金子紀子と二人
「新宿の歌舞伎町ですけど」
「あっ、誰かと飲んでいるんでしょう。お邪魔かしら?」
「いいえ、ちょっと仕事で・・・」
亮はホストクラブで働いているとは言えなかった。
「恵比寿からタクシーで2~30分で行けるわ」
「済みません、わざわざ」
「ちょっと相談が有ったから10分くらい
話せるでしょう。すぐ行くから待っていてね」
紀子は亮の返事を待たずに電話を切った。
「やばい、急がないと・・・」
亮は景子を帰して紀子との時間
10分を作らなければならない事を
考え景子のいる席に戻った。
「景子さん、明日会えますか?」
「ええ、夜ならでも土日はここ休みでしょう」
「そうですね、じゃあダメか・・・」
「お店じゃなくてもいいじゃない。お礼はするわ」
景子は亮とやる事だけを考えていた。
「でも店外は・・・」
亮は景子をじらしてみた。
「うふふ、意外と真面目なのね」
「分かりました。明日の夜に」
「約束よ、破ったらただじゃ済まないわよ」
景子は意味ありげな笑い方をした。
「大丈夫です。約束は守ります」
「じゃあ、明日8時に店に迎えに来て場所は知っている?」
景子はHIT新宿西口支店長の名刺を亮に渡した。
「都庁の前ですね、園田景子さん」
「そうよ、海外旅行は良く行くの?」
「ええ、海外遠征にこの前はハワイに
行ってきました」
「そうか、うふふ」
景子は翌日亮と会える事と期待して機嫌よく帰って行った。
亮は景子を店外まで見送ると梓沙のいる席に戻った。
「やっと、帰ったわね」
亮を指名していた景子が帰ったので喜んでいた。
「済みませんね、客商売なので」
「わかる~」
中城あやめが頷いていた。
「ところであやめさん、金子紀子さん知っていますか?」
「うん、知っているよ。仕事で時々合うけど
出演者やスタッフにも人気があってすごくいい人よ。
ファンなの?サインもらってあげようか?」
亮は中城あやめと紀子が仲が悪かったら
話をするのをやめようと思っていた。
「私も、クイズ番組で一緒になった事があるわ、
彼女はMCだったけど」
梓沙も紀子を知っていた。
「でも、昨日仕事で一緒になったけど元気がなかった」
あやめは首を傾げた。
「そうですか」
亮は紀子の相談という話が気になっていた。
亮は梓沙と中城あやめの話を聞いていると
近くに車を止めた紀子から電話がかかってきた。
亮が店を出てゴジラビルの前で紀子は
人目をはばからず亮に抱きついた。
「ああ、亮。やっぱり亮だわ」
「どうしました?紀子さん」
「先週、プロデューサーの紹介で会った男にやられた」
「本当ですか?相手は?」
亮は紀子の話を聞いて嫌な予感がした。
「ピーエヌエーの葛原圭介、ヒルズに住んでいる」
「あのピーエヌエーの社長ですか?」
「うん、パーティでお酒を飲まされて
気がついたら裸で寝ていた」
亮は歩きながら紀子の顔を見ると
目に涙を浮かべていた。
「それは許せませんね。誰かに相談しました?」
「ううん、誰に相談したって芸能界は
そんなものだとしか言われない。
プロダクションだって護ってくれないし、
体を売ってまでするなら
タレントなんか辞める」
「気に入らないな・・・」
亮は抑えようのない怒りがこみ上げてきた。
「亮が自分のところのタレントが
そういう目にあったらどうする?」
「女の子の気持ち次第ですけど、睾丸をペンチで潰すかも」
「あはは、亮私を護って!お願い!」
紀子はそう言って人ごみの中で亮に抱きついて離れなかった。
通行人は人気タレントの金子紀子気づき
スマートフォンで写真を撮り始めた。
「紀子さん、やばいですよ。これがSNSにでも乗ったら
スキャンダルですよ」
「いいよ、亮とならどんなに話題になったって平気だもん、
それにスキャンダルって醜聞って
書くんでしょう。ちっとも醜くないわ私たち」
「なるほど・・・実は僕はいま調査で
ホストのアルバイトをしているんです」
「ええっ!またあ」
紀子は呆れて声を上げた。
「はい、済みません」
「いいわ、売上に協力する。行こう」
「ああ、それが和田梓沙さんと中城あやめさんが
お店に来ているんです」
「えっ、亮は彼女たちとも知り合い?」
「いいえ、たまたま今日付いたお客様です」
「それが亮の運のいいところね。さあ行こう」
「シャンプーは?」
「もちろん持ってきたわ」
紀子は嬉しそうに亮の腕に手を回した。
「い、らっしゃいませ・・・」
亮が紀子を連れて『恋』に入るとホスト達が人気タレントの
金子紀子を見て唖然としていた。
「あっ!あやめちゃん」
あやめを見つけた紀子があやめのところへ行った。
「ああ、金子さん」
あやめは立ち上がって紀子と両手を合わせた。
「金子さんもこっちへいらっしゃらない?
料金は私がお支払いするわ」
梓沙は亮に紀子を独り占めされるのが嫌で紀子を誘った。
「そうね、その方が賑やかでいいわね」
紀子は嬉しそうに席に座った。
「まじか~」
亮は梓沙と紀子がどんな会話をするか
想像するだけで寒気がした。
「ねえ、亮とはいつ知り合ったの?」
梓沙は間の亮を越しに紀子に聞いた。
「私がデビューしたばかりの時よ、色々とお世話になったし
仕事も紹介してもらった」
「仕事?」
梓沙は証券マンの亮がどんな仕事を
紀子に紹介したか不思議だった。
「スタジオDのポスターの仕事とか
ファッションショーのレポーターの時
シンディたちの独占レポートさせてもらったわ。
あの時が私のバーニングポイント」
「あっ、それ銀座ファッションショー?」
「そうよ」
紀子は中城あやめの問いに答えた。
「私、今年のショーに出演するのよ!」
「私はMC!」
中城あやめと紀子の話しが合って二人がはしゃいでいると
ますます梓沙の機嫌が悪くなった。
「亮って証券マンじゃないの?」
紀子と中城あやめがファッションショーの話題で
話に花を咲かせていると梓沙が亮に聞いた。




