殺された理由
「へえ、ずいぶん変わるのね、
つまり整形前というわけね」
マギーが絵を2枚並べていた。
「はい、この男推定年齢が20歳後半、
歯並びが良いので
おそらく子供の頃矯正していると思います」
「歯を矯正するアジア人と言えば韓国人が多いそうよ」
美咲が口を開けて子供の頃矯正した白い歯を見せた。
「ええ、最近の日本人は男女とも柔らかいものばかり食べて
いるので顎の発達が悪いから歯並びが悪いですね、
でもあまり矯正しない」
「ねえ、見て!この眉尻が薄い感じがするわ」
麻実が写真の眉を指差した。
「この男は中国人じゃないわ」
桃華が言うと美咲と亮が頷いた。
「決まりね!道理で身元がわからないと思ったわ」
「黙秘をするのは日本人じゃないと言う訳か。
これで黒幕は分からずしまいか・・・」
森がため息を付いた。
「ええ、到底無理。まして北朝鮮の工作員だったら
身元を洗い出すのは不可能よ」
「じゃあ、釈放しましょう。被害届けを撤回します」
「亮、何を言っているの?保釈したら逃げられてしまうわ」
「僕はこの男と昨日警察官を殺害してシアン化水素を奪った
人物と関係があるかもしれません。だから泳がせて
仲間のところへ行った所を一網打尽に」
「分かったわ、それでいつにするの?」
「ちょっとやりたい事があるので来週の
月曜日被害届けを撤回します」
「分かったわ、任せる」
美咲は亮を信用して亮の作戦に任せることにした。
「これで終わりね」
飽きた様子の麻実が手を上げて背筋を伸ばすと
亮が首を横に振った。
「麻実さん、まだ話しがあります」
「はい、済みません」
麻実はあくびを止めて亮に謝った。
「この謎の男と佐藤幸雄と京都で僕を
誘拐した男たちを殺したと思われる
槇島真司が昨夜シアン化水素を盗んだのかもしれません」
「でも佐藤幸雄は『任務の遂行の為なら
平気で人を殺す非情な女だ。気をつけろ』と言ったんでしょう」
美咲は昨日の事件で亮の善意に心を動かされた佐藤幸雄が
吐いた言葉を言った。
「確かにそう言いましたけど、警察相手に太鼓を強奪するのは
至難の技です。まして女性一人では不可能です」
「そ、そうね。その通りだわ。思ったより敵は
多くて強いわけね」
「佐藤幸雄の場合、殺人未遂で起訴しようにも
その証拠の爆弾を敵に奪われてしまっては裁判も出来できません。
容疑は監禁だけです」
美咲は亮に言われて佐藤幸雄のあまりにも軽い罪で
再び世に放たれる事を想像すると体の血の気が引いた。
「警視庁に捜査状況を聞いてみるわ」
美咲は慌ててノートにメモを書いていた。
「次の家持一家の千葉と立花にマッスルカーブに
火を点けられた件です」
亮はホワイトボードに千葉と立花の
名前を書き写真を貼り付けた。
「あいつらは山田組系の下部組織、
警視庁の組織犯罪対策部が動いて
親分の家持三郎を聴取したんだが退職した
千葉と立花が勝手にやった事で
関係ないと否認している」
森はどうやって家持三郎と二人の関係を明かすか悩んだ。
「森さんそれにはちょっとした経緯があるんです
「何だ?」
「山田組と僕は事有る毎に対立していました。
命も狙われた事もあるし今回はラブポーションと
マッスルカーブのオープンに当たって
業者が売り込みに来ました。おしぼり、
リネンサプライ業者等など
でも僕はそれを断ってクリーニング会社を
作ってしまいました」
「亮さん、山田組といっても日本最大の暴力団、
それぞれの系列の下部組織
全部が亮の情報を共有していると思えないけど」
警視庁で事務方をしていた雪にとって
亮の個人情報を暴力団組織が共有していたと思えなかった。
「それでそんな事で反感を買ったとでも言うのか、
それならラブポーションを狙うだろう」
森は雪の言う通りで、亮は山田組傘下の組と
その都度戦っているように思えた。
「はい、あっちはただのキャバクラですが、
マッスルカーブは会員制で、これから日本拡大を計る
日本第1号店です。失敗したら被害は大きいです。
しかもビルのオーナーは歌舞伎町の飯田さんです」
「歌舞伎町のドン飯田さんならいくらヤクザでも
簡単に手を出せないんじゃないの?」
マギーたちは飯田を常にガードしている男たちは
かなりの手練で有ると知っていた。
「はい、飯田さんに多額の資金を借りているヤクザたちは
直接は手を出せません。ただ僕を通してなら間接的に
飯田さんに対する反抗になると思います。
山田組は僕と飯田さんの
関係を知りませんからね」
「えっ?どうゆう関係なの?」
麻実はまさか飯田と亮が関係あるのではないかと
不思議な顔で亮の顔を見た。
「子供のいない飯田さんは亮を後継にしたいのよ」
美咲が麻実に向かって言った。
「後継って飯田さんてそんなにすごい人なんですか?」
「名古屋に不動産会社を持っていてビルを
名古屋に持っているだけではなく金融業と
東京では新宿、渋谷、池袋、恵比寿、六本木の
飲食店が入っているビルのオーナー、
それと水商売への投資家で大金持ちよ」
早苗が麻実に小声で答えた。
「森さん、千葉と立花の家族を調べてください。なぜ二人が
口を割らないか知りたいんです」
「家族を抑えられているという訳か」
「はい、家族を開放すれば二人とも自供すると思います」
「わかった!直ぐに調べる」
森は早苗の腕を触った。
「麻実さんここまで理解できましたか?」
「はい、よく分かりました。ウフフ」
「さて次にみんなに協力してもらって見事に
逮捕した。国城正明の事件です。
国城正明は小型スキャナーを使って
電車の乗客の持っているICカードから
お金を盗み取り逮捕されました。
そしてその影には元五島商事に勤めていた
知念が居たんです。そして京都岡崎公園で
殺害された田渕憲一は国城の大学の友人で
大型スキャナーで車のETCから
盗み取るつもりだったようです」
「ねえ、田渕憲一を殺したのはええと、槇島真司。
つまり知念という人の悪事を妨害した訳だから敵同士?」
麻実が首を傾げならみんなの顔を見渡した。
「接点があったのは事実ですが
敵同士とは限らないかもしれません」
「どういう事?三人も殺されたのに・・・」
「それはもし、知念が生きていれば分かることです」
「死んでいれば?」
「大型スキャナーが槇島たちテロリストの手に落ちたということです」
亮が答えると麻実はまるで映画を観ている気分でいた。
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ガサ状を管理人に見せ立会の元に橋本優弥の部屋の中を
刑事たちが捜査を始めた。
部屋は荒らされていたにも関わらず
高価な時計、アクセサリー類が残されていた。
「主任、時計が28個、金のネックレス、ダイヤモンドすごいですよ。
現金も120万円もあります」




