審査
紀子はふざけ合う二人を見てため息をついた。
「もちろん出ませんよ。だから週2回のレッスンは
マッスルカーブのスタジオでやるんです。
彼女たちのレッスン風景を見たさにマッスルカーブの
会員になる人が増えるでしょう」
「わあ、完全に見世物にしている」
紀子は亮の言う事に批判的だった。
「そうです、常に人に見られるから背筋を
伸ばして胸を張って歩く、恥ずかしい真似も
だらしない格好もしない。そして美しく成長していくんです、
もちろん公式YouTubeチャンネルを作ってアクセス数、
いいねを増やせば収入があるので十分賄えます」
「なるほど、亮の言うことは説得力あるわ」
めぐみは感心して頷いていた。
「そして、将来はダンスのトレーナーは
アメリカ人なのでメンバーの会話は
全部英語にしていくつもりです。
これから世界に出て行く彼女たちには
英語は絶対必要ですから」
「世界狙っているの?」
「もちろんです、ワールドツアーを目指します、
韓国アイドルには負けませんよ」
亮の夢は大きかった。
「團さん」
亮の居所を奈々子に聞いた真奈美が駆け寄ってきた。
「昨日会ったバニーの柳本真奈美です」
バニーと聞いて紀子とめぐみは真奈美の体をジロジロと見た。
「お姉さんが合格して良かったですね。柳本さん」
「はい、ありがとうございます。
姉はハワイにまで行かせて貰うなんて
夢ようだって言っていました」
「努力の成果です。今度はあなたの番ですよ、
歌を頑張ってください」
「でも、私はモデルと女優志望です。
歌を唄ってどうするんですか?」
「癒しの声、倍音を持っているか知りたいんです。
それなら女優だけではなく
声優、吹き替えの仕事もあります。
吹き替えは演技の勉強になりますから
メリットはありますよ」
「モデルの仕事はどうなんですか?」
「モデルの仕事はあなたの身長は168cm
日本では長身の方ですけど、海外では通用しません。
ハイディ・クラムやタイラ・バンクスやミランダ・カーなど
エンジェルは身長175cmですからね」
「中途半端という訳ですか?」
亮は立ち上がって真奈美全身をジロジロと見た。
「体触りますよ、いいですか?」
「は、はい」
真奈美は緊張しながら
亮に全身を触らせた。
「ふう、猫背、骨盤の矯正であと3cm伸びます。
それが安定するように筋トレが必要です。
それと全体の脂肪の付き具合が少ないですね
特に胸が小さいのでまだまだ成長する
可能性がありますよ」
真奈美が目を輝かせて亮の顔を見ると
「ねえ、有名になりたかったら亮と寝ればいいのよ」
紀子がライバルが増えたと感じ冷たい口調で口をはさんだ。
「えっ?」
真奈美は紀子に言われ亮の顔を見て顔を赤くした。
「柳本さん、ご存知と思いますがこちらがタレントの金子紀子さん、
そちらがグラビアアイドルの内田めぐみさん、二人とも僕の友人です」
真奈美は二人に深々と頭を下げた。
「今まであのお店で色々なお客さまに
声をかけられましたけどこんなに具体的な方と
お会いするのは初めてなんです。
いつもプロデューサーを紹介するとか寝たら
スターにするとか。團さん私でよかったらいつでも何回でも・・・」
真奈美は亮の発するフェロモンで
本気で抱かれても良いと思っていた。
むしろそんな事無しで亮に抱かれたかった。
「金子さんの冗談ですよ、仕事とエッチを
交換するなんて最低の事をしませんよ」
亮が答えると身に覚えのあるめぐみは
顔を強ばらせうつむいたままだった。
「さあ、三人とも歌を唄うなら少し
発声練習でもしてください」
亮は三人を押し出した。
「ちょっとめぐみさん」
亮はめぐみの手を引いた。
「なに?」
めぐみはいきなり亮に手を握られて胸が高鳴った。
「めぐみさんに何か有ったかは予想がつきます。
以前の時のように深みにはまる前に僕に相談してください」
「でも、亮忙しそうだから・・・」
めぐみは目に涙を浮かべた
「大丈夫です。メールでもLINEでも
skypeでも連絡は取れます。
気にしないで連絡ください」
「ありがとう」
亮は深刻な様子のめぐみを気遣い
めぐみを抱きしめて囁いた。
「大丈夫です。僕は必ずあなたを護ります」
「うん」
「頑張ってください」
亮はめぐみにハグをして前に押し出した。
亮が再び審査員の席に着くと美也子が亮のもとに来た。
「亮、こちらは三人が音大の声楽科、
一人がピアノ科出身、きっとうまく行くわ
平均年齢28歳だけど」
「良いですね。そこそこの出来だったら
本格的にレッスンをしてデビューまで持ち込みます。
話題性がありますからマスコミを利用しましょう。
グループ名は?」
「まだ決まっていないわ。歌は当然演歌よね」
美也子はぴったりしたグループ名が思い浮かばなかった。
「いいえ、レベルの高い彼女たちには
ゴスペルを唄ってもらいます。水商売イコール演歌を
払拭しましょう」
「ゴスペルって面白いわ。
今日はケルティック・ウーマンの
ユー・レイズミー・アップ歌うそうだけど」
「ありがとうございます僕の好きな歌です、
ではそろそろ始めます」
「わかった、頑張って!」
美也子は跳ねるように亮から離れ近くの客席に移った。
亮が手を上げるとホールが暗くなり歌手志望の女性たちが
次々に歌い始めた。
亮はヘッドフォンを耳にかけオシロスコープを
見ながら歌声を聞いて倍音を確認していた。
オーディションが終わりホールが
明るくなると亮はマイクを取った。
「ユー・レイズミー・アップを唄った
仮称Gウーマンは合格です。
ゴスペルを中心にレッスンして
12月はここでクリスマスソングの
ライブを行います。朝倉美代子さんと
潮田佳代子さんは条件付き合格、
大学受験不合格の場合こちらも不合格です」
亮が言った途端二人は人差し指と中指を立てて手を振った。
「大丈夫、推薦でもう合格しています!」
「ああ、そうですか。おめでとうございます」
亮は会釈をした。
「三瓶美菜子さんも条件付き合格です。
あなたのユニット相手の病気が回復したら
デビューです」
「誰ですか?」
ステージでは飛び上がって喜ぶ美菜子をよそに、
奈々子は突然亮言ったので聞き返した。




