ジェニファーのアシスト
「本当に敵は来るのかしら?警察署は強固よ」
「ええ、カニエラのいる留置所は地下にあるから強行突破は難しいわ」
蓮華は小妹に問いに答えた。
小妹達は爆弾ベストを着たケアカと
美喜が警察署に近づいている事を知らなかった。
そこにフレイザーが車の窓を叩いた。
「あっ、フレイザーさん」
小妹が窓を開けた。
「亮は?」
「今、こっちに向かっています」
「亮に言われて防備は厳重にした。ここは来れないだろう」
フレイザーは自信を持って答えた。
~~~~~
「亮、敵がバズーカを持っているわよ。逃げて」
「大丈夫、この距離で撃ったら自分達も巻き添えを食うから
もう少し離れないと撃たないはずだ」
亮は敵との車間距離を縮め「ガシャン、ガシャン」とボディを激しく擦り合った。
突然、敵の車はスピードを落とし後ろに回った。
「しまった!」
亮がルームミラーで後ろを見ると
サンルーフから体を乗り出して
バズーカを向けた。
その時、敵の後ろからバイクが猛スピードで現れ、
敵の車のSUVの後方のドアをピストルでぶち抜き
鍵が壊れたドアはバタバタと上下させた。
そして、黒いライダースーツの女性は
ステップに立ち両手でピストルを持ち
狙いを定めて敵の車の後輪目掛けて発砲した。
「ドーン。ドーン」
低い銃声音は大口径のピストルの発砲音だった。
その威力でバイクの前方を走るSUV車の
後輪は火花を出して吹っ飛び
コントロールを失った車は
道路沿いに植えたある椰子の木に突っ込んだ。
「亮、車が吹っ飛んだ!」
後ろを見ていたマギーが叫んだ。
敵では無いと確信した亮は車のスピードを落とし
側道を空けてバイクを待った。
「亮!完治したのね」
ヘルメットを取ったジェニファーは
長い髪をなびかせ微笑んでいた。
「ありがとう、ジェニファー。警察署まで急ぐんだ」
「了解」
ジェニファーはバイクからライフル持って降りて後部座席に乗った。
「ジェニファーです」
ジェニファーは助手席に乗っているマリエの手を軽く握り挨拶をした。
祐希は見覚えのあるジェニファーを見て会釈した。
「じゃあ、行きます」
亮が車を発進させると
ジェニファーはマギーとハグをした。
「マギー、お久しぶり」
「足は大丈夫?」
マギーはジェニファーの足の怪我の様子を聞いた。
「うん、亮と同じで完治したわ」
マギーは太股をトントンと叩いて見せた。
運転席の亮はそれを聞いてジェニファーの嘘を
見抜いていた。
アリゾナの砂漠で負ったジェニファーの傷は
動脈近くに達していて1ヶ月ほどでは完治は出来ていないはずだった。
亮は献身的に動いてくれるジェニファーに感謝していた。
「ありがとう、ジェニファー」
「ううん、亮には頼みたい事があるから・・・」
ジェニファーが言ったそれは
キンバリー財団に居るジェニファーの姉アンナの子
ロバートの事だった。
「ジェニファーはいつもいい所で亮の力になっている。
うらやましい・・・」
マギーが涙ぐんでそう呟くとジェニファーは
マギーの手を掴んだ。
「亮は人の貢献度で差別する男じゃないわ、
逆に私はあなたがうらやましい。恋人や夫婦は別れることが有るけど、
家族は永遠だから」
マギーは黙ってジェニファーの答えにうなずいた。
「そういえばパティの具合はどうですか?」
亮は運転席からジェニファーに聞いた。
「うん、もう退院して現場に復帰しているわ」
「そうか。良かった」
「亮が危篤と聞いて凄く心配していたんだから」
学生時代の亮の友人パティ(パトリシア)は
ジェニファーの従姉妹で亮とは浅からぬ縁を持っていた。
「ごめん・・・」
「ロビン、ケアカ達は?」
亮は一息ついてロビンに電話をかけた。
「この方向は間違いなくホノルル警察署だ」
「了解、今ジェニファーと合流した」
「ワオ、ジェニファー!まるでニンジャだな」
ロビンは神出鬼没のジェニファーに驚いていた。
「ニンジャは他にもいる」
亮はアクセルを深く踏みこみ警察署に向かった。
~~~~~
ホノルル警察署に1台の車が入ってくると
サーチライトが一斉に点きそれを照らした。
後部座席のドアが開きケアカが両手を上げて
外に出た。
待機していた警官がケアカに銃を向けると
警官の格好をした男が車から降りて大声を出した。
「この男は爆弾ベストを着ている。手出しをしたらここで爆発させる」
それを聞いた警官たちが1歩後ろに下がった。
助手席から出てきたのは前に手錠をした美喜だった。
そこに運転席から降りた男が回りこみ
美喜の首筋にナイフを突きつけた。
首筋に突きつけられたナイフの恐怖は
ピストルの何倍も高く
首を動かすどころか瞬きさえ出来ない状態になるのである。
「お前達の要求は何だ!」
「カニエラを連れてこい」
男はフレイザーの問いに答えた。
「我々は人質の交換には応じない」
男達はフレイザーの応えを無視して警察署に向かった。
警察隊はジワジワと一緒に歩き出した。
そこに猛スピードで白いHUMMER入って来て
そこから降りた亮は小妹に所へ走った。
「状況は?」
「あの通り、あれじゃ手が出せない。美喜さんも人質だし」
「小妹、蓮華、桃華直ぐに留置場に行ってくれ」
「えっ、どうして?」
小妹は亮の行った事が理解できなかった。
「人質交換が出来ないのを分かっていてこんな事をするか?
きっとこちらに注目を浴びさせて、留置場を狙うつもりだ」
「なるほど、了解」
小妹達は走って警察署の建物に向かった。
「亮、どうする?あのベストはC4爆弾が
4つ付いているかなり強力だぞ」




