キャシーの買い物
「ビジネス上問題はないわね。社員の
一恵さんと玲奈さんも雪さんもそうでしょう」
「は、はい」
「警察の美咲さんもね」
「はい」
亮は面倒なのではっきりと答えた。
「うふふ、他には?」
キャシーは亮の肩に頭をもたれかけた。
「知りたいですか?」
「ええ、知りたい。亮の事全部!」
「説明が面倒なのでその都度聞いてください」
「わかったわ、今日のパーティにもきっと来るんでしょう」
「ええと、たぶん」
「楽しみ~」
「何がですか?」
亮は一瞬背筋が冷たくなった。
「私、亮の付き合った女性とお友達になりたいの」
「ふう」
「どうしたの?ため息ついて」
「いいえ、別に」
亮はキャシーが嫉妬でみんなに
何かをするのではないかと心配していた。
「あっ、私が嫉妬でみんなに意地悪をすると思っていたんでしょう。
大丈夫よ、絵里子さんに亮の扱い方のレクチャー受けたから」
「ど、どんな?」
「ナイショ」
キャシーは亮と一緒のいるのが楽しかった。
「亮、買い物に連れて行ってくれる?」
「いいですよ、何を買うんですか?」
「100円ショップとUNICROで洋服を買いたい」
「そんなのどこで調べたんですか?」
「東京ガイドに書いてあるしUNICROはニューヨークでも人気があるわ」
「あはは、さあ行きましょう」
亮は笑いながらキャシーの肩を叩いた。
亮はキャシーを銀座へ連れて行った。
「ここなら100円ショップもUNICROもあります」
亮はキャシーを連れてエレベーターに乗り6階で降りた。
「すごいわ、ここ全部100円なの?カップも
お皿もキッチン用品も素敵!
亮、このナイフ切れる?」
キャシーは100円の包丁を見て不思議そうな顔をした。
「まあ、切れ味は期待しないでください。日本の包丁はよく切れますから」
「日本のナイフはそんなによく切れるの?」
「はい、肉の上に包丁を乗せて指で挟んで引くだけ、自重で肉が切れます」
「本当!」
「はい、日本刀を作った鍛冶師が包丁を作ったんですから」
「じゃあ、ここで買わない方がいいわね」
「もちろん、せめて2000円以上の物にしましょう」
「わかったわ」
キャシーは返事をすると棚上の物を
片っ端から籠の中に入れていった。
「キャシー、買いすぎです!
亮はカゴいっぱいの中の商品を見てそれを止めた。
「ごめんなさい。でもあまりにも綺麗なので・・・」
「いつでも買えますからまた今度にしましょう
「はい」
亮はキャシーにレジの並び方を教えた。
「ねえ、どうしてここ人たちに物を売ってくれるのに
こんなに丁寧なの?」
「あはは、日本の女性のレジはどこに行っても同じですよ」
「どこもね・・・でもとても気持が良かった」
キャシーはレジで頭を下げる仕草がとても心地よかった。
「亮、日本の女性ってみんなあんなに優しいの?」
「まさか、でも物静かなのは確かですよ。
日本には『察する』と言う言葉があります。
相手が物言わずとも何を考えているか、何を求めているか。
それを知ることなのです」
「それは武士道?」
「いいえ、それは『おもてなし』と言います。
確かに、刀を持っている人間同士、
相手がいつ切りかかるかわかりませんから
危険から逃れるために相手の気持ちを推測する
感覚はあるでしょうね。武士道に関しては
新渡戸稲造の英訳した本が有ります。
後で買っておきます」
「ええ、楽しみにしている」
100円ショップで買い物を終え、
大きな袋2つを持った亮は
UNICROにキャシーを案内した。
「キャーフリースの色が艶やか」
キャシーは感激で飛び上がった。
「キャシー、あまり跳ねるとお腹の子に悪いですよ」
「うふふ、そうね」
キャシーは優しく自分のお腹をなでた。
「キャシー本当に日本で生活するつもりなんですか?
何か不便ありませんか?」
「ううん、私のお腹が目立ってきたらアメリカのマスコミは
父親が誰かと騒ぐでしょう。日本に居ればマスコミも来なくて
のんびりできるわ、それに亮が護ってくれるもの」
「そうかマスコミ対策ですか」
亮はキャシーに対して強い責任を感じた。
「私、UNICROを着て少しでも日本人に近づきたいの、
だってお腹の子には日本人の血が流れているんだから」
キャシーが日本に馴染もうとして努力している姿が
愛おしく亮は目頭が熱くなった。
亮は思わず人目もはばからずキャシーを後ろから抱きしめた。
「うふふ」
キャシーは亮の腕から飛び出し店内を歩き回り
商品を選びだした。
しばらくするとキャシーがニコニコ笑って戻ってきた。
「亮、私の日本語が通じたよ。このアンダーウエアとても暖かいんだって、
ケイトの分も買ったわ」
キャシーは買い物カゴいっぱいにアンダーウエアを買い込んでいた。
「わお、大人買い!」
~~~~~
「亮、例の物から覚せい剤反応が出たわ」
買い物を終えた亮のもとに美咲から電話が掛かってきた。
「本当ですか!」
「ケイトの吐瀉物からはSLD反応も出たわ、
直ぐに捜索差し押え許可状を請求する」
「では予定通り」
「ええ、8時に葛原の家宅捜査をして薬物を発見したら
8時30分パーティ会場で葛原を逮捕するわ」
「了解です、よろしくお願いします」
「それと尾田浩二も覚せい剤販売の罪で家宅捜査をして逮捕するわ」
「えっ、証拠は?」
「今朝ロビンが送ってきた動画の中に浩二が
葛原に錠剤を渡してお金を受け取った場面が有ったわ」
「あっ、そうでしたか!動画をチェックしていなかったものですから」
亮は昨夜三雲が撮った映像をロビンが
チェックして美咲に送ってくれた事に感謝した。
「浩二を捕まえて麻薬の入手経路と酒井組との関係を自白させるわ」
「了解です」
「では、今夜」
「うふふ、腕がなるわ」
~~~~~
亮とキャシーは夜の支度のために美宝堂へ行くと
ケイトが千沙子と銀座ファッションショーの打ち合わせをしていた。
「ケイトご苦労様です」
「ううん、久々の仕事で嬉しいわ。
アドバイザーなんて私がやっていいのかしら?」
亮がケイトに声をかけるとケイトは不安そうに答えた。
「もちろんよ、明日から電波広告社でショーのランウェイの設計にも
立ち会ってもらうんだから」
千沙子はケイトの活躍に期待していた。
「姉さん、キャシーのドレスはどこですか?」
「フォーマルドレスのコーナーに何点か用意してあるわ、
キャシーに好きなもの選んでもらって、直しは玲奈さんがしてくれるわ」
「玲奈さんが?」
亮は玲奈と聞いて耳を疑いながら
フォーマルドレスコーナーに行くと松山孝子ドレスを合わせていた。
「あっ、團さん。こんにちは」
「孝子さん来ていたんですね」
「はい、お世話になります」
孝子は申し訳なさそうに頭を深々と下げた。
「玲奈さんすみません」
「いいえ、子供の頃から父の縫製の手伝いをしていたので
裁縫は得意なんです」




