あやめの方向
亮は暗鬼の秘密を二人に話さなかった。
「なるほど、でも家持の手首の痛がりが
尋常ではなかったのですが」
「あれはアメリカのニューヨーク市警も使っている
犯人逮捕用のペイン弾の成分を使っていて
手首のベルトに染み込ませたのよ」
マギーは亮が発明した物を自慢げに三雲に言った。
「ペイン弾ですか?」
「主成分はにんにくのアリシンだから体に害がありません。それより
明日の朝はビンビンに元気になっていると思いますよ」
「アリシンってそんなに痛いんですか?」
三雲は自分で自分の手首を痛くなるほど
握り締めた。
「強化されていますからかなり痛いですよ、試してみます?
粘膜やチンコに塗ったら大変な事になりますよ」
「い、いいえ。結構です」
亮に言われて三雲は慌てて首を横に振り
亮がどんな人物か興味が湧いてきた。
「亮、ホワイト総業と本気で取引をするつもり?」
「どう思います?仁木さん」
「やはりヤクザの資金源になる企業とは取引したくないですね」
「そうですよね、やめましょう!」
亮は簡単に決断をした。
「いいんですか?問題起きませんか?」
「面白いから問題を起こしましょう。
二人でホワイト総業を徹底的に調べてください」
「了解、ファーストミッションですね」
仁木と三雲は目を輝かせた。
亮は飯田に電話を掛けホワイト総業の入江の事を話した。
「なんだって、入江が妨害をやっていたのか?」
「はい、入江を知っていますか?」
「ああ、昔は自分でおしぼりを洗って
軽トラックで配達していたんだが、
いつの間にか山田組に取り込まれたんだろうな。
うちの店も取引を止めるか」
「飯田さん、そんな事をしたら飯田さんの店もやられます」
「しかし、入江は許せない!」
飯田は亮に危害を加えようとしている入江が許せなかった。
「僕が何とかします」
「どうするつもりだ?」
「我々の手でランドリー会社を大きくするんです」
「どうやって?」
「60度~90度以上の熱湯洗濯と真空乾燥で洗濯をして
薬品を使わず完全滅菌のおしぼり、タオルにします。
薬品に弱い病人、老人の為に病院、老人施設に営業します。
病院関係はDUN製薬にお願いします」
「燃料代で高くつくぞ」
「それはバイオ燃料のB級品で作ります」
「なるほど・・・やるだけやってみると良い、資金と土地の提供など
私はどんな協力でもする」
亮は飯田との電話を切った
~~~~~
亮は美咲に電話を掛け家持が入江に命令された事を伝えた。
「あら、ホワイト総業が黒幕だったんだ」
美咲の声は明るかった。
「はい、それで家持を使って妨害工作をしたそうです」
「うふふ、直接ホワイト総業と話をした方が良いわよ。
フロント企業は警察に目を付けられるのが
嫌がるから、組本部に父の名前を出したら大騒ぎよ」
「まあ、黙秘していても逮捕された二人は起訴されるから
それなりの罰は受けてもらいますが陰で指示してのうのうと
生活をしているのが許せないだけです」
「わかったわ。黙秘しても放火と業務威力妨害の
罪で検察が起訴するから
二人に罪を償わせる」
「了解です。お父さんに動いてもらうのは
最後の手段にとっておきます」
亮は自分の力でホワイト総業に報復をしようと思っていた。
~~~~~
「二木さん熊田弁護士の方も忘れずにお願いします。それから
マギー二人に必要な物を全部揃えて上げてください」
「了解」
マギーは運転している仁木と後ろにいる三雲と握手をした。
亮はそのまま錦糸町から銀座に直行し金子紀子のいる
ルーセントホテル銀座のスイートルームのチャイムを鳴らした。
「はーい」
聞きなれた声と共に中城あやめが顔を出した。
「お疲れ様、亮。みんなで飲んでいるよ」
「えっ?」
亮は部屋の中を覗くと紀子と梓沙が
体を寄り添わせワインを飲んでいた。
「亮、お帰り」
亮に気づいた紀子が酔ってフラフラの手を降っていた。
亮は紀子に近づき耳元で囁いた。
「紀子さん、どうしたんですか?」
「彼女たち帰らないのよ。それで梓沙さん支払うという事で
ベッドルームが2つあるこのスイートルームにしたのよ。
ああ亮に抱かれたかったわ」
「ではエッチは近いうちと言う事で寝ます」
亮は酔っ払った女性の相手をするのが嫌だった。
「ダメよ、今度は亮が梓沙さんの相手して
亮の事話しちゃったから。私明日仕事が有るから先に寝るわ、
それから、近いうちと言う言葉は1週以内だからね、どこかの政治家みたいに
騙さないでね」
「もちろん了解です」
紀子はそう言い残してバスルームに行ってしまった。
「亮、私たちを騙していたのね」
梓沙が不機嫌に亮に迫った。
「さっきは仕事だったので仕方ありません」
「そうじゃあ、今はプライベートね」
梓沙は亮の肩に手を回ししつこいほど亮にキスをすると
泥酔していた梓沙はそのまま寝てしまった。
「あっ、寝ちゃった?」
中城あやめは梓沙の顔を覗き込んだ。
「その様です」
亮は梓沙を抱き上げてベッドルームに運んで眠らせた。
「さて、あやめさんも寝るといいですよ、僕はこのソファーで寝ます」
「あの、亮さん。もう少し話をしませんか」
中城あやめは真面目な顔で亮に話しかけた。
「何でしょうか?」
「私、疲れました。こんな馬鹿な役」
中城あやめの話し方が急に丁寧になっていた。
「バラエティ番組はブサイクな芸人とオカマが大きな顔をしているし
クイズ番組はいつも同じ問題ばかり
3回も出演すればどんな馬鹿でも
答えがわかるって言うの」
「あはは、確かにおっしゃる通りです。
中城あやめさんはワザとあんな態度を取っているんですか?」
「そうです。目上の人にタメ口なんてきいたら両親に叱られます」
「大変ですね、日本の芸能界は」
「芸能界は嘘と虚像の世界、視聴者に夢を与える
仕事とマネージャーが言っていました」
「出演者がバカをして視聴者は夢をもらえませんよ。
もっとファッションモデルにウエイトを置くべきです」
「でも身長169cmじゃあ、世界に通じるモデルにはなれないわ」
「別に世界に通じなくてもいいですよ。日本だけで、デザインの勉強は?」
「本格的にはした事がない、おぼろげに色の組み合わせとか
コーディネートをしているけど理論的には何も言えない。
モデルの何人かはブランドを立ち上げているけど
実際は何もしていないと言う噂だし」
中城あやめ手を広げ首をすくめた。
「そうですね。デザイナーはそんなに簡単な物ではないです。
カラーコーディネート、洋裁の勉強もしなくてはなりません」
「そうか・・・大変なんですね」
中城あやめは自分の未来が閉ざされたような気がして
すっかり落ち込んでしまっていた。
「勉強すればいいじゃないですか、周りのモデル達が乗りでデザイナーを
やっているなら本格的でやればいい。後で差がつきますよ、
そしてせっかくの語学力も利用すべきです」
「みんな私の顔を知っているから今さら専門学校なんて行けない」
「カラーコーディネートは独学で充分、
洋裁はうちのアトリエで勉強をすればいいですよ。
アクセサリーの勉強は宝石専門学校の講師を
やっている姉美佐江にコーディネートはスタジオDの
姉千沙子に弟子入りしてください」




