小針茂蔵
「やはりそうでしたか。007いいなあ」
亮は羨望眼差しで槙島が出ていったドアを見ていた。
「美咲さん、地下3階にキム・ヨンヒの手下が居ます。
武装した警官を向かわせてください」
我に返った亮は美咲に指示をした。
「了解、そこに救急の要請があったわ、怪我人が居るみたい」
「了解です。槙島に聞きました。
敵が狙っているのは岡村幹事長だそうです」
「えっ!」
~~~~~
「蓮華、桃華の客室チェックはどうですか?」
亮は爆弾のリモコンを持っているキム・ヨンヒの居所を
知りたかった。
「全室終わったけどキム・ヨンヒは見つからなかった」
「やっぱり・・・奴らの足取りが分からない
理由が分かりました。すぐに13階に向かってください」
「13階なんてなかったよ」
蓮華はさっきまでホテルを走り回っていたので
13階が無いと断言できた。
「いや、業務用のエレベーターにはメンテナンス用の階、
13階があります。
奴らは従業員に変装して防犯カメラのない
従業員用エレベーターを使っていたんです」
亮は先ほど早苗と乗ったエレベーターに
13階があった事を覚えていた。
※メンテナンス階とは大型ホテルでは
ベッドやエクストラベッドなど備品の収容ヶ所として
西洋人が嫌う13階を使うことが多い。
「了解、向かいます」
「蓮華、桃華。相手は武装していますので
注意してください。僕もすぐに向かいます」
「了解」
「仁木さん、三雲さん聞こえましたか?」
亮はイヤフォンマイクでの会話を
仁木達が聞いていた事を確認した。
「はい、聞こえました。
俺たちは応援に行かなくて大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。会場にいる手下はおそらく
今から写真を送る五人です。確保してください」
「分かったんですか?」
「はい、会場にいたウエイター三人とウエイトレス二人が
従業員名簿にありませんでした」
「ですが。毒ガスを流したらこの五人は死ぬのではないですか?」
「岡村幹事長を殺すだけならこんな大げさな事は必要ないはずです」
疑問に思った、二木と三雲が交互に聞いた。
「僕もそう思います。おそらく、何か作戦があると思います。
自爆テロにしては、五人は人数が多すぎますからね」
「了解しました、しかし二人では同時に五人の確保は無理です」
「大丈夫だ、俺と早苗がいる」
森が亮と仁木の間に割り込んだ。
「分かりました、じゃあもう一人は僕が」
亮はフロントからすぐに会場に向かった。
~~~~~
空調室で男に馬乗りになっていたマギーの上に
巨漢で覆面をした男が乗り後ろから腕を回して首を絞めた。
男は体を回転させマギーの右腕を後ろに
回して固定し足をからませ仰向けになって
マギーの体を持ち上げた。
「ふふふ、どんな防弾チョッキを
着ていたか知らんが、首を絞められては
抵抗できないだろう」
「くっ!」
マギーは男からキム・ユンヒの居所を聞き出そうとすあまり
男が近づいて来るのに気付かなかった事に後悔した。
しかし、どんなに反省しても完全にマギーの喉にはまった
太い腕を外すことはできず次第に力が抜け
同時に背骨に激痛が走った。
「亮・・・・」
脳に行く血液を止められたマギーは薄らいで
行く意識の中でそうつぶやいて涙を流した。
男が気を失ったマギーの体の曲線を撫で胸を鷲掴みにすると
首にワイヤーをまいて両手それを引いた。
「バシッ!」
男のこめかみに強烈な蹴りが入り
体を2mほど飛ばされると男はむくっと起き上がった。
「マギー大丈夫?」
気を失っているマギーにまるでキャットウーマンのようなマスクをした
女が声を掛け、男の前に立ちはだかった。
「おい、邪魔すんじゃねえ、気を失わせてこの
ワイヤーで首を絞めて殺すのが楽しみなのに」
「ふん、女を弄んで殺すなんて最低の男だね」
マスクの女は右手を前にだし身を低く構えて男に声を掛けた。
「そのマスクの下はどんな顔だか知らんが、ぐちゃぐちゃにつぶしてやる!
その前に一発やらせてもらうがな」
男はそう言ってマスクの女の胸に向かって来ると
女は体をかわし、男に回し蹴りを放った。
「くそっ!」
壁に弾き飛ばされた男は腰に付けたナイフを
右手に取って振り上げた瞬間に
それに手裏剣が突き刺さった。
「これは・・・手裏剣?」
「そうよ、あんたの知っている三角手裏剣よ」
「お、お前甲賀衆か?」
「そうだよ、豆腐屋」
「と、豆腐屋じゃない。俺は小針茂蔵だ
・・・俺をそう呼ぶのは四方堂美喜か?」
「甲賀の面汚しのあんたを逃がすわけにいかない!」
「お前こそ母親はアメリカ男と駆け落ちして、
お前もどこかの男にはまって
行方を晦ましていたそうじゃないか。
美喜と分かったからには遊びは止めて殺す!」
茂蔵は腕に刺さった手裏剣を抜くと真剣な顔つきになって
落ちたナイフを左手に取って美喜の右脇腹にめがけて
手を伸ばした。
左手といえど甲賀忍者の末裔、茂蔵のスピードは速く
ナイフが美喜の脇腹をかすった。
ひるんだ美喜に向かって茂蔵は何度も何度もナイフを向け
美喜は巨漢でスピードのある茂蔵を攻め倦んでいた。
アドレナリンの分泌で右腕の出血が止まった茂蔵は
ナイフをよけた美喜の右横腹を蹴ると
美喜は壁に向かって転げて行った。
「いくらお前でも俺には敵わないはずだ」
茂蔵は容赦なく床に転がった美喜を蹴り下ろしていた。
そこに茂蔵の頭を目がけ机が振り下ろされ
茂蔵の体が机の脚にはまった。
「ぐわ!」
「よくもやったわね、このデブ!」
意識が戻ったマギーが鬼の形相で茂蔵を怒鳴った。
「マギー、意識が戻ったのね」
「ありがとう・・・ええと」
マギーはマスクをしている女性になんて
言っていいか戸惑っていた。
「私よマギー、美喜よ」




