神徳病院
「もうダメ、團亮さんが金持ちだと聞いて来たけど
IT会社の社長みたいにヘリコプターで長野へ
蕎麦を食べに行くような馬鹿なお金を使わなそうだし
ここにいても何の得もないわ、
ホストクラブでも行って遊んだ方がマシよ」
「でも、團さんは素敵な人よ。頭が良くて優しくて」
「分かっているけど、彼が私たちみたいな女を相手にすると
思っているの?美宝堂と言った誰でも知っている銀座の
宝石屋よ、一緒にいた女性だってチョー美人だし」
「彼は普通と違う。私たちを絶対救い出してくれる。信じてみない」
孝子はスタジオDで雇ってもらえるとはアンナに言えなかったが
もし、アンナが亮に頼めば手を差し伸べてくれると信じていた。
「じゃあ、もし彼が私に何かをしてくれると言うなら何?
お金?脱がない女優の仕事?バラエティのMC?
その代償に彼は何が欲しいの?
体ならいつでも提供するけど・・・」
「ねえ、諦めずにもう一度團さんと話をしてみて」
投げやりなアンナに孝子が必死で説得した。
アンナは今AV出演で得たお金は好きなだけ使い、
預金と言えば5千万円程度、それで一生老後の資金には足らない
将来の不安を感じていた。
「ねえ、帰るならいつでも帰れるわ」
「そうね。パーティに出る連中の顔を拝んでからでも
遅くはないわね」
アンナはいつも素直になれない自分を一生懸命説得してくれた
孝子に感謝して返事をした。
「よかった・・・」
「ねえ、ゆかさん。友達いる?」
「ううん、愛媛から出て来てなんでも
話せる人はまだ誰もいない」
「そう、気の毒ね。作った方がいいわよ」
アンナは自分も居ないとは言えずに
孝子への忠告で終わりにしてしまった。
「そうね。そうする」
「ところで、そんなに化粧が濃くていいの?」
「ええ、夜のパーティは濃い目の化粧で良いんだったって」
「そう、じゃあもう少しアイメイクを
濃くするから席に戻っていいわよ。
・・・大丈夫ちゃんと戻るから」
「うん・・・」
「あっ、ゆかさんそのドレス素敵よ。胸も大きく見える」
「ありがとう、團さんが作ったスタジオD
オリジナルブラを付けているの」
孝子がカフェに戻ると亮が一人でコーヒーを飲んでいた。
「ありがとう、孝子さんアンナさんを説得してくれて」
「えっ、どうしてわかったんですか?」
「いいえ、あの様子でわかります」
亮は孝子のブラに付けた盗聴マイクで二人の会話を聞いていた。
「ねえ、團さん。彼女をこの世界から抜け出させたいんです」
「派手な生活をした人間は地味な仕事は大変です。
中途半端に顔が売れていますからね。
本人のやる気がないと難しいですよ。
ただ美は何よりも勝る、美しい顔、美しい体、
美しい立ち振る舞い、そして美しい心
アンナさんは何かを見出せばきっと・・・」
「私が何とかしてやる気にさせて見せます。友達として」
「友達ですか・・・」
亮は急にしっかりした孝子に目を見張った。
「團さんがアンナさんは寂しそうだっておっしゃっていたでしょう」
「ええ、彼女は自分でどうしていいかわからないはずです」
「人に言えた立場じゃないけど、彼女の力になってあげたいんです」
「分かりました孝子さん。アンナさんが戻ってきて
どんな態度をとるかですね」
「はい・・・」
そこにアンナが化粧を直して戻ってきた。
アイメイクを濃くすると色白で彫の深いアンナは
一層エキゾチックな顔つきになっていた。
「Beautiful!」
アンナを見かけたロビンが声を上げた。
「こらロビン!」
美佐江は亮の耳を引っ張った。
「綺麗です。アンナさん」
「ありがとうございます。團さん、
私・・・私どうすればいいですか?」
アンナは直したばかりの目に涙を溜めていた。
「僕たちと一緒に行きますか?」
「良いんですか?」
「もちろん、ではこれを飲んでください」
亮は透明にタブレットを孝子とアンナに渡した。
「なんですか?」
「ラブポーション、ガラスの靴がいっぱい届きますよ」
亮に言われると孝子はそれを受け取ると
戸惑うことなく口に入れて
水でのどを通した。
それを見たアンナもそれを飲んだ。
「孝子さん、アンナさん。セレブの人が
たくさん来ると思いますが
臆することなく楽しんでください」
「あのう、團さんは?」
「僕はお客様の相手をしなくてはならないので、
何かあったら連絡をください。
それから、亮と呼んでください」
亮はまだ不安そうな孝子の問いに答えた。
「はい、亮さん!」
孝子とアンナは急に明るい顔になった。
亮は香と真奈美に話しかけた。
「香さん、お父さんは神徳病院の院長ですよね」
「はい、でも最近は患者さんも減ってボロ病院ですよ。
だから看護師も集まらないし」
「なるほど、原因は何だと思いますか?」
「兄たちです。二流医大を出て遊んでばかりいる
から患者も来ないんです」
「だから父は私たちに優秀な医者の婿を
取ろうとしているんです。特に真奈美に」
「二人とも医学部は目指さなかったんですか?」
「私は最初からあきらめていました」
香が首を横に振ると真奈美が笑った。
「私もあきらめて英文科3年です」
「真奈美の方が頭が良くて成績も良いんですよ。
でも私の母が厳しくて父は真奈美に
お金が使えないので
看護師の真奈美のお母さんが
働いて学費を作ってくれるんです」
「そういう訳ですか」
亮は真奈美が夜働いている理由が解った。
「お兄さんはダメですか?」
「はい、研修医2年でうちの病院に戻って
来てしまうので修業が足らないです。
しかも、内科と皮膚科、泌尿器科が専門
だからあまり病院の為にならないんです。
だから経営不振で関西ステート銀行が
管理に入ってしまっているんです」
亮は中途半端な病院の事情に頭を抱えた。
「神徳病院立て直しましょう」
「えっ?」
「先ほど関西ステート銀行が病院経営から
離れたいと言う話を聞きました。
我々が全面支援をしようと思います」
「RRレコード?」
「いいえ、DUN製薬と新橋病院とプレネット証券です」
「團さんはそちらと関係があるんですか?」
「はい、お兄さんたちには皮膚科と
泌尿器科として開業してもらいましょう、
その資金は用意します。皮膚科は美容皮膚科で
AGE(禿治療)を
泌尿器科はED薬の販売をやりましょう」
「それで兄たちは納得するでしょうか?」
「大丈夫です。儲かりますから今まで以上に遊べますよ」
亮は内科には糖尿病に関する薬、美容皮膚に関するクリーム、
ED(勃起不全)に関する薬もDUN製薬が関西地区独占で
販売しても良いと考えていた。
「それなら兄たちも納得するわ」
「そうすれば、最新医療機器、病院の新築、改築が出来ます」




