシーありがとう」
「絵里子、この事は亮にしばらく内緒にしていてね」
キャシーは顔を上げて絵里子を見つめた。
「そうなの?赤ちゃんの話しをすれば亮も少しは大人しくなるのに」
「うふふ、絵里子だって亮に内緒で産んだんでしょ」
「まあ、そうね。キャシー、困った事があった
らいつでも相談に乗るわよ」
絵里子はキャシーの肩を抱いた。
「いずれ私の妊娠が知れたらマスコミの
父親探しが始まるからその時はお願い」
キャシーの妊娠はお腹が大きくなって
いずれマスコミにばれれる事は必至だった。
「そうか、キャシーにはそれがあるのね」
絵里子も妊娠しながら、クラブのママをやり、密かに
子供を産んだ経験をしてへ
その辛さが身に染みて感じていた。
絵里子はキャシーならいくらでも優秀な夫を選ぶ事が出来るのに
苦労と知って亮の子供を産み未婚の母になる事が不思議だった。
「それと、日本語教えてくれる?」
「日本語を勉強したいの?」
「ええ、日本に行った時に亮の両親に日本語で挨拶をしたいの」
キャシーの純真で真剣な眼差しに絵里子を嫉妬させるどころか
抱き締めたいほど可愛らしく見えた。
「まあ、素敵」
「最近、毎日日本のテレビ放送を観ているの。CMは面白いけど
どうしてあんなにコメディアンばかり出演しているのかしら?」
「さあ、少なくとも日本人はあんなにジョークは言わないわよ」
絵里子は額に皺を寄せて答えた。
「まあ、残念」
「うふふ」
絵里子が笑いながらキャシーとハグをした。
亮が夕日見える位置に移動すると
左側に絵里子が右側にキャシー
それを取り囲むように美喜、マギー、祐希、小妹、
蓮華、桃華、ジェニファー、パティそして
マリエが手を繋ぎあって並んだ。
「世界が平和になりますように・・・」
みんなが静かに頭を下げた。
食事を終えると岡村は絵里子に未練を
残し真紀子と真壁は帰って行った。
残った栗田は会議室のような部屋に呼ばれ
そこには、キャシーと文明とロビンと亮が座っていた。
「どうも」
「栗田さん、英語で話せますね」
亮が厳しい口調で確認した。
「はい、もちろんです」
「どうぞ」
亮が言うと緊張した面持ちで栗田が話し始めた。
「実は東京のO駅前の再開発の計画が
あって私と真壁さんがそこに商業施設を
建てるために動いていたのですが、隣接する
F電機の跡地の買収の話しが突然来て
資金が用意できずもし資金が出来ても
大型商業施設を企画運営できないんです」
「まあ、それは大変ね」
キャシーは他人事のように答え亮の方を見た。
「それならば出来る会社がやればいいじゃないですか」
「それが、真壁さんはすでにかなりの負担を負っているのです」
栗田は亮の質問に答えた。
「契約金ですか?」
「いいえ、先ほどの岡村幹事長に手数料を支払っているのです」
「ええっ、政治家に何故お金を払うの?それって犯罪じゃない」
キャシーは手を広げて首を傾げた。
「キャシー、日本ではそんな事たくさんある。中国は金を払わないと
仕事は来ない」
「まあ、酷い!」
文明が答えるとキャシーは怒り出した。
「そうですか、それで幾らほど?」
亮も怒りがこみ上げてきた。
「1億円です」
「そんな事をするから賄賂の分のお金が建築費に跳ね返って来るし
下請け建設会社へ対する支払いも削られんだ」
亮の口調は強くなっていた。
「それはそうなんですけど・・・」
栗田は1円の賄賂も得ずに真面目に市議員を勤め上げた
父親と岡村を比べていた。
「それで岡村さんの追加の手数料は有るんですか?」
「はい、20億円です」
「馬鹿な!」
「そうです。馬鹿です!」
栗田は手を握り締めた。
「まずF電機と土地の買収で交渉しましょう」
「亮、F社なら僕がパイプがあるぞ。
あそこのプロクラムはうちが受けているんだ」
ロビンがニヤニヤ笑った。
「ありがとう、ロビン。それよりあの会社は
突然の社長解任で訴訟が起きている、
調べてみるよう。ひょっとしたら土地の
買収に利用できるかもしれない」
「そうですね、当行でも調べてみます」
栗田が立ち上がると亮は首を横に振った。
「でもF電機のメインバンクいなほ銀行です。
四菱さんはライバル社の四菱電機ですからね。
難しいと思います」
「は、はい」
栗田は亮に断られ気落ちしていた。
「ねえ、あの岡村と言う人どれくらい偉いの?」
日本の政治システムを知らないキャシーが
聞くと栗田が答えた。
「野党の民政党の幹事長ですから党の
ナンバー2と言う所ですかね。党のお金を握っている感じです」
「そう、だからお金が欲しいのね」
「はい」
栗田がうなずくとキャシーがニコニコ笑って聞いた。
「亮、その仕事あなたやりたいの?」
「ええ、まあ」
亮はたくさんの仕事を抱えていたので
はっきりと返事が出来なかった。
「ところで栗田さん。岡村幹事長の機嫌を
損ねるとどんな妨害を受けるのかしら」




