受胎告知
「こちらは警視庁の捜査員が動いてくれますので大丈夫です。
今日は帰ってください」
「了解です」
「もう亮!仕事ばっかり」
ケイトは亮に抱きついた。
「もう大丈夫です。ケイト、ダイエットホテルをやろうと思うんですけど」
「ええっ、何?」
「食事、トレーニング、エステティック付きの3日間の
ダイエットキャンプのためのホテルです。徹底した食事管理、
筋肉トレーニング、有酸素運動、岩盤浴、ヨガ、
オプションでエステティックです。」
「ウフフ、おもしろい、私ウォーキングでダイエットさせて上げる。
どこでやるの?」
「とりあえず、東京から120km圏内の
温泉地です。協力してくれますか?」
「もちろんよ、毎日温泉に入れるなんて嬉しい。
それに日本人モデルを海外に
送り出したい夢もあるんだ」
「忙しいけどよろしく」
「では、もう一発」
ケイトが亮の上に乗った。
~~~~~
それから間もなく酒井組組長の酒井重夫が組員と一緒に
マンションから出て行くと美咲が手配した捜査員が尾行をしていった。
マンションのベッドの上では気を失っているアンナが横たわって
時々痙攣を起こしていた。
「おい、アンナ起きろ!」
浩二が乱暴にアンナの髪を引いた。
「うーん、もっとちょうだい」
「馬鹿!撮影の時から飲みっぱなしだろう。死にたいのか」
「だって、気持ち良いんだもん」
「いいか、この薬は撮影の時、新しい客を作る時、
スポンサーの相手をする時だけだ」
「じゃあ、明日今日一緒に仕事をした道端ゆかちゃんと会うから
ここに連れてくるわ」
「明日は店の仕事があるから店に連れてこい」
「あっ、そうか」
「その代わり今度薬を余分に渡すからな」
「OK」
アンナは亮と会う事を楽しみにしていて
浩二のその事を話すことはしなかった。
~~~~~
翌朝、ケイトが目を覚ましリビングに行くと
亮は出かける用意をしていた。
「もう行くの?」
「はい、サラダとゆで卵が作ってあります」
亮はコーヒーをカップに入れてケイトに渡した。
「相変わらずマメなのね」
ケイトはコーヒーを一口飲むと亮の首に手を回してキスをした。
「そう言えば料理を作るの久しぶりです」
「いいなあ、こういう生活」
ケイトはベランダに出て朝の東京の風景を眺めた。
「用が済んだら戻ってきますからゆっくりしてください」
「私も付いて行っちゃダメ?」
「キャシーが嫌がるでしょう」
「バレないように亮の家の隅っこにいるから、
昨日の今日だから怖いのよ、一人になるの」
ケイトは青い目で亮をじっと見つめた。
「そう言われればそうですね」
「そう、怖いのよ」
ケイトが亮の腕に抱きつくと亮の考えが変わった。
ケイトが神経症でファッションモデルを辞めると
聞いた時から亮はケイトの将来を考えていた。
「分かりました、そうと決まったら急ぎましょう」
亮とケイトは目白の自宅に着くと両親への紹介を程々に
亮は自分の部屋からカメラを持って
ケイトを連れて自宅の隣のテニスコートへ行った。
GパンにTシャツ姿のシンプルなスタイルでも
ケイトの姿は美しく朝日を浴びて光り輝いていた。
「いいぞ、ケイト」
亮はケイトにポーズを指示して写真を何枚も撮り続けた。
「亮、おはよう」
キャシーが爽やかな顔で亮を呼びに来た。
「ケイトの写真を撮っていたの?」
「ええ、いい写真が撮れました」
亮はケイトの写真をキャシーに見せた。
「わあ、素敵!ケイト体の調子大丈夫?」
「ええ」
キャシーはケイトと亮が一緒にいた事を気にせず
ケイトに声を掛けた。
「じゃあ、亮の両親に挨拶しなくちゃ、亮の家に和室あるの?」
「ええ、母が茶室に使っています」
「じゃあそこで」
キャシーは白いワンピース姿で緊張した面持ちだった。
和室に入ったキャシーと亮は秀樹と久美の前に正座をした。
「ハジメマシテ、キャサリン・ランドデス」
キャシーは片言の日本語で挨拶をした。
「キャシー、どうぞ足を崩してください」
秀樹は気を使ってキャシーに言うとキャシーは首を横に振った。
「ワタシハ、リョウノコドモヲ、ミゴモッテイマス。
リョウノコドモヲウムコトヲ、オユルシクダサイ」
キャシーはそう言って両手を付いて頭を下げた。
「えっ!」
秀樹と久美が声を上げた。
「キャシー」
隣に座っていた亮がキャシーの手を握った。
「ワタシハ、リョウニ、ジゴクカラスクッテモライマシタ。
ワタシハリョウヲアイシテイマス。
ワタシハリョウトケッコンデキマセン、デモ、
リョウノコドモヲウムコトヲ、ホコリニオモイマス」
「キャシー」
久美は一生懸命日本語で話すキャシーを
愛しく思って涙を流し抱きしめた。
「私たちもあなたが私の息子の子供産んでくれる事を誇りに思います。
これからも亮をよろしくお願いします」
秀樹もキャシーを抱きしめた。
まるで映画のシーンのような、抱き合う三人の
姿を亮は呆然と見ていて
何をしていいかわからなかった。
「亮、キャシーに何か言ってやれ!」
「はい、イスラム教だったらよかったのに・・・」
秀樹に言われると亮はキャシーに
なんて言っていいか分からず独り言を言った。
「キャシー、ありがとう」
亮はたくさんの意味を含めてありがとうと言った。
「ねえ、キャシー今何ヶ月なの?」
久美がキャシーの体を気遣い聞いた。
「3ヶ月です」
「じゃあ、大事にしなくちゃ。無理しちゃダメよ、
何か有ったらなんでも言って」
「はい」
不良な母親を見て育ったキャシーは久
美の気遣いが嬉しかった。
「ところでキャシー、どうして亮と結婚できないの?」
「えっ?」
キャシーは首を傾げた。
「私達はあなたたちが愛し合っていれば
私達は良いのよ」
「でも、亮の周りには沢山の女性が居るから・・・」
「私は応援するわ、あなたの亮への愛はとても
深く感じるもの」
~~~~~
秀樹はリビングに美佐江、千沙子、マギー、蓮華、桃華、ケイト
を集めてキャシーの妊娠を報告した。
「おめでとうキャシー」
「亮、なんて男だ!妊娠させて」
「姉さん、ちゃんと責任を取りますよ」
「認知だけじゃダメよ」
「わかっていますよ」
亮はばつが悪く首を縮めていた。
「ケイト、そういう訳で私と
一緒に住んでくれないかしら」
「ええ、もちろん。力仕事は私に任せて」
ケイトはキャシーの頼みを快諾した。
亮はみんなが和やかに会話をしているのを確認すると
「おい亮、出かけるぞ」




