幻の捜査員
「仕方ないじゃない、飲み代は男が払うものよ」
桃華が当然のような言い方をした。
「そうね、女性の方が誘ったといえど美人二人と
一緒に飲んだんだから桃華さんの言うのが正しいと思うわ」
「領収書を俺にくれ経費で落とす」
森が美咲の話に続いて言った。
「ところで、千葉の奥さんはどうなりました?」
亮は四人の揉め事に笑いながら仁木に聞いた。
「まだ紹介していなかったわね。ここのボス團亮さんよ」
美咲が亮の名前を言うと仁木と三雲は体を硬直させ
腰を90度に曲げ頭を下げた。
「仁木章介です」
「三雲文太です」
「團亮です。よろしくお願いします」
物腰が柔らかでしかし全てを見通しているような
澄んだ目の亮に一瞬で仁木と三雲は
自分のボスになる男だと感じ取った。
仁木はまず自分が何をすべきか感じ取り
報告書を読み上げた。
「カウンターの千葉の女房と家持が
話しをしているのを録音しました。
『旦那のいない間、あんたと娘は
俺が責任もって面倒見てやるから
心配しなくていい』と言っていました」
「やはり接触していたか・・・」
森が頷いていると蓮華が続きを話した。
「良い弁護士もつけてやると言っていたわよね」
「聞いていたのか?」
「だって捜査対象が一緒だもの」
「あはは、いい仲間ができたみたいですね」
亮は日本に蓮華と桃華に友達がいなくて寂しいのではないかと
気にしていて、そこに仁木と三雲が現れたことは
活動に覇気が出ると確信した。
「そうそう、二人ともイケメンじゃない」
アベンジャーズのスカーレット・ヨハンソンや
ワンダーウーマンのガル・ガドッドのような
ナイスバディのマギーが言うと仁木と三雲の視野が
次第に広がって行き周りが美しい女性
ばかりだった事に気づき二人は赤面して1歩下がった。
「それで立花の家族は?」
森が聞くと三雲が答えた。
「立花は大阪出身で東京には身内は全くいません」
「前職は?」
「不動産の地上げ屋だったようです」
「違う、立花の部屋には時々女が来ていたわ」
蓮華が三雲の答えを否定した。
「なんだ?」
「調味料にフィリピンの醤油トーヨとナンプラーと
パティスもあったわ。
錦糸町は外国人向けの食料品店が多いのよ。
だからフィリピン人の彼女が居たみたい」
「な、何故それを知っている?」
仁木が蓮華の顔を睨みつけた。
「そ、それは・・・」
蓮華が答えあぐねていると亮が代わりに答えた。
「蓮華たちは立花の部屋に入って調べたんですよね」
「えっ、それって住居侵入じゃないですか!」
仁木と三雲が驚いて警察庁の警視、美咲の顔を見た。
「あら何?私はプライベートでここに来ているから
関係ないわ。それに入った証拠が無いし・・・」
美咲が顔を横に振った。
「まじか~」
仁木が驚くと亮が笑って言った。
「まあ、いいじゃないですか。犯人が捕まれば」
亮は自分たちは原巌警視庁警備局局長が認めた
超法規的組織とは言えなかった。
「分かりました、その相手の女がわかったんですか?」
三雲が蓮華を疑って聞いた。
「うん、わかったわよ。多国籍キャバクラフォリナーの
イザベラ、来週帰国するんだって」
「よく調べたなあ」
森が感心していた。
「うん、私たち体験入店でお店に潜入したから。
そしたら本田がお店に来て
イザベラにお金を置いていったそうよ」
「本田がイザベラを口説いているのか?」
「ううん、それが立花が捕まったので早く帰国しろって」
「それって、イザベラの面倒を見るから
警察に話しをするなという意味じゃない」
雪はヤクザが使う常套手段を知っていた。
「なるほど、これで家持が立花と千葉を
口止めしていることが分かりましたね。
家持に僕が直接聞きましょうか?」
「えっ、それは危険です」
亮の無謀な話に仁木が驚いて言った。
「別に大丈夫ですよ、仁木さん。三雲さん
家持の居所を僕に報告してください、
午前1時頃会います」
「わ、分かりました」
仁木と三雲は渋々亮の指示に渋々答えた。
「蓮華、桃華、マギー引き続いて
絵理子さんをガードしてください」
「了解。でも大丈夫、その二人で?」
蓮華は仁木と三雲をあまり信用していなかった。
「何がダメだって言うんだ!」
仁木が蓮華に馬鹿にされて怒り出した。
「だって戦闘の実戦経験無いんでしょう」
「実戦って・・・しゅ、出動は何回もしているし
毎日訓練はしていたんだ。文句あるか?」
仁木は蓮華の前に立ちはだかった。
「仁木さんたちは仲間なんだ。争ってどうする?」
亮は二人の間に止めに入って仁木に謝った。
「仁木さん済みません。蓮華と桃華は血の気が多くて」
「い、いいえ」
「マギーと蓮華と桃華は中国で訓練を受けて
何度も実践を体験しているんです」
「そんなに若いのに?それにマギーさんも?」
仁木は警察で毎日訓練を受けていたが、実際に
人に向かって発砲をした経験がないどころか
敵と戦った事も無かった。
「はい、三人とも傷だらけです」
亮が言うとマギーはピストルで撃たれた脇腹の銃槍を
桃華は矢で切った腕を見せた。
「それは・・・すみませんでした」
仁木は二人の傷を見て頭を下げた。
「亮の傷はもっとすごいんだから背中と胸と腰と足、
生きているのが不思議なくらい」
仁木と三雲は一般人の亮がそんなに傷を負っていると聞いて
顔を見合わせた。
「一体何があったんですか?」
「仁木さん、三雲さん。亮たちは何度となく
テロリストと戦っていて
東京タワー、東証爆破未遂事件そしてハワイの
ハイジャック事件
全て未然に防いでくれたの」
「ハワイのハイジャック!!」
二人は大声を上げた。
「たった一人の人間が全員を捕まえたと聞きましたが
まさか團さんが?」
「厳密に言えばそこにいるマギーと
ここには居ない小妹、美喜さん、
それと飛行機に付けられた爆弾を時速300キロのアパッチで併走し
それを落としたスナイパーの力です」
「マギーさん?それに300キロ!そんな事って!」
「それが真実です」
亮はニッコリと笑った。
「そのスナイパーライフルは?」
三雲は亮がどれだけ知っているか試してみた。
「レミントンA40A5にM118弾です」
「M118弾は競技用では?」
「はい、的がコードだったのでできるだけ
正確である必要が有りました」
「本当ですか!」
仁木と三雲はその時の話しを詳しく知りたかった。
「さて、時間です。みなさん持ち場に付いてください」
亮が言うと仁木と三雲は何か言いたそうだった。
「まあ、亮の凄さはいずれわかるさ、今夜亮と会えるように
家持をしっかり監視していてくれ」
森が二人の肩を叩いた。




