梓沙の思い
「はい、れっきとしたプラネット証券の証券マンですよ」
プラネット証券の社長の亮は梓沙に嘘をついてはいなかった。
「でもプラネット証券って聞いたこと無いわ」
「できたばかりの新しい証券会社でネット取引がメインです」
「じゃあ、今度パパにも紹介するわ、芸能人は
いつ仕事が無くなるかわからないので投資顧問に
お金を預けている人が多いのよ」
「そうなんですか、芸能人って大変なんですね」
亮は明日仕事がなくなるかもしれない
俳優女優が気の毒に思えた。
「ええ、特にアメリカの一流の俳優は
日本のようにテレビに出て小遣い稼ぎを
しないから演技だけじゃなくてお金作りもうまいのよ」
「なるほど、ぜひお父さんを紹介してください、
損はさせません」
亮は手を付いて頭を下げた。
「うふふ、分かったわ」
梓沙は頭を下げた亮を見て機嫌が治っていた。
「ねえ、梓沙さんも銀座ファションショーに出ればいいのに」
「そうよ、背が高くてスタイルもいいからモデルができるわ」
中城あやめと紀子が梓沙を誘った。
「ダメよ、私はウォーキング全然できないから、私に言わせると
日本のモデルはウォーキングが下手だから自信が無い」
ニューヨークで沢山のエンターテイメントを見てきた
梓沙の言った事は厳しかったが、
確かにガールズコレクションに出てくる
モデルのウォーキングは見られたものではなく、
本来服を美しく見せるべき
モデルがそれを怠っておりとてもレベルの低いものだ。
世界のファッション業界から見れば日本のファッションと
呼ばれるものは大量生産の既製服でしかない。
それを梓沙はよく理解していた。
「確かにウォーキングは下手です。
もっとトレーナーが必要ですね。
それにモデルさん達の体も鍛えないと歩く姿が美しくない」
亮の言葉に梓沙と紀子が頷いた。
「私は?」
中城あやめは自分の顔を指差した。
「あやめも体幹を鍛えた方がいいわ」
「ああ、そう」
中城あやめは梓沙に言われて肩を落とした。
「トレーニングのご用命はマッスルカーブね」
紀子は亮の顔を見て笑った。
「ところで、紀子さん例のチョングシャンプーは?」
「はい、これよ」
亮はそれを受け取ってキャップを開けて匂いを嗅いだ。
「チョングシャンプーの香りじゃない」
亮は自分の思い過ごしにホッとした。
「あら、これ私が見たチョングシャンプー
じゃないわ。2万円のシャンプーは
ボトルが黒かったわ」
亮と紀子のやり取りをのぞき込んでいた
中城あやめがボトルを指差した。
「えっ!」
亮の脳裏には麻薬の入った違うチョングシャンプーが
裏で流通していると言う恐ろしい考えが浮かんだ。
「あやめさん、その黒いシャンプーの入手方法を調べてください」
「了解、なんかボトルの形がセクシーだった」
「ねえ、ひょっとしたらコカコーラの瓶みたいな形?」
紀子は黒いボトルを思い出していた。
「そうそう、ナイスバディ」
「そうか・・・亮ちょっと」
紀子は亮の手を引いてトイレの脇に連れて行った。
「どうしたんですか、紀子さん」
「亮、どうしてチョングシャンプーにこだわるの?」
「実はチョングシャンプーに麻薬成分が
入っている可能性あるんです」
「そうか亮がむきなるわけね、私そのボトル見た事があるわ」
「どこで?」
「私・・・」
紀子は目に涙を浮かべていた。
「どうしたの?」
「私を亮に嘘をついていた、ごめんなさい」
「な、何を?」
亮は苦しそうにしている紀子の言葉を聞いて
心臓をドキドキさせ、紀子を腕の中に抱きしめた。
「ねえ、抱いてくれませんか」
「抱いていますけど・・・」
「違う、アッチの方」
怒った紀子に亮は思わす背筋を伸ばした。
「は、はい!」
「私ね、服にワインをかけられて葛原の部屋の
バスルームに入ったの
別にその気はなかったんだけど」
「誰がワインをかけたんですか?」
「葛原」
「なんか怪しいですね」
亮は出会った時より大人で美しくなった
紀子がとてもセクシーに見えた。
「それでね、葛原のバスルームに有った
黒いボトルのボディシャンプー
で体を洗ったら体中が火照りだしておかしくなって、
そこに葛原がバスルームに入ってきて
私の体に泡を付けて撫で回したの、
それが気持ちよく拒みきれずに・・・」
「それがひょっとしたら例の
麻薬入りチョングボディシャンプー」
「ええ、そんな気がする。普通
だったら私拒んでいたはずだもの」
「葛原は卑怯です。薬物を使って女性を抱くなんていくら
金持ちでも許されない事があります」
亮は葛原の行動を見てICカードスキャナーに
絡んでいると確信した。
「そう、卑怯者よ!それに犯罪だし」
「じゃあおまわりさんに捕まえて貰って
紀子さんの復讐をしましょう」
「そうして!」
「じゃあ、紀子さんは葛原逮捕の瞬間をスクープ」
「うん、ありがとう」
紀子は亮の首に腕を回した。
「でもその様子想像すると興奮しますね」
「じゃあ、抱いてくれるのね。いつ?今夜?」
亮に興奮すると言われ紀子は
亮に直ぐに抱かれたかった。
「2時から6時までなら・・・」
「良かった、私の事嫌いになったかと思った」
「いいえ、好きですよ」
「私も大好きよ亮!」
紀子は亮に抱きついてキスをすると
亮は紀子を抱き上げた。
「キャッ!」
亮は紀子のおかげで優弥の殺人事件から
ヒルズ族そしてICスキャナー事件まで
繋がった事にほくそ笑んだ。
「どうしたの?」
梓沙は戻ってきた亮と紀子が気になっていた。
「ううん、亮に頼んである事で聞きたい事が有って」
「紀子さんも亮に財テク頼んでいたの?」
「ええそうよ」
紀子は梓沙に答えて亮の方を向いて笑った。
「はい、お預かりしています」
亮は丁寧に頭を下げた。
「亮、父の空いている時間に会って、父が気に入れば
他の俳優さんも紹介してくれるはずよ。
そうしたら借金返せるでしょう」
「ありがとうございます」
亮は借金の心配をして入れる梓沙に嘘をついていることを
心苦しく思った。
「亮さん、お客様が見えています」
亮が向かいの席に目をやると
飯田が座って亮を見ていた。
「あはは」




