夕食
この味懐かしい気がします」
「やはり亮は日本人なのね」
マリエは亮が日本の味が懐かしいと
言われちょっと寂しい気がした。
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レストランの西側は海の上のウッドデッキになっており
その上に亮たちのテーブルが有った。
そこに音も立てず人相の悪い男三人が
ゴムボートに乗って近づいてきて
柱にロープを繋いだ。
レストランの裏口には黒いSUVがゆっくりと走って
近づいてくると静かに停車した。
~~~~~
「マリエ、お兄さん釣り船の売り上げは良いんですか?」
亮はマリエに正直な話を聞きたかった。
「ううん、ボートのローンの支払いが時々滞っているみたい」
「もし良かったら僕がオプショナルツアーで
釣り船のチャーターの営業で協力します。
これでも旅行代理店を経営していますから」
「本当ですか?」
マリエは亮が色々な会社の経営に携わっていると言う
噂は耳にしていたが旅行代理店までとは
思っても見なかった。
「旅行代理店?」
祐希が聞いた。
「ええ、知人が旅行代理店を
買収して経営を任された」
「忙しくない?」
「スタッフはそのままですから、
管理と増益を考えればいい」
「なるほど」
祐希は納得した。
「マリエ、お世話になったお礼にできるだけ協力します」
「ありがとうございます。兄が喜びます」
マリエは嬉しくてモゾモゾと腰と足を動かしていた。
「マリエ、お兄さんに電話をしたいんでしょう。どうぞ遠慮なく」
「はい」
マリエは立ち上がって電話を掛けた。
それは莫大な借金のある兄のケアカを少しでも
安心させたかったからだった。
しかし、ケアカへの電話は通じなかったので
マリエはメールを打った。
「兄さん、私の友達が兄さんのボートを
釣りのオプショナルツアーで
使いたいと言っているの、返事をください」
「お兄さん電話出ないんですね」
「ええ、どうしたのかしら?」
「お兄さんの名前は?」
「ケアカ・タカハシ」
亮は一瞬タカハシと聞いて驚いたが
ひいおじいさんが日本人と聞いたのを思い出した。
「ケアカですか」
「ケアカはハワイ読みで英語だとジャック、
私はアメリカ病院に勤めているから
マリエだけど家に帰れば愛称はカラよ」
「そうか。カラか・・・」
亮は昔の韓国の五人組のアイドルのダンスを思い出した。
「どうしたの?亮」
「早く歩きたいです」
「うふふ、スミス先生が傷が治れば
大丈夫と言っていたでしょう」
「そうですね」
「今日の料理はいかがですか?團さま」
亮がマリエの目を見つめていると後ろから声が聞こえた。
「か、亀山さん」
「亮さんがリハビリにしばらくハワイにいるから
わがままの利くレストランが必要だろうと
お父上がこの店を買収して私がここのシェフに」
「ああ道理で美味しいと思いましたよ。最高です」
「ありがとうございます」
「祐希さん、カラ、紹介します。僕がお願いしてJOLの機内食の
開発をしてくれている亀山さんです」
「えっ?」
マリエは亮の一族が何をやっているか理解できなかった。
逆に祐希は世界一のリゾート地ハワイへの
投資は失敗は無いと感じた。
~~~~~
「おい、行くぞ!」
ボートでラ・マリーナ・Dのウッドデッキの下に来た
男がピストルを持って柱を登り始めた。
「ぴゅるる~」
後ろからロープが飛んできて
男の首に巻かれ音を立てて海に落ち
海上を引きられて行った。
「イオアネ」
ボートに乗っていた男がロープで引っ張られていた
男の名を呼んだ。
~~~~~
「あれ?何か音がしませんでしたか?
ザボンとかドボンとか」
亮はデッキの下の音が気になった。
「ううん、何も聞こえなかった。波の音じゃない」
マリエが首を横に振ると亮は亀山の方を見た。
「いいえ、聞こえませんでした」
そこへウエイトレスが料理を持ってきて
亀山がそれを説明した。
「スズキの皮の湯引きの大根おろし添え、ポン酢で。
もう1つはサーモンの皮のチーズ挟み天ぷらハワイの塩をつけて
お召し上がりください」
「わあ、さすが亀山さん」
亮は子供のようにはしゃいでいた。
「ついていけない」
祐希が亮の好みに呟いた。
~~~~~
ラ・マリーナ・Dの裏口に止まっていた
黒いSVUのリアのガラスに突然
穴が開き車内が煙で真っ白になった。
前部の両側のドアが開き
後部のスライドドアが開き
四人が咳をしながら飛び出してきた。
「バッシ、ドスッ」
鈍い音が聞こえると四人の男が
倒れ何者かに引きずられて行った。
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「ボス」
誰とも連絡が取れません。
カニエラの子分のアケラが電話を持って
慌てて報告に来た。
「なんだって!7人も男がいて車椅子の男一人、連れ去ることも
出来ないのか」
「はい、ひょっとしたらFBIの連中に捕まったのでは?」
「そんな馬鹿な、我々はまだなんの罪を犯していない
捕まるわけないだろう」
「そ、そうですね・・・」
アケラが肩を落とした。
「奴らと連絡が取れないなら最後の手段だ。連れてこい」
「わかりました」




