ザイルゲーム
亮はザイルの端をベランダの欄干に結んでザイルを下に垂らし、
それをナイトスコープで見た。
「43階から28階に届くには届いたがベランダは2m下か・・・」
「無理だ、ベランダに降りたら戻れないぞ」
ロビンが首を横に振った。
「いいえ、写真を撮るだけですから」
亮は手袋をして片足にザイルを縛り
赤外線カメラを持って欄干を越えた
「亮、何をするつもり」
キャシーが青くなってベランダに出た。
「ちょっと下まで行ってきます。仁木さん、三雲さん、合図をしたら
引き上げてください」
「はい」
亮は頭を下向きにロープを伝って降りて行き
2801号室を逆さまにのまま上から覗いた。
「まいったな、アンナさんの
お相手は浩二じゃなかったのか・・・」
亮が覗いた寝室にはアンナの上に全身に
刺青の中年の男性が乗っていた。
そして隣のリビングには数人の男と浩二が話をしていた。
「亮、そっちの様子はどうだ?」
ロビンは亮が映像を送ってこないので心配して聞いた。
「やばいですよ、一度敵さんのベランダに降ります。
ザイルはそのままにしてください」
「おい、待て!危ないぞ!」
亮はロビンの制止も聞かず足の
ザイルを解き2801号室のベランダの
手すりに足を掛け飛び移った。
亮は腰をかがめコンクリートマイクを
ベランダのガラスの端に取り付け
会話を聞いた。
「浩二、組長はお気に入りのアンナを抱いて大喜びだ、このまま
バイアグラの効果が切れるまでやり続けそうだ」
「それはどうも」
浩二は敬語で返事をした。
「浩二、最近随分売上が良くなったな」
一人の男が浩二の肩を叩いた。
「優弥さんが反対していたホストクラブの客と
AV業界に売れるようになったからですよ
それに上玉を井上さんが紹介してくれたからです」
浩二はそう言って向かいのマンションを見ると
亮は一瞬自分の気づいたかと思って身をかがめた。
「ああ、優弥はAV男優のテクニックで
女優を行かせるものだと言って
最後まで業界で売るのを断っていたな」
「ええ、AV男優が役者だと思っていましたからね」
「しかし、あいつが仲のいい晴田を
殺したとは思わなかったよ」
「自白したんですか?」
「いや、最後まで吐かなかった。
だが空手の有段者の晴田を殺せるなんて
プロレスラーの優弥しかいないだろう」
「そ、そうですね」
浩二は井上に答えると小さな声で呟いた。
「優弥さん、なまじっか強いものだから
抹殺されたんですよ」
~~~~~
「そういう訳か・・・」
亮は盗撮、盗聴を終え欄干を見ると
上からぶら下がっているはずのザイルが
西風に煽られザイルは横に流されていた。
「ロビン、ザイルが風に流され掴めない」
「わかった、ちょっと待て」
ロビンはマンションの周りの地図と天気図を出し
ビル風を解析した。
「三雲。ザイルが何メートル流されている?」
ロビンが指示をすると三雲はベランダからザイルを見て
風速を確認した。
「ザイルが3m東に流されています」
「OK」
ロビンはザイル重さ、長さ流されている距離で風速を計算した。
「亮、風速21ノット後1分35秒後にザイルが元の位置に戻る、
ただしアゲインストの風が吹いているので20cmほど短くなるかもしれない」
ロビンは亮に話しかけた。
「了解、95秒後ですね」
「10秒前にカウントダウンする」
「了解、信じます」
亮は窓に付けたコンクリートマイクを外しポケットにしまい、
欄干を見てカウントダウンを始めた。
そこに浩二と話をしていた井上が帰り支度をしていた。
「ロビン、三雲さんに代わってください」
「ああいいよ」
ロビンは三雲に無線を代わった。
「どうしました?ザイルを引き上げる
準備をしていますけど」
「仁木さんか三雲さんどちらか直ぐに
下に降りて男を追けてください」
「は、はいでも引き上げが遅れますけど・・・」
「大丈夫です、這い上がります」
「分かりました、仁木さんが降ります」
「亮、後10秒だ!」
ロビンの声が聞こえた。
「了解」
亮は欄干の方を向いてザイルが
来るべきところをじっと見つめた。
「5秒前」
亮は体を起こし欄干の方へ小走りで走り
「2」
欄干に右足を掛け
「1」
思い切り地上85mの宙に向かって飛び上がった。
しかし、そこにはまだザイルが戻っておらず
右側1mの所に黒いザイルの影が見えた。
「あっ!」
亮は慌てず自分の体が勢いを
失って落ちていくのを待つと
体は地面に向かって落ち始めた。
亮は体をスピンさせザイルに
手を伸ばした左手でザイルを握った。
昨夜のレスリングで疲れている
亮の左手の握力では落下の勢いを止められず
手が滑り、ザイルがあとわずか
10cmの所で止まった。
それでも亮の体は振り子のように振られ
ぶら下がっているのがやっとだった。
~~~~~
「亮さんが引っかかりました」
ザイルの反動を見て三雲が声を上げ
三雲とロビンがザイルを思い切り引いた。
「私も手伝います」
キャシーがザイルを手に取ると
目の前を黒い影が通過した。
「キャシー、力入れたらダメだよ」
マギーがキャシーからザイルを取り上げた。
~~~~~
「ダメだ、滑る・・・」
亮は引き上げられる為にベランダにぶつかり
右手を添える事ができずザイルの
しっぽが掌の中から抜けていた瞬間
脇に蓮華は降りてきた。
「亮、助けいりますか?」




