暗鬼
「おっと危ない」
亮と三雲が家持の腕を抱えて歩き出すと
仁木がその前に大型バンを止めスライドドアを開けた。
亮と三雲は酔っぱらいを介抱する様に
家持を車の中に乗せ素早く家持の目に目隠しをした。
「車を出してください」
「了解!」
仁木は何事もなかったように車を滑るように走り出させた。
「薬の量は?」
「2cc、体は動かないけど意識はあるわ」
助手席に乗っていたマギーは亮の問いに答えた。
三雲はあまりのも早いマギーの動きにあっけにとられていた。
「R、どちらに向かいますか?」
仁木は家持に知られないように亮のイニシャルで呼んだ。
「家持さんを自宅に送り届けましょう」
亮は家持の右腕に黒いベルトを巻いた。
「誰だお前達・・・俺を誰だと思っている」
家持はもつれた口元で声を出した。
「家持三郎さん53歳。奥さんは芳子さん44歳。
息子さん晋太郎さんがW大学経済学部3年生
20歳スキー同好会で今年の新歓で
集団暴行をしたらしいな。圧力をかけて
被害届を抑えているんじゃないか。お娘さん、
典江さんは池袋のT高校3年、
今年は受験生ですね。でもあなたの知らない所で
男と川籐君と付き合っているようですよ、心配ですね」
亮は森たちが調べ上げた情報を家持に伝えた。
「そんな事いつの間にそんな情報を・・・」
家持は娘の典子の男女交際の事は知らなかった。
「人間は生きてい限り形跡を残すんですよ。
あんたの情報なんて3日もあれば
右ケツのほくろから初体験の女、
娘さんの湯上りの写真から息子の
エッチの最中の写真まで撮ることができる」
「ふん、そんな事できるわけがない」
目隠しをされている家持は亮の声が
何者が分からず恐怖で
体が硬直していた。
「お前は千葉と立花にマッスルカーブに
火を付けるように命令したな」
「な、何の事だ」
家持は知らない素振りをした。
「あんたが手を出したマッスルカーブの
本当の経営者の事を知っているか?」
「そんなもの、知らん」
「アメリカのマッスルカーブのCEO
ブルーノ・ジャックマンはアメリカ大統領の側近で
アメリカの軍隊のトレーニングをしている。
彼の一言で日本駐屯のアメリカ軍が動く。
そして暗鬼も」
「暗鬼、な、なにの話だ?」
「メキシコの麻薬王、エミリオ・ゴメスが殲滅され
たのは暗鬼がやったんだ」
「そんな事は初めて聞いたぞ!」
「その日本のマッスルカーブのオーナーは
劉亮、暗鬼のナンバー2だ」
「えっ、暗鬼が」
「この世界で生きている人間なら中国の
暗鬼の名前を聞いたことがあるだろう」
亮が言い終えると家持はブルブルと体を震わせていた。
「そんな馬鹿な!闇の暗殺集団暗鬼が本当にいるなんて」
「それが本当にいるん
だよ。そして暗鬼は暗殺だけじゃなく
拷問が得意なんだ」
亮が黒いベルトを握ると家持の体に激痛が走った。
「ああ・・・うう・・・痛い!やめてくれ!」
「千葉と立花に命令したのはお前だな」
「ち、違う!俺じゃない」
家持は痛みをこらえながらやっとの思いで答えた。
「入江社長を裏切れないという訳だな、
裏切れば命がないからな、
しかしこのままでも命はなくなるぞ。
ただ暗鬼は楽をさせて死なせはしない
しかも、暗鬼は一族全員を殺す。
お前の妻も息子も娘もそして愛人に作った
2歳の息子も俊夫も」
「やめろ、やめてくれ。子供たちには関係ない」
亮はそう言って家持を追い詰めていった。
「関係あるだろう、お前が悪い事をして稼いだ金で
生活しているんだ」
「止めてくれ~」
「いいか、千葉と立花が警察で自供した」
「そんな馬鹿な!奴らが言うわけない」
「なぜ、そう言い切れる?」
亮が黒いベルト握ると家持は痛みに
耐え兼ねて体を仰け反らせた。
「ぎゃー」
「答えろ!もう一度痛い思いをしたいか?」
「ち、千葉と立花には家族の面倒を見ると
言って約束して口止めしてある!」
「命令したんだな」
「ああ、そうだ。入江社長に金をもらって
マッスルカーブの営業を妨害したんだ。
頼む家族には手を出さないで欲しい、頼む」
ぐったりとした家持は亮に頼んだ。
「1つ解決法を教える、今から自首を
して入江との関係を明かすんだ。
そうすれば我々は何もしない」
「そんな馬鹿な事できるわけない、
入江は山田組の本部と繋がっている。
ホワイト総業は山田組を使って企業、ホテル、
飲食店に圧力を掛けて仕事を取っているんだ」
「やはりホワイト総業は山田組のフロント企業だったのか」
「そうだ、だから俺は絶対警察出頭できない、
それこそ刑務所の中で殺される」
家持は今、亮に拷問を受けている恐怖より
山田組の恐怖の方が強かった。
「わかった、これで十分だ。家に返す」
「えっ、許してもらえるんですか?」
「マッスルカーブはホワイト総業と取引する、それでいいだろう」
「あ、ありがとうござます。マッスルカーブにもう手を出しません」
目隠しされたままの家持は薬で不自由な体で一生懸命礼を言った。
亮たちは家持を錦糸町の駅近くの公園に放り出し去っていった。
「あのままで良いんですか?」
仁木が亮に聞いた。
「家持がホワイト総業の指示でマッスルカーブに
妨害をかけたのが分かりました。
我々の敵はホワイト総業です。
ただ息子の集団暴行は許さない。息子は逮捕する」
「そうですね。ところで亮さんヤクザが
怖がる暗鬼って何ですか?」
三雲は首をかしげて亮に聞くとマギーは
後ろを振り返って亮の顔を見た。
「暗鬼は証拠を一切残さない中国の暗殺集団で、
もう消滅したと言われた闇の組織が表舞台に立ったのが
1997年7月1日のイベント出席の為に主席をはじめとする
多くの首脳陣の警護のために暗鬼が
世界中の闇組織に通達したのです。
『首脳陣に手を出したら孫子の代まで皆殺しにする』とそして
今なおヤクザの中では実しやかに
暗鬼は存在すると言われているんです」
「我々の祖先の忍者みたいな話しですね」
亮が三雲の問いに答えると仁木は忍者がやっていた
諜報と暗殺の仕事を思い浮かべた
「三雲さん、安心してください。
暗鬼はただのハッタリです、経営者は僕で
影のオーナーはいません。
もっとも家持は目隠しをしていて
恐怖心を持っていたのでこっちの言った事を
信じたかもしれません」




