爆弾ジャケット
美喜のそれは自分の首にナイフを
向けていた男の手に突き刺さった。
「ああっ」
その時、男の足にマギーが撃った弾丸が当たり
男は両方の痛みに耐えかねてナイフを地面に落とし
美喜は男の首に手錠の鎖を巻いて締め上げ気を失わせた。
それと同時に亮の体は3mを2歩で
飛び跳ねケアカの脇にいた男に飛び掛ろうと
するとその男の足にジェニファーの撃った弾丸が当たった。
亮は右腕を蹴り上げ跳ね上がった腕に手を回し肩を入れて
背負い投げをして倒れた男の上に乗り
腕を固めスイッチを取り上げた。
「ケアカさん、大丈夫ですか?」
「も、もうスイッチが入っています」
ケアカは足をガタガタ震わせていた。
ケアカがつけたベストにはキーワードロックが掛かっており
タイマーが残り4分32秒を刻っていた。
「全員退避」
亮は大声を上げ周りを取り囲んでいる
警察官そしてマリエの退避を促した。
「兄さん!」
その場を離れるのを拒否していたマリエは
無理やり警察官の手で連れられて行った。
亮は自分が早まったせいで爆弾のスイッチが
入った責任を感じていた。
「亮、このスイッチは私が車に乗った時すでに入っていたわ」
美喜が亮に経緯を話した。
「そうか、やはりこっちに気を引くために・・・」
亮は小妹の事が気になっていた。
「亮、ここには爆弾処理班は居ない。すぐに離れろ」
フレイザーが耳元で囁いた。
「マリエの兄さんを見捨てる事など出来ません」
亮はベストについた配線をじっと見つめていた。
表に見える配線を見るととても簡単に見えた。
しかし、背中のふくらみに他の配線が隠されていれば
目の前にあるコードはトラップの可能性が高い。
「美喜さん、さっきのナイフを」
亮はナイフでベストの背中の布を切った。
そこには何本のコードが見えた。
「やっぱり、トラップだったのか」
亮はそれをジッと見て緑色のコードを引き抜いた。
「一本目」
亮の抜いたコードは一本の爆弾を不発にした。
「後1分59秒」
美喜が亮の元で言った。
「美喜さん、逃げてくれ」
「亮、自信が無いの?このままではあなたも死ぬのよ」
「あはは、分かっている」
亮はそう言って黄色と青色のコードを抜いた。
「後、59秒」
「残りのコードが2本ある・・・」
亮は緊張でケアカは冷や汗で全身に汗をかき
目の前がかすんできた。
「よし、赤だ!」
亮がそう言って目を見開き赤いコードを引き抜こうとすると
汗で手が滑ってそれが抜けなかった。
「いや黒だ!」
後ろからその声が聞こえると
黒いコードが引き抜かれ
タイマーは23秒を差していた。
亮は声の主を見た。
「クリス?」
「ああ、ベスト爆弾は僕の専門だ。久しぶりだな亮」
クリスは笑って亮とハグをした。
※クリスのベスト爆弾の話しはエピソード0
「しかし、どうしてコードの色が分かった?」
亮はいくらクリスでも一瞬でコードを選べる
訳がないと思った。
「屋上のお仲間がライフルのスコープを覗いて報告してくれた」
「誰?」
「ロシアのBareさ」
亮はそう聞いてアントンとピョートルだと分かり
ドクターヘリが着陸しようとしている屋上に向かって手を振った。
「ライフルと言えば」
亮はマギーとジェニファーにも手を振った。
爆弾をクリスにはずされたケアカにマリエが走ってきて抱きついた。
「兄さん、大丈夫?」
「ああ、カラすまない。俺がカニエラに従ったばかりに」
「ううん、私もカニエラの命令で亮に盗聴器を付けたの」
「そうか、兄妹でカニエラに利用されていたのか・・・」
「それで亮が兄さんのボートを旅行会社のツアーで使ってくれるそうよ。
これで借金貸せるわね」
「ああ、でも彼に悪い事をしてしまって合わせる顔が無い」
ケアカは頭を落とし、亮はケアカに声をかけた。
「ケアカさん、大丈夫ですか?」
「亮さん。ありがとうございました」
「いいえ、あなた達はカニエラにだまされていただけです。
僕は何も思っていませんよ。同じ日本人の血が流れている同士
仲良く仕事をしましょう」
「でも・・・」
ケアカは亮のやさしい言葉に戸惑っていた。
「僕はハワイが好きなんです。海が綺麗で暖かくてハワイの人はおおらかで、
優しい」
亮がそう言うとマリエとケアカが笑った。
「それで、カニエラは?」
亮はフレイザーの元へ行って話を聞いた。
「小妹のお陰で無事だ。命を狙われてビビッている」
「じゃあ、助けに来たんじゃ無くて殺しに?」
「どうやらそのようだ、明日から自分の黒幕をペラペラ話ししそうだ、
今度こそジャック・モーガンを追い詰めてやる」
「それで、僕を追っていた連中は」
「奴らも逮捕した。何人かは逃げたがな、しかしいつもながら亮の仲間は凄い」
フレイザーは亮に握手を求めた。
地下から小妹と蓮華と桃華がマギーとジェニファーと美喜がそして
屋上からアントンとピョートルがまるで家族のように
亮の元に来てハグをした。
それを見ていた祐希が感動で涙を流していると亮は祐希の頭を撫でた。
「どうだ危険だろう。君にはこの世界に入らず、
ビジネスに取り組んで欲しい」
「いや!私も戦うビジネスマンになりたい」
「あはは」
亮は祐希を怖い目に合わせればビビると思ったがそうは行かなかった。
「小妹、祐希に先生を付けたい、人選してくれ」
「了解」
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すべての様子を監視カメラで見ていたロビンと絵里子が
ハイタッチをしたが文明は真剣な顔をして呟いた。
「やばいぞ。亮。これでお前は完全に
ジャック・モーガンを敵に回したぞ」
「文明、本当?」
それを聞いた絵里子の顔から笑いが消えた。
「亮と私はビジネスでアジアを征服するんだ、
こんな事で命を危険にさらして欲しくない」
文明は頭を抱えた。
「ねえ、文明。もし亮がジャック・モーガンを倒したら?」
「そうなったら、アジアどころか世界を征服できるさ」
「じゃあ、亮を応援して世界を征服しましょう」
一見能天気そうに見えた絵里子の返事に絵里子の覚悟が見えた。
「それはいい、世界征服だ~」
ロビンが手を挙げて奇声を上げた。
「ロビン、もし失敗したらすべてを失うかもしれないぞ」
「もし、亮がいなかったら今頃ハッカーで
FBIに逮捕されて刑務所暮らしだったかもしれない。
だからどうって事無いさ。クリスも一緒だ」
ロビンは両手を広げた。




