あいつは誰だ?
「あら、友達いたんだ」
「はい、アメリカには友達はいますよ」
「へえ、アメリカでは社交的だったんだね」
「まあ、環境です」
「ふーん、その黒縁のメガネスマートに見える。
昔の亮みたい」
「あはは、面白くないです」
「大丈夫」
そこに経済産業省大臣江田隆蔵の
歓迎の挨拶が始まった。
亮は明るくなった会場の直子の脇に座った。
「お待たせ、経済産業省大臣の挨拶は?」
「日本オーストラリア関係の歴史から始まって、
今やっと現在」
直子が呆れ返っていた。
「誰が主役か分かっていない」
それは政治家特有の自分の売り込みのコメントで
ウイルソンの歓迎など忘れたように話をしていた。
大臣の長い歓迎コメントにウイルソンたちの苛立ち
が頂点に達した時
ウイルソンが紹介された。
ウイルソンは待たされていた客を気遣い
自分の名前と感謝の意を表す挨拶だけにした。
挨拶が終わると酒と食事が自由に振舞われた。
「直子さん料理をとってきますよ。
何か好きなものありますか」
「ありがとう、嫌いなもの無いから」
「ああ、それと日本酒ですね」
「うん、ありがとう」
亮が料理を取りに行くと後ろから咳払いが聞こえた。
「うっ、うん」
「風邪ですかお大事に」
「おいおいそれはないだろう。
昨日京都に来たのに連絡一つよこさないで」
「ロシアからのお客さんと一緒だったので
忙しかったんです。それより誰に聞いたんですか?」
「内村社長だよ、どうだこっちのテーブルに来ないか
みんな紹介するぞ」
関西石油の社長細川が亮に声をかけた。
「いいえ、今日僕はアメリカの
代表なのでウイルソン長官と
挨拶しなければならないので後で
バイオ燃料の件で伺います」
「わかった」
「ところで、大きな声で言えませんが
ドバイの原油買いませんか?」
「買うに決まっているだろう」
「じゃあ、アサド王子が来日した時紹介します」
「知り合いなのか?」
「はい、バイオ燃料に興味があるそうなので」
「わかった、ぜひ頼む」
亮の目線の先にはウイルソンを取り囲む沢山の人が
列を作って名刺を渡しているだけで満足している
姿は亮には滑稽に見えた。
「亮、ウイルソン長官に挨拶に行ったか?」
細川はドバイの原油と聞いて上機嫌だった。
「いいえ」
「そうか、その前に資源エネルギー庁の
黒田次長がいるから
挨拶をしておいた方がいい。
バイオ燃料はあそこが管理しているからな」
「でも、僕はD&Rの技術を提供しただけですよ。
それに販売はJOLが行いますから、
僕がわざわざ挨拶に
行く必要はありませんよ」
「でも、藻の開発は亮君がやったんだろう」
「ええ、まあでもそれは内緒ですよ」
「あはは、そうだった」
~~~~~
「おい、ダンこっちへ来い。おじさんを紹介する」
ジョージが亮を呼びに来た。
「わかったけど、今日はアメリカの指示でエネルギー省の
ラルフ・スチュアート長官の代理で来たんだ。
後で駐日大使と行く」
「へえ、ダンも偉くなったんだな」
「そうでもないさ」
「ところで今なんの仕事しているだ?」
「ドライアイスプロジェクトは知っての通りだが、
バイオ燃料燃料と証券会社とモデルや歌手の
エージェントをしている」
「おお、楽しそうな仕事をしているなあ」
ジョージは目を輝かせた。
「そうか、昔からアニメ好きだだったよな」
「うん、日本アイドルも可愛くて好きだ。
韓国は色気ばかりで気持ち悪い」
「ありがとうジョージ。
ところで席に戻らなくていいのか」
「ふう、仕方ない戻るか。早く来いよ」
「うん、後で相談がある」
「任せろ、なんでも運ぶぜ」
~~~~~~~
「あの日本人は誰だ?」
周りの人と次々に会話をしている亮の姿が
安倍事務次官の目に止まった。
「彼はアメリカ大使の席におりますので、
アメリカ人かと思います」
「でも、細川社長と親しく話をいていた。
ちょっと調べてくれ」
「はい、かしこまりました」
安倍事務次官に指示された男、
宮本は早足で入口近くにいる職員に聞いた。
「誰か駐日大使のところにいる男性が何者か知らないか?」
「あのタキシードの似合う
かっこいい男性ですか?」
女性職員が答えた。
「あの、東洋人だ」
宮本はかっこいいを否定した。
「團亮です。株式会社プラウの社長です」
根岸が答えた。




